北海道出身のシェフが、故郷の食材を使って創る創作フレンチ
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昔ながらの下町らしく、落ち着いた風情が色濃く残る根津エリアに、2019年4月11日、ベーカリーショップ併設のビストロ『Cise(チセ)』がオープンした。
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場所は東京メトロ千代田線の根津駅から徒歩5分ほど、上野動物園裏手の「動物園通り」沿い。静かで落ち着いた通りの雰囲気にマッチした、シックなブルーの外壁が目印だ。
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「昔から家族や友達に料理をふるまうのが好きだったんです」と語るオーナーシェフの宮武郁弥(みやたけふみや)さんは、北海道出身。北海道の豊かな自然の中で育ったのびやかさを感じさせる、穏やかで気取らないお人柄。
『Cise(チセ)』では、宮武シェフの故郷から取り寄せた北海道の食材を中心に、創作フレンチを提供している。
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宮武シェフは関西で料理人としてスタートし、創作野菜料理の名店として知られる『Coulis(クーリ)』(新富町)で腕を磨いた。
「『Coulis』では、ヴィラデストワイナリー(ブドウから育てているワイン醸造所)に泊まりこみでワインの研修をしたり、野菜畑の真ん中でバーベキューをしたりと、ふつうのレストランではできない体験をたくさんさせてもらいました。おかげで、食に関わる視野が大きく広がったと思います」(宮武シェフ)。
その体験を通じてワインの魅力に目覚め、ソムリエの資格を取得した宮武シェフは、パン作りの楽しさにも開眼。“パン界のカリスマ”と呼ばれる堀田誠氏に師事し、独自の工夫を重ねてパン作りをしている。『Coulis』で人気の高かった自家製パンは、『Cise』でも提供している。
自慢のパンは故郷の粉を使い、酵母から手作り!
入り口横にあるカウンター席の一角には、常時3~5種類の焼き立てパンが並び、店に入った瞬間から、芳ばしい香りが心地よく漂う。
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宮武シェフが作るパンは、故郷である北海道の粉「キタノカオリ」「春よ恋」「モンスティル」「タイプER」などを季節によって使い分け、レーズンやヨーグルトから手作りした酵母を使用しているのが特徴。
水分が多いため成形しにくく手がかかる「高加水」で手ごねするという、非常に手のかかる作り方だ。
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▲パン3種盛り合わせ
どれも飾り気がなく素朴な見た目だが、高加水タイプの特有の気泡が大きくふんわりした食感で、もっちりした強いかみごたえもある。麦の香りが豊かに引き出されていて、かめばかむほどうまみと甘みが湧き上がってくる。この極上の味わいを求めて、パンだけを購入していくお客も多い。
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▲店内奥には、4人掛けのテーブル席も。
オススメは、4,500円のおまかせコース!
20種類ほどのアラカルト料理(500円~)もあるが、宮武シェフの料理の真髄を味わいたいなら、4,500円のおまかせコースがオススメだ。今回はその一部を紹介する。
一品目は、季節のスープ。
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▲ゴールドラッシュの冷製スープ 皮付きヤングコーンの低温ロースト
冷製スープに使用しているのは、甘みが強く皮がやわらかいトウモロコシ「ゴールドラッシュ」。うまみがよく出る芯の部分もいっしょに煮込んでいるため、トウモロコシ特有のさわやかな甘みをより強く感じる。
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つけあわせは、73℃で2時間ローストした後、焦がしバターでさっと炒めた皮付きヤングコーン。かみしめた瞬間、口の中に甘みたっぷりの水分がほとばしる。ローストしているのに、ひげ根までしっとりみずみずしく、驚くほど甘い。
ガリガリ食べる自家製ラー油、穴子のフレンチトースト、自由な発想から生まれる傑作料理!
カルパッチョなどの軽い前菜に続いて登場したのは、なんと水餃子だ。
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▲エビとオクラと青唐辛子の水餃子
「自分がおいしいと思うものは、フレンチの枠にこだわらずに作って出したい」という宮武シェフの料理の自由さを象徴するかのような一品。具にはエビ、オクラ、青唐辛子のほかにコブミカン、レモングラスなどのハーブも入っている。この水餃子だけでもかなりのインパクトだが、注目は上にかけた自家製ラー油。
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クミン、コリアンダー、フライドオニオンのほかに、カシューナッツとレーズンがまるごと入っているのが特徴。かむたびに異なる香りや味わい、歯ごたえが交錯し、まさに「ガリガリ食べるソース」。パンにこのラー油を付けてワインといっしょに味わい続けたいと思うおいしさだ。
この後にサラダ、続いて魚料理。
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▲煮穴子フレンチトースト
「煮穴子」と「フレンチトースト」という意外な取り合わせに驚くが、口に入れた瞬間、煮穴子のふんわり感とフレンチトーストのとろけるような食感が、見事に融合。どこまでも軽やかなのに、飲み込むのが惜しいほどの強烈なうまみを感じる。これは絶品だ!
オープン当初はフォアグラを乗せたフレンチトーストを出していたが、夏の間の代替品として「フォアグラのようなうまみがあり、フワフワした食感のもの」を探して着目したのが、寿司店の職人直伝で作り方を教わったという「煮穴子」。フレンチトーストのパンももちろん自家製で、パンそのものにしっかりしたうまみがあるからこその一体感だ。
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▲低温調理のポークカツレツ
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ポークカツレツの断面は、まさに露を含んだ薔薇のような鮮やかさとみずみずしさ。
大きな塊肉のまま、55℃という低温で約5時間ゆっくりと加熱したのち、1人分ずつカットして自家製パン粉で揚げ焼きしているため、赤身部分は完全に火が通っているのに、たっぷりの肉汁を抱いてしっとり、やわらかだ。
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ピンクのソースは、紫色が鮮やかな葉野菜・トレヴィスと、ビネグレットドレッシング、ハチミツをミキサーにかけたもの。やわらかな酸味とやさしい甘みが、とろけるような豚肉の味わいをさらに引き立てている。
上の写真左下に見えるのは、珍しいブドウの葉のフリット。チーズ入りの衣のパリパリとした食感が楽しく、ほろ苦さと甘みがある。
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フリットに使用しているブドウの葉(写真上左)は、メルロー種のワイン「ウォーターバレー・エッジ・ピンク(長野)」(写真上右)を生産するウォーターバレーヴィンヤードから取り寄せている。
この後、デザートでコース終了。この内容で4,500円は、かなりリーズナブルな印象だ。
食事は軽めにして、ワインを楽しみたいという人のために、軽い料理が5品前後で3,800円のおまかせコースもある。
ドリンクにも遊び心あり
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「ワインは料理に合わせて、自然派ワインと正統派ワインをバランスよくそろえています。国産のワインも個性的な味わいでおいしいものが増えているので、いろいろと取り寄せています。ちなみにシェフの故郷が北海道なので、ウィスキーはニッカです(笑)」(ソムリエの大橋あゆみさん)。
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ワイン、ビール以外で人気なのが、自家製レモンサワー。ジンベースで、ローリエ、クローブ、唐辛子、有機栽培のレモンなどを漬けこんだ独特のもの(写真上)。
「クローブが入っているので、コーラのような不思議な味わいになるんです」(宮武シェフ)。
我が家でご飯をふるまうように、自分がおいしいと思うもので喜んでもらいたい
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▲左から、ソムリエの大橋さん、宮武シェフ、厨房スタッフの安斉さん
「家に友達を呼んで、自分がおいしいと思うものを出して、みんなが喜んでくれるとすごくうれしいですよね。そんなふうに気張らず、誰でもふらっと寄ってリラックスしながら食事を楽しめる店を作りたいと思って、この店を始めました」(宮武シェフ)。
店名の『Cise』とはアイヌ語で「家」の意味。気取らない温かなサービスと、心のこもったオリジナリティあふれる創作料理で、根津の人々に愛される第二の“家”になりそうだ。
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【メニュー】
青のりチャバタ 150円、200円
バゲット 300円
食パン400円
かにかまチーズ 600円
おまかせコース 3800円、4500円
パン3種盛り合わせ(1人前) 600円
グラスワイン 750円~
自家製レモンサワー 800円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。価格はすべて税込です
Cise(チセ)
- 電話番号
- 050-3461-8728
- 営業時間
- 12:00~15:00(L.O.14:30)、18:00~23:00(L.O.22:30)
- 定休日
- 不定休日あり
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