ここは日本のトスカーナ!? 恵比寿駅から10分、渋谷駅から15分で本場の味が楽しめるリストランテ
渋谷と恵比寿の中間辺り、明治通りから少し入ったところに建つ『Mamma Luisa’s Table(マンマ ルイザズ テーブル)』。
渋谷の鎮守・渋谷氷川神社の参道にあり、目の前には地域のこどもたちが通う保育園が建っていて、都会の中心でありながら居心地のよい空気が漂う場所だ。近隣に住む人々の散歩コースでもあり、オーナーシェフも愛犬と散歩中にこの場所を見つけたという。
カウンター席が8つ、中央には8人掛けの大きなテーブル、そして2人用の小さなテーブルが5卓ある。絨毯やチェストが置かれた店内は、まるでイタリアに実在する邸宅のよう。「中央に置いた長テーブルには、フィレンツェの実家にあった大きな食卓のイメージを重ねています。賑やかに食事を楽しんでもらうのにぴったりだと思って」とシェフ。
シェフの名はピエトロ・アンドロゾーニさん(写真上)。イタリア・フィレンツェの出身で、現地『ミシュランガイド』の掲載常連であり続け、最新の『ミシュランガイド イタリア 2019』では三つ星の評価を受けたイタリアン『Enoteca Pinchiorri(エノテーカ ピンキオーリ)』で料理人としてのキャリアをスタートさせた腕利きだ。
彼の笑顔と語り口は、店の雰囲気を形成する大切なエッセンス。常連は親しみを込めて「ピエトロさん」と呼ぶ。
カウンターに座り、「今日のソースは何ですか?」と尋ねれば満面の笑みで返してくれる。厨房の様子が一望でき、パスタを手打ちしたり料理を盛り付けたりする様子も目の前で楽しめる。普段着のピエトロさんの自宅に招かれたかのような、極上のシェフズテーブルが同店の特等席なのだ。
「何を食べてもおいしいよ!」と誰かに教えたくなる味わい
最大の特長は、言うまでもなく料理のすばらしさ。
料理上手のマンマ(お母さん)やノンナ(おばあちゃん)のもとで育ったシェフがその家庭的な味をベースにしながらも、日本の旬な食材を取り入れ、自身が大好きだという各国のスパイスを隠し味にすることで、伝統の中に斬新なアプローチを加味しているのだ。
それでいて決して奇をてらった感はなく、あくまでも“伝統を踏まえた新しさ”という立ち位置を維持している。
「イカのパン粉焼きとひよこ豆のフムス 人参とバルサミコ、ディルのドレッシング」(写真上)。ピエトロさんも大好きだというイカを、チーズとハーブを加えた香りのいいパン粉をまぶしてさっくり芳ばしく焼き上げた一品だ。
そこに、バルサミコの酸味とニンジンの食感、ディル(ハーブ)の香り、さらには下に敷かれたひよこ豆のフムスがまろみのあるエキゾチックなアクセントを添えて、シンプルな味付けのイカのうまみを際立たせる。
スペシャリテの手打ちパスタ。人気のひとつはパッパルデッレ!
絶対に食べるべきスペシャリテのひとつは手打ちパスタ。
手打ちならではのもっちりとした食感がたまらない「自家製パッパルデッレ 下田産野生猪のボロネーゼ風ラグーソース スモーク スカモルツァチーズを添えて」(写真上)。パッパルデッレはイタリア語で「豪快に食べる」「食いしん坊」という意味を持つトスカーナ州の極太リボン状パスタで、同店では常連に愛される定番だ。
トスカーナではパッパルデッレをラグーソース(大きめに刻んだ肉と野菜を煮込んだもの)で食べるのが定番で、同店でも濃厚なラグーソースで供されることが多い。この日は、静岡県・下田の山奥で仕留められた野生の猪を香味野菜と合わせて煮込み、極上のソースに仕立てた。
1cmほどのサイコロ状にカットされた猪肉がゴロッと入ったソースは、挽き肉を使ったものとは異なり、肉そのものの味をがっつり楽しめる贅沢な仕上がり。猪といっても臭みやクセは感じられず、やわらかくジューシーで深いうまみとコクが堪能できる。
猪の滋味を最大限に引き出したソースがモチモチの手打ち太麺にしっかりと絡むので、パスタもソースも互いを引き立て合っている。
粉モノの国・イタリアのパスタは想像以上に奥が深い!
種類豊富な手打ちパスタは同店の最大の魅力。
トリュフを詰めた「ニョッキ」、チキンレバーとヘーゼルナッツを詰めた「ラビオリ」、ホウレン草の「タリアテッレ」、耳たぶのような形をした「オレキエッテ」、断面が四角形のロングパスタ「キタッラ」……。ざっと並べただけで9種類。すべて、ピエトロさんの手打ちだ。
定番の手打ちパスタだけではない。ピエトロさんオリジナルの要素が次々と重ねられていくので、シェフ本人が「何種類作れるかわからないよ(笑)」というのもうなずける。
パスタソースにも定番はあるものの、その日によって種類も内容も多様に変化するため、一期一会の味を楽しみたい。
イタリア本土には約500種類以上ものパスタがあるといわれるが、同店に来れば、その奥深さの一端が十分に満喫できるというわけだ。
たとえば、ある日のパスタメニューで供されるのは、ピエトロさんのセンスをふんだんに散りばめたアートのようなひとさら「ラビオリ アッラ カルボナーラ」(写真上)。イカスミの黒色でアクセントをほどこしたラビオリにはリコッタチーズが詰めてあり、パンチェッタの芳醇な香りが効いたクリーミーなカルボナーラソースで、卵黄を絡めながら味わう。
ソース自体もチーズのうまみが主役だが、さらに削りたてのパルミジャーノがたっぷりトッピングされ、チーズ好きには特におすすめの一品だ。
『エノテーカ ピンキオーリ』でつちかったパティシエの経験値
おいしさを創り出す秘密はどこにあるのだろう? 本人に尋ねても「えー、わからないよ。おいしいものが好きだから?」とニコニコ返される。
ピエトロさんの経歴はドルチェ(お菓子)からスタートした。地元フィレンツェの料理学校に通っていた17歳のとき、『エノテーカ ピンキオーリ』の面接に出向き、パティシエの見習いとして採用されたのだという。
「パティシエを希望していたわけではなく、修業先のピンキオーリさんから“腕のいいパティシエは腕のいいシェフになれるけど、腕のいいシェフが腕のいいパティシエになれるとは限らない”と言われて。とても印象的な言葉でした」(ピエトロさん)
その後、1992年、銀座に『エノテーカ ピンキオーリ 東京店』がオープンする際にはシェフパティシエとして来日。そのまま日本で多くの経験を積んできた。
手打ちパスタや、しみじみおいしい焼き菓子など「粉モノ」のバリエーションが豊かなのはパティシエの経験がベースにあるのだろう。
「トルタ デッラ ノンナ おばあちゃんのタルト」(写真上)は、素朴な味わいがクセになる!と同店で大人気の定番ドルチェだ。
伝統と新しさが融合した家庭料理は、何度食べても食べ飽きない
ピエトロさんの作る料理は奥深いようでいてシンプル。何度でも食べたくなる味わいには、「料理上手なマンマのもと、美食の街フィレンツェで育ったこと」「パティシエとしての経験が豊富」という2つの特徴を持ってしても、なお語り尽くせぬ理由があるように思えてならない。
かたわらのスーシェフが、笑いながら「ジーニアスなんです」と言った。なるほど。おいしいもの好きな天才が、フィレンツェでの少年時代と、長年の経験を積み重ねて創り上げた、くつろげる場所。それがこの店の姿なのだ。
いつ行っても、何度通っても、目も胃袋も満たしてくれる『マンマ ルイザズ テーブル』。大切な人と、訪れてみてほしい。
撮影:SHIge KIDOUE
【メニュー】
イカのパン粉焼きとひよこ豆のフムス 人参とバルサミコ、ディルのドレッシング 1,700円
自家製パッパルデッレ 下田産野生猪のボロネーゼ風ラグーソース スモーク スカモルツァチーズを添えて 2,600円
ラビオリ アッラ カルボナーラ 2,500円
トルタ デッラ ノンナ おばあちゃんのタルト 1,200円
ランチコース 1,600円~
ディナーコース 8,500円~
グラスワイン 700円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。仕入れの状況などにより、食材の内容や価格は変わる場合があります。また、価格はすべて税込です
マンマ ルイザズ テーブル
- 電話番号
- 03-6805-1337
- 営業時間
- 11:30~L.O.14:00、17:30~L.O.22:00
- 定休日
- 日曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。