名だたるフレンチで修業を積んだシェフが営むビストロ『トネリコ』
古着屋やライブハウスなどが多く集まり、サブカルチャーの街として知られる東京・下北沢。その下北沢駅から京王井の頭線で1駅隣の池ノ上駅は、下北沢の雰囲気とは打って変わって、閑静な住宅街が広がる。
そんな池ノ上駅から徒歩約3分の場所に、名だたるフレンチで修業をしてきたシェフが営むビストロがある。
店名は『トネリコ』。
“街に溶け込むように”という想いを込め、植物のトネリコから命名した。
店内は、木の温かみを感じられるカントリーテイスト調で、カウンターが9席、4人がけのテーブルが3卓。
アットホームな雰囲気の同店で腕を振るうシェフ・加藤大さん(写真上)は、“伝説のシェフ”とも呼ばれる勝又登氏の箱根『オーベルジュ オー・ミラドー』や、『ミシュランガイド東京 2019』で二つ星として評価を受けたフレンチの『NARISAWA(ナリサワ)』などでフレンチの研鑽を積んできた。
フレンチのシェフが、なぜビストロを?
「僕自身は大衆酒場やバルのようなカジュアルで気軽に行ける店が好きでした。だから『トネリコ』も、気軽に来てもらえるカジュアルなお店を目指しています」と加藤さんは話す。
料理のコンセプトは“シンプルに”。
シンプルな調理法で素材の味を生かしつつ、他店ではなかなか見られない食材の組み合わせで客を魅了する。
料理のベースはフレンチだが、そこに地中海料理や和食など、さまざまな料理の要素も取り入れている。
看板メニューは、賞味期限1分の「トネリコ名物のフルーツトマトのパイ」
同店はアラカルトがメイン。とはいえ、初めて訪れる方にはコースメニューもオススメ。
4,000円、5,000円、7,000円と全3コースの用意があり、普段使いやちょっと贅沢したいときなど、用途やシチュエーションに合わせた利用が可能。
すべてのコースでいただけるのが、看板メニューでもある “賞味期限1分”の「トネリコ名物のフルーツトマトのパイ」(写真上)。
パイ生地の上に、薄くスライスしたフルーツトマトを約1個分のせた料理で、多くの人が最初にオーダーするという。
サクっと軽いパイ生地と、ジュワッと果汁が溢れだすフレッシュトマト、まったく異なる食感を一度に味わうことができる。フルーツトマトの濃厚な甘みとうまみは、まるでスイーツを食べているよう。
作り方は至ってシンプル。
自家製パイとフルーツトマトを別々にオーブンで焼き、提供する直前に組み合わせる。そこに塩コショウ、刻みニンニク、オリーブオイルがかけられている。
パイ生地とトマトの食感のコントラストを味わってもらうために、賞味期限1分となっているのだ。
「お客さんたちの中で会話が生まれるような料理を作りたい」。そんな加藤シェフの想いから、このパイが生まれたそう。
その他にも、加藤シェフがオススメするメニューを4品紹介しよう。
他にはない食材の組み合わせで魅せる「タパス盛り合わせ」
「タパスちょこちょこ盛り合わせ」(写真上、写真は2人前)は、アラカルトとしても注文できるタパスを少しずつ盛り合わせたもの。
「牡蠣のオイル漬け」「脂ののったイワシのマリネ」「柿と生ハムとリコッタチーズ」「トネリコの蒸し鶏」「スペインマンマ直伝トルティージャ」「フォアグラより美味しいと思うレバーパテ~ブリュレ仕立て~」など、全部で9種類。
たとえば「柿と生ハムとリコッタチーズ」は、熟した岐阜県産の柿の上にリコッタチーズをのせ、生ハムのプロシュートを被せている。
熟した柿が口の中でとろけ、そしてリコッタチーズの甘み、生ハムの塩味がアクセントとなる。
また「トネリコの蒸し鶏」は、ジューシーな鶏ムネ肉に、タマリンド(アフリカ原産の甘酸っぱいトロピカルフルーツ)や中国の醤油を使ったソースがかけられている。このソースは、酸味がある醤油ベースでアジアンテイストな味わい。
どれも作り方はシンプルだが、食材の組み合わせのおもしろさに、加藤シェフの創作力が垣間見える。
ひと口食べてみれば、“この組み合わせがこんなに合うなんて!”と驚くことだろう。
ミネストローネスープをトネリコ流に再構築させた「ミネストサラダ」
食用花が散りばめられ、まるで芸術作品のように美しい「トネリコのミネストサラダ」(写真上)は、加藤シェフ一押しのメニュー。
「具だくさんのミネストローネスープを分解し、再構築した新感覚のサラダ。完全創作です」と説明する。
一見、ただ生野菜が盛られているサラダのように見えるが、実は生野菜の下には、温野菜入りのパルミジャーノ・レッジャーノのスープがある。温かいスープにサラダを絡めながら食べていくスタイルだ。
うっすらと白いスープは、チーズの香りが優しく漂う。
温野菜はニンジン、紫ニンジン、大根、紅心大根、青大根、黒大根、あやめ雪かぶ、そら豆と実に種類豊富。野菜は季節によって異なるという。
生野菜には、同店特製のトリュフドレッシングと、パルミジャーノ・レッジャーノのチーズがかけられている。
ヤリイカと栗!? 意外すぎる組み合わせは、加藤シェフの想い出の味
「小ヤリイカの網焼き 栗とパセリのソースで」(写真上)は、網焼きしたミディアムレアのイカに赤ワインベースのソースをかけ、そこに栗ピューレと、パセリのグリーンソースを合わせたもの。
栗ピューレはフランス産のものを使用し、そこにきび砂糖を加えて少し甘めに仕上げている。
このイカと栗の衝撃的な組み合わせは、加藤シェフがスペインを旅行した際に食べて感動したものだという。
日本人にはなかなか思いつかない発想だが、意外にもイカの甘みと栗ピューレの甘みがマッチし、度肝を抜かれることだろう。
うまみたっぷり。イベリコ豚の炊き込みご飯は、薬味をたっぷりと効かせて
そして最後に紹介するのが「イベリコ豚ときのこ、ふきのとうの炊き込みご飯」(写真上)。
「シメの炊き込みご飯って、なんだか落ち着くし、出てくると嬉しいですよね。なのでうちでは、パエリアではなく、あえて炊き込みご飯にしているんです」と加藤さん。
お米はサラっとした千葉県産「ふさこがね」を使用しており、そこにかつお昆布のだし、醤油、ゴマ油が隠し味に使われている。仕上げにサッと炒めたフキノトウを加え、三つ葉や大葉もトッピング。
かつお昆布のだしや醤油が効いた優しい味わいだが、別添えの「純胡椒」(写真上・右)という生胡椒の塩水漬けを薬味として加えると、まったく別の料理に変化する。
純胡椒を噛むとプチっとはじけ、胡椒のスパイシーさが広がり、パンチの効いた味わいになるのだ。
シメなのに思わずお酒が進んでしまいそう……!
ちなみにお酒は、スコットランド発のクラフトビール「BREWDOG(ブリュードッグ)」や、アメリカ産の自然派ワインを中心にそろえている。
丁寧な料理とあたたかな雰囲気。ふらっと立ち寄りたくなる、優しいビストロ
枠にとらわれない自由な発想で創作料理を提供する『トネリコ』。
家族やカップルたちの記念日に使われることもあれば、1人客がふらっと入店することもあるそうで、さまざまなシーンで使いたくなるアットホームなお店。座席数が限られており、また丁寧な料理と居心地の良い空間を求めるお客が年々増えているため、週末は予約推奨。
ぜひ、加藤シェフが作り出す奥深い料理の世界をのぞいてみてはどうだろうか。
【メニュー】
トネリコ名物のフルーツトマトのパイ(2つ) 640円
タパスちょこちょこ盛り合わせ(2人前) 1,800円~
トネリコのミネストサラダ 1,180円
小ヤリイカの網焼き 栗とパセリのソースで 1,220円
イベリコ豚ときのこ、ふきのとうの炊き込みご飯 2,200円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です
文:名久井梨香
撮影:佐々木雅久
トネリコ
- 電話番号
- 050-5487-8275
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18:00~23:00
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- 公式サイト
- http://tonerico.tokyo/
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