フレンチビストロに器ギャラリーが併設。「好き」が詰まった空間
好みの器があると、盛り付けや食事の時間が、いつもよりもっと楽しい。そんな気持ちを思い出させてくれるのが、東京・代々木上原のフレンチビストロ『AELU(アエル)』だ。
オープンは2017年9月。オーナーを務めるのは、代々木上原の人気ビストロ『メゾンサンカントサンク』や、大衆居酒屋『ランタン』を運営する株式会社シェルシュの代表である丸山智博さん。
シェフの松浦真吾さんは、2018年より同店で腕を振るっている。
「小学校時代には既に、将来の夢が料理人でした。高校で料理のいろはを学んだ後、長野のレストランや都内ビストロに勤め、その後、縁あって『AELU』のシェフになりました。『AELU』の器へのこだわりは格別だし、店内に併設のギャラリーで企画展を開催するたびに新しい器に出逢えるから、『この器に合うメニューはどんなだろう?』と、いつも想像が膨らみます」と松浦さん。
ギャラリーには、ガラスものや土物の他、アートピースや花器までも展示。
取り上げる作家さんは国内外問わず。オーナーの丸山さんと、バイヤーの真子拓也さんとのふたりが、それぞれ各地の工房や陶器市などを訪れた際にグッときたものを取り入れているのだという。
なぜ、レストランにギャラリーを?
「“日常に器がある生活”を提案したいからです」。そう答えてくれたのはマネージャーの八巻隆司さん。
八巻さんによると、営業中のBGMには店内のレコードを使用しているとのことで、「調理の音、お客さんの話声、BGMが心地よくミックスするといいなと思っております」と空間づくりへの想いを語ってくれた。
▲左から、シェフの松浦さん、マネージャーの八巻さん
コリアンダーの花で軽やかに彩られるのは、ハギの肝和え
取材に訪れた当日は、徳島の作家さんが手掛ける「SUEKI CERAMICS」の展示販売がおこなわれていた。まず用意してくれたのは、器と同じ徳島産のウマヅラハギに肝ソースを添えた一皿。
鮮度のいいウマヅラハギは、コリコリとした食感が楽しく、そのままでも十分おいしいが、ウマヅラハギの肝を日本酒で和えたソースを絡めると味に深みが出て酒のアテにもぴったり。海のフォアグラとでも呼びたくなる濃厚さと心地よい苦みを併せ持つ肝とのマリアージュによって、さっぱりした味わいのハギが俄然クリーミーになるのだ。
食材まわりを彩るのは、コリアンダーとオリーブオイルをミキサーでブレンドした後、抽出して作った自家製コリアンダーオイル。数適のオイルにここまで手間をかけるとは、頭が下がる。
ビストロで肝和えがメニューにラインナップされていることにも驚かされるが、パクチーやプリプリのソラマメと一緒に肝和えを食べると、不思議と日本酒よりもワインが恋しくなる。
運ばれた瞬間にときめく! まるでデザートのような魚料理
魚の新鮮さを楽しめるメニューをもう一品ご紹介。
鮮やかな赤い食材が目にも楽しい「カツオ、ビーツ、ラズベリー」は、カツオの刺身、ボイルしたビーツ、ラズベリーのコンビネーションが大層ユニーク。
肉厚なカツオは、甘みのあるビーツ、酸味の効いたラズベリーと合わさるとうまみがより一層引き立てられる。横に添えられたフランボワーズソースを一緒にいただくと、口の中にまろやかな風味が広がり、実に心地よい。
「奇跡の野菜」とも言われるスーパーフード・ビーツと、美肌効果が期待できる栄養素がたっぷりのカツオの組み合わせなので、美容に関心の高い女性には嬉しい一品だ。
シェフ自身、食材との出逢いによって新しい試みを楽しむことも!
続いてご紹介するのは、鮮やかなグリーンの木の芽ソースの上に、大ぶりなワラビ、厚みたっぷりのサワラが乗っかった「サワラのポワレ、木の芽のオランデーズソース」。
上に散りばめられている黄色の食材は、なんとも珍しいサワラのからすみ。松浦シェフいわく、「さばいたら大きな卵が入っていたので作ってみました」とのこと。食材との出逢いを大切にするシェフは、毎週欠かさず豊洲市場に訪れ、旬の魚介の目利きをしているのだとか。
サワラのからすみは、一般的なボラのからすみより粒が大きめで卵の食感が楽しく、単品で食べても抜群にうまい。それを調味料(トッピング)として使用するとはなんとも贅沢。
もちろん、ふっくらと蒸し焼きされたサワラとワラビは、オランデーズソースとも相性ピッタリ。バターや卵黄をブレンドしたクリーミーなソースには、山椒の香りがいっぱいに詰まっていて、濃厚なのにとっても爽やかなのが心憎い。
うまみと弾力たっぷりのシャモを、ジューシーに焼き上げたシグネチャーメニュー
最後に、シグネチャーメニューである「竹鶴ファーム 一黒シャモのローストチキン」をご紹介。
うまみ溢れるジューシーな肉質と歯ごたえが特徴的な黒シャモを、一羽まるごとフライパンに乗せて焼き色を付けた後、オーブンで火入れしたら適度な大きさにカット。
チキンは、ニンニクやバター、ローリエ、タイムとともに全面を焼き直し、フォン・ド・ヴォーと白バルサミコの香りを封じ込めて仕上げ、4種のソースとともにテーブルに運ばれてくる。
4種のソースの内訳は、上から、土の力強さを有した「ゴボウのピューレ」、素材そのままの香りを楽しめる「春菊のピューレ」、日本酒と梅干を火にかけてアルコールを飛ばした後、エシャロットとバターを加えた「煎り酒ソース」、そして酸味の効いた「マスタード」とバラエティ豊か。
チキンは、2~3人前目安の「半身」か4人以上の「一羽」から選べるが、ソースの食べ比べをしているうちにもどんどん食べ進んでしまうので、ジューシーなシャモを存分に堪能したいなら、はじめから「一羽」をチョイスしてもよいかも。
泡、白、ロゼ、赤ともに各種ナチュラルワインがそろう
同店で扱うワインは、すべてナチュラルワイン。泡、白、ロゼ、赤のいずれも珍しい品が多く揃っているばかりか、生産者を招いて試飲会やパーティーを開催することもあるという。
ノンアルコールも豊富なのでお酒が得意でない人も安心。自家製の梅シロップを使ったサイダーや、ブルックリン産のハーブティーなどがそろい、存分に楽しめる。
▲自家製の梅シロップ(写真上・左)
これからの季節、テラス席で夜風を感じながらおしゃべりに花を咲かせるのも最高に気持ちよさそうだ。もちろん、カウンターでゆっくりと一人飲みを楽しむのもオススメ。
自由な感性で「和える」「逢える」ことにちなんだ店名を持つ『AELU』ゆえ、訪れるたびに、食材や器、人をはじめとする、さまざまな要素が融合した心地よい出逢いにも期待できるはず。
【メニュー】
・竹鶴ファーム 一黒シャモのローストチキン 半身(2~3名)3,900円 一羽(4名~)6,900円
・サワラのポワレ、木の芽のオランデーズソース 2,400円
・徳島県産 ウマヅラハギ、肝のソース 900円
・カツオ、ビーツ、ラズベリー 1,200円
・グラスワイン 900円~
・ボトルワイン 5,000円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
撮影:岡崎慶嗣
AELU(アエル)
- 電話番号
- 03-5738-8068
- 営業時間
- Gallery : 11:00~19:00 Bistro : 18:00~25:00(L.O.24:00)
- 定休日
- 日曜日(ギャラリーは無休)
- 公式サイト
- http://www.aelu.jp/
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。