世田谷初のブルワリー、旗艦店1号店を銀座にオープン
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『暁タップス 銀座』は、東京メトロ銀座駅から徒歩2分、「東急プラザ銀座」横の道を新橋方面に少し進んだところにある。
上品な外観と大きな窓から溢れる温かな灯り、外からもわかるずらりと並んだビールタップが目印だ。
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店内に入ると真っ先に目に飛び込んでくる、両壁に飾られた巨大なアイアンアート。醸造タンクをデザインしたものだ。北海道で制作され、その大きさ故、店の扉を付ける前に設置したという。
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入口近くは、注がれるビールたちを眺められるカウンター席。止まり木的にふらっと1杯飲むにはぴったりだ。
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奥にあるテーブル席の壁面を彩るのは、切株アート。自然のダイナミックさとぬくもり、銀座の上質感が同時に感じられるスタイリッシュな空間である。
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▲6人まで利用できる半個室。壁の木製プレートには東北のこけし、郷土玩具をモチーフにしたかわいらしいペイントが、女性に好評だという。
「日本人としてのルーツをビールで表現して、世界に発信したい」
ビアパブらしからぬ洗練された空間だが、それもそのはず。『暁ブルワリー』は、その名を知られた建築デザイン会社が運営しているビール醸造所。「日本人である自分たちのルーツを表現できるような“クリエイティブ・ビール”を作りたい」という想いから醸造を始めたという。
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▲店長の野村浩行さん
繊細な和の食材に寄り添い、その味を引き立てるために、炭酸や苦みをほどほどに抑え、穏やかなうまみを大事にして仕上げている。そのため、ビールの炭酸や苦みが苦手という人にも「これなら飲める」と好評だという。
もうひとつ目指しているのが、「飲んで健康になるようなビール」であること。
「ビールは嗜好品ではありますが、麦汁から作る栄養豊かで健康的な飲み物です。日常的に飲んで健康になっていただけるようなビールでありたいですね」(運営会社『株式会社太極舎』上地真弘さん)。
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そのために、麦汁の栄養を最大限に活かすべく、すべてのビールを無濾過で仕上げ、副原料は無肥料・無農薬の自然栽培であることを重視している。
「無濾過ビールは、酵母の発酵が絶えず進んでいます。同じタンクのビールであっても、飲む時期によって少しずつ味が変わるんです。その変化も含めて楽しんでいただけると嬉しいですね」(上地さん)。
炭酸や苦みをおさえた穏やかな味わいの「ビール」
同店で飲めるのは、個性豊かな5種類(「暁 ALE(あかつきエール)」「暁 WHITE(あかつきホワイト)」「暁 RED(あかつきレッド)」「暁 BLACK(あかつきブラック)」「暁 BROWN(あかつきブラウン)」)と、季節のビール1種、合計6種類のビール。
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同店を代表するのが、草原の香りをイメージした「暁 ALE(あかつきエール)」(写真上)だ。グレープフルーツのような爽やかな柑橘系の香りのホップ「シムコー」を使用しており、雑味のないすっきりした香りと、芳醇で濃厚な味わいがある。
写真上・手前は突き出しで、国産うずら卵とミニトマトをだしの効いた土佐酢に漬けたピクルス(突き出しはその時々で変更あり)。
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ひとくち飲んで驚かされるのが、自然栽培のみかんを皮ごと使用した季節のビール「みかんエール」(写真上)。よくある甘いフルーツビールとは一線を画し、早生みかんの爽やかな香りと上品なほろ苦さが印象的なビールだ。
みかんの季節が終わると、「レモンエール」「甘夏エール」「南高梅エール」と変わっていくとのこと。今年の春は桜を使ったビールを準備中だ。季節ごとに驚きのある味わいに出逢えそうで、楽しみも増える。
東日本の被災地支援で生まれた絆が、すべてのフードに息づいている
ブルーパブのフードといえば、ポテト料理や肉料理が思い浮かぶだろう。だが同店のフードは、東北地方の食材をメインに使用した日本料理が主である。岩手県宮古市の『田老(たろう)町漁協』のわかめ、花巻市のほろほろ鳥(ちょう)や白金豚(はっきんとん)、住田町(すみたちょう)の鶏、陸前高田市にある広田湾の牡蠣や三陸地方の魚という具合だ。
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それは、同店の運営会社が東日本大震災後から現在までずっと“食を通じた復興支援”を続けていることに由来する。使用される食材の多くは、そうした被災地の支援活動で生まれた強い絆で知りえた、産地直送のものだという。
選りすぐりの食材を使った繊細でシンプルな日本料理に、穏やかな味わいの同店のビールはぴったりマッチする。その中でも、特におすすめの組み合わせをご紹介しよう。
ビールとも見事に調和! 東北食材の味わいを活かした逸品たち
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ランチタイムに提供している4種のカレーの中でも一番人気は、「ほろほろ鳥のナッツカレー」(写真上)。
日本で唯一、ほろほろ鳥の飼育に成功した岩手県花巻市『石黒(いしくろ)農場』の鳥を使用しており、触れるとくずれるやわらかさ。ココナッツミルクにゴマを合わせているので、スパイシーななかにもまろみとコクがある。
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そのコクにマッチするのが、3種類のローストモルトの芳ばしさが広がる「暁 BROWN(あかつきブラウン)」(写真上)。少し焦げたカラメルに似た香りと甘みが、麦茶のようにホッとするなつかしさを感じさせる、味わい深いビールだ。
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岩手県産の銘柄鶏・みちのく清流味わいどりの蒸し鶏と生カブを使用した「清流鶏とかぶのカルパッチョ」(写真上)。かぶの上にトッピングされた粒状のものは、日本野菜ソムリエ協会開催の「調味料選手権 2018」で優勝した国産の「ゴールデンマスタード」。
プチプチとした食感はキャビアのようで、辛みは穏やか。白醤油・みりん・ハチミツで味を調えた、上品な酸味とうまみがあり、蒸し鶏とカブに絶妙に調和している。
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こちらには「暁 ALE」(写真上)を。苦みが少なくうまみのバランスが良いので、この3つの食材の絶妙な調和を邪魔せず、そっと引き立ててくれる。
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「白ハマグリと真崎ワカメの酒蒸し」(写真上)に使用している白ハマグリは、産地の千葉・船橋からとれた翌日に届く新鮮なもの。「うまみが濃すぎる時は水だけで蒸すこともあるほど」というだけあって、肉厚の身からほとばしる濃厚なうまみがたまらない。
「暁 RED」(写真上)は、副原料(スパイスやフルーツなどビールの味を調整する素材)に『田老町漁協』の真崎わかめを使用しているビール。ほのかに感じる磯の香りを、モルトの甘みがやさしく包み込んでいる。海鮮を使った料理といっしょに味わうと、新鮮な海の幸の野性味と同調しつつ、さらにそのうまみを膨らませてくれる。
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▲“陰の主役”と言いたいほど存在感があるのが、三陸の荒波に揉まれしっかりした厚みと濃いうまみのある日本北限の南部ワカメ
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白ハマグリの身を食べたあとに残っただし汁は、ご飯を入れてシメの雑炊として味わい尽くすことができる。汁にはうまみたっぷりのだしが十分すぎるほど出ているので、針(はり)生姜を添える程度だという。
ビールの世界を面白くする、新登場の“ビールスイーツ”
そしてこの春から登場するのが、『暁ブルワリー』のビールを使ったスイーツ4種。製菓業界出身の上地さんが「ビールの持つ穀物の味わいをスイーツで活かせれば、ビールの世界がもっと面白くなるのでは」と、考案した。
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▲手前から、「暁 ALE」「暁 BROWN」「暁 BLACK」を使用した「ビール・ジェラート」
『暁ブルワリー』のビールを使用した3種類のジェラートは、単にビールの味だけでなく、それぞれの個性もしっかり感じられ、それでいてジェラートとしての完成度も高い逸品。
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もっと甘みが欲しい場合には黒蜜をかけて食べても良い。黒蜜をかけるとスイーツ感が強くなると思いきや、むしろビール本来の風味がぐっと強く感じられるようになる。
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▲プリンの材料に麦芽をプラスした「ビール麦芽プリン」も、ビールのほろ苦さとコクが甘みを引き立てている楽しい一品
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これほど違和感なくビールがスイーツの甘みに調和するのは、『暁ブルワリー』のビールが、どれも麦のうまみを穏やかに活かしたやさしい味わいだからだろう。このビールをしみじみと堪能し、安らぎを感じることに、自分の日本人としてのルーツを再発見したような気すらする。
早くも2号店が誕生! キーワードは「ビール蔵と炭火」
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そして、2019年4月3日には『暁ブルワリー』旗艦店の第2号として、「炉端とおいしいビール」をコンセプトにした『暁タップス 芝大門』がオープン。「ビール蔵と炭火」をキーワードに、囲炉裏端のような温かみのある店を目指すという。
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日本という根を軸にさまざまな挑戦を続ける『暁タップス』。日本のクラフトビール作りの成熟と、クラフトビールにはまだまだ多くの発見があることを強く感じさせてくれる店だ。
【メニュー】
ビール
暁 WHITE (small 、以下同)600円
暁 ALE 600円
暁 RED 600円
暁 BROWN 700円
みかんエール 700円
フード
ほろほろ鳥のナッツカレー(サラダ付き) 1000円
わさび香る大人のポテサラ 600円
清流鶏とかぶのカルパッチョ 700円
白ハマグリと真崎わかめの酒蒸し(〆雑炊まで) 1,800円
スイーツ
ビール・ジェラート 各500円
ビール麦芽プリン 500円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
暁タップス 銀座
- 電話番号
- 03-3573-0151
- 営業時間
- 月~土11:30~23:30、日・祝11:30~22:30
- 定休日
- なし
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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