東京、大阪の名店で働いていたふたりが意気投合して地元で独立
若いうちに都会や海外で研鑽を積み、そこで得た知識や技術を持って生まれ育った故郷に還元する人は多い。
神奈川県・小田原市に2018年10月にオープンした『MECIMO(メシモ)』のシェフ・葛窪拓真さんと、ソムリエの山本良憲さんも、まさしくそれに該当するコンビだ。
ふたりとも料理歴は長い。葛窪さんは、神奈川・横浜でアルバイトとして働いていたあるとき、店の料理長から「才能があるから本格的に料理の道に進んだほうがいい」と声を掛けられたことがきっかけとなり渡仏。パリで3軒、マルセイユで1軒のレストランに勤めて腕を磨いた後、前々から注目していた大阪の有名フレンチに就職した。
一方の山本さんも、スタートはアルバイト。料理の道に進もうとは考えていなかったが、働いてみると楽しく、東京都内の人気レストランでソムリエとして活躍するまでに至った。
▲左から、ソムリエの山本良憲さん、スタッフのベネト・ティボさん、シェフの葛窪拓真さん
そしてあるとき、山本さんは友人の紹介で同じ神奈川県出身の葛窪さんと出逢い、「いつかは郷里で独立したい」との想いを吐露したところ意気投合。みるみる話は具体的に進み始め、2017年7月には試食やケータリングの調理を開始。春先にはそれぞれ前職を辞め、夏にはポップアップレストランを開くこととなり、その約2カ月後には『メシモ』開店に漕ぎ付けたのだ。
小田原エリアの食材や地元名産品の魅力を伝えたい!
料理には、小田原エリアの食材や地元の名産品をふんだんに使用する。
コース中盤に提供するマカロン「スズアコーヒー」(写真下)には、1956年に小田原に創業した自家焙煎珈琲店『スズアコーヒー』のコーヒーをたっぷりと使用している。
「小田原で60年以上続いている老舗をフィーチャーしたかったので、メニュー名にもそのまま採用させてもらいました」と山本さんは明かすが、実際、口に含むと香ばしい豆の香りがいっぱいに広がる。さらに、小田原産のハチミツ、フォワグラも使用しているため、ハチミツの甘みとフォワグラの香り、コーヒーの苦みが三位一体となり絶妙な味わいを醸し出す唯一無二のメニューとなっている。
使用している器は、小田原に工場を持つ『薗部産業』のもの。小田原は平安時代から木地師や漆塗り職人が活躍した土地と言われるが、伝統工芸の職人技も長く受け継がれているのだ。
赤い食材を色とりどりに使用した「赤いサラダ」(写真上)は、眺めているだけでもうっとりした気分になる一品。赤カブ、赤ダイコン、赤タマネギ、ラディッシュ、ホタルイカ、アマランサスなどをバランスよく和え、エシャロットドレッシングでさっぱりとした味わいに仕上げているので、ビタミン豊富で美肌作りにも役立ちそうだ。
この美しい料理に合わせた器は、陶芸家・吉田直嗣さんの作品。「うちの店を選んで足を運んでくれるお客さまに、“食べることの経験”としての料理を楽しんでほしいので、メニューそのものだけでなく、器や空間作りにもこだわっていきたいんです」(山本さん)。
滋味豊富な旬の食材を、地元のお酒と合わせて愉しもう!
春の魚の代表格、鰆(さわら)の表面を軽くローストした後、小田原育ちの春野菜をたっぷりと添え、ムール貝とハマグリのクリームソースをかけた魚料理(写真下)は滋味あふれる春の味覚。
つぼみ菜、ターツァイ、アイスプラントなどの食感の異なる数種の野菜は、いずれも一般的には手に入りにくいものばかり。貝のうまみいっぱいのソースとともに、厚手にカットした鰆に乗せながらゆっくりと味わうのがオツだ。
アルコールは、現在、小田原近辺のブルワリーとタッグを組んで『メシモ』オリジナルのビールを準備中とのこと。
「昔からこの地にあるものを見直して、新しく取り入れていきたいですね」という想いはふたり共通のもの。地方ならではのユニークな試みで、今後さらに注目が高まることは間違いなしだ。
【メニュー】
▼ランチ
コース 3,000円または6,000円
▼ディナー
コース 6,000円または10,000円
ペアリング 5,000円
※予約状況によってアラカルトにも対応
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込みです
撮影:藤代美鈴
MECIMO(メシモ)
- 電話番号
- 0465-20-3744
- 営業時間
- 11:30~13:30(L.O.)、18:00~20:00(L.O.)、バー営業 20:00~21:30
- 定休日
- 不定休(基本、月曜)
- 公式サイト
- https://www.mecimo.com/
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。