名店『懐石 小室』小室光博氏による日本料理とホスピタリティが、深く心に響くワケ

2019年04月03日
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名店『懐石 小室』小室光博氏による日本料理とホスピタリティが、深く心に響くワケ
Summary
1.『ミシュランガイド東京 2019』も継続して二つ星に。名店『懐石 小室』の移転後の店と、春の料理を特別取材
2.風情豊かなエントランス。予約必至のカウンター席、2階には貸切できるゆとりあるテーブル席も
3.吟味し、惚れ込んだ季節の食材を、季節の器で。日本料理を五感で楽しめる至福のおまかせコース

小室光博氏が発信する、日本料理の佇まい。味の演出

大人の隠れ家のような店が、小径に点在する東京・神楽坂。2000年に開店した『懐石 小室』は、食材の見極め、たしかな技術から生まれる料理とホスピタリティが、着実に訪れるものの心を掴み、『ミシュランガイド』掲載店の常連で『ミシュランガイド東京 2019』でも二つ星の評価を得ている名店だ。そんな『懐石 小室』が2018年2月、元の店からさらに奥まった住宅街の一軒家へと移転した。

道路から打ち水された石畳に入ると、看板のないプライベート空間のはじまりである。揺らぐ笹が風を涼しげに感じさせ、ほのかな照明が照らすエントランスに期待が高まっていく。

店の、魅力の源はなんといっても小室光博さんの人柄だ。

食材と相対するときは、慈しみながらも鋭い眼差し。だが、ふと顔を上げると柔和な笑顔になる。今も自ら産地に赴き、食材を育む人々と言葉を交わしながら、環境を肌で感じることが楽しみという。だから知識や情報が豊富で、その年々の旬食材の仕入れ時期を逃さない。

カウンター越しに今日の食材について聞けば「穴子は春や秋、鱧(はも)は夏。骨切りといえは鱧だけど、旬の大ぶりの穴子も骨切りにするとふんわりした食感になるんです」と、この時期のよさ、調理法、組み合わせなどを惜しみなく話してくれる。

前のこぢんまりした店もよかったが、移転後の新しい店は2階建ての一軒家と広い。

1階は幅広のL字カウンター席で、奥にある厨房の様子もうかがえる演出。
「間を仕切っている障子を開けると、焼き場までよく見えます。前の店もすべて見えていましたから、隠すこともないかなと思って」と小室さん。店が一新してもそれほど敷居の高さを感じないのは、前の店の佇まいを受け継ぐ心配りがあるからと知る。

キビキビと働く料理人たちの姿も、目に心地いいものである。

2階にはゆとりのテーブル席が3部屋。つなげて大きな空間にすれば、18名まで利用可能だ。

季節の食材を散りばめた「おまかせコース」でもてなす

小室さんは、江戸時代初期から続く大名茶道「遠州流」の家元付き料理人でもあり、通年にわたり茶事の料理も担当している。茶道は食文化との関わりも深い。これも小室さんが四季の食材に精通し、メニュー展開も多彩な理由のひとつといえよう。

おかませコースの内容は、月ごとに変化していく。今回は、春を五感で愉しめる4月のコースのなかから3品をご紹介する。

椀物「あいなめの葛たたき」(写真上)。湯気とともに木の芽の香りが漂い、存在感のあるあいなめが目に入る。薄緑の野菜はふき。葛のやさしいとろみをまとっただしが、魚のうまみをしっかり閉じ込めている。口にすると身の繊維がほろっとほぐれると同時に、ふきの食感と香りに春を感じる。

花開いたような身が印象的な焼き物「穴子の炙り」(写真上)。

自らカンナをかけたまな板の上で、丁寧に、リズムよく骨を切り、皮目だけを炭火で炙る。

塩をひと振りし、柑橘を搾るうち、皮が反り返って身が花開く。

添えられているのは小室さんが惚れた、静岡の田代さんが栽培する極上わさび。皮は香ばしく、身はふんわりしつつも弾力があり、噛むほどにうまみを放つ。脂ののったところに、わさびの香りがいい。

煮物は春の主役ともいうべき「竹の子と牛肉の花山椒鍋」(写真上)。ここで春にだけ出てくる土鍋が登場する。

ぷっくりと愛らしい竹の子のフォルムに目を奪われていると、「この形、他人とは思えなくて。僕は『みつひろ』、鍋は土鍋作家、雲井窯9代目中川一辺陶さんの作品『たけひろ』、年に一度出会う兄弟ですね」と小室さん。自然とこちらも顔がほころぶ。調理具や器にも造詣が深く、コレクションも多彩で季節を目でも感じられる。

竹の子をさっと煮て、その煮汁で牛肉をしゃぶしゃぶし、仕上げに煮汁にくぐらせた花山椒をたっぷりのせる。

目に鮮やかな緑と、立ち上る香り。牛肉の脂は口どけよく、竹の子独特の味わいと食感が絶妙。口の中が春満開である。

お腹とともに、心も満たされる

「都会の喧騒から離れて、気の合う仲間とゆっくり楽しんでほしい」と小室さん。料理に使われる食材や産地の話は興味深く、カウンター席を望むゲストが多いのも納得。

いい店は、これを食べに行きたいという思いはもちろんだが、この人に会いに行きたいと思えることも大きな要素。『懐石 小室』にいると、話の先にどんな料理が出てくるのか、ワクワク感が止まらない。ぜひ、食いしん坊の仲間とともに、訪れてほしい店である。

撮影:平瀬夏彦

【メニュー】
おまかせコース
昼 個室(2階テーブル席) 8,000円~、カウンター 15,000円~
夜 個室(2階テーブル席) 12,000円~、カウンター 22,000円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税、サービス料別です

懐石 小室

住所
東京都新宿区若宮町35-4
電話番号
050-5487-3109
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
営業時間
12:00~13:00
17:00~20:00
〜2月7日
定休日
日曜日
祝日
ぐるなび
https://r.gnavi.co.jp/9z58eg0n0000/

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。