すき焼きでいただく熟成和牛のうまみに衝撃!
熟成肉と聞くと、まず塊肉である「ステーキ」を思いうかべる人がほとんどだろう。ところが、熟成肉のおいしい食べ方はステーキだけに限られたものではなかった。我々日本人にとってのご褒美鍋「すき焼き」でいただく薄切り熟成和牛が、これほどまでに味わい深いとは…。
『香水亭(かすいてい)』は株式会社mihakuが運営する日本料理の店で、東京に居ながらにして京のもてなしとこだわりの京料理とを愉しめる『瓢喜(ひょうき)』の姉妹店。六本木本店、京橋店、新橋店の3店舗で、名物の「蒸しゃぶ」や「すき焼き」が楽しめるのがウリであったが、2019年5月より“牛肉メニューは全て熟成和牛を利用”とメニューを一新したという。
今回は『香水亭 六本木本店』へ。店や熟成和牛、料理について紹介していこう。
地下鉄日比谷線 六本木駅から徒歩約2分、六本木通りから南側に少し歩いたところにある。一瞬、ここは和食の店なのか?と疑ってしまう洋風な佇まいの建物入り口に『KASUITEI』というローマ字と、店のロゴが入った粋な暖簾が目印だ。
通路に並ぶ扉のひとつを開けて個室に入る。テーブルと椅子はやさしい色の白木で、ライトに照らされ内装にあしらわれているガラスと銀箔がキラリと輝いている。同店は、日本ならではの芸術性と品を備えながら、洗練されたモダンな空間の、お忍び感ある大小の個室が充実している。デートや接待、慶事の集まりなど、大事な会食の席にぴったりだ。
すき焼きに最も合う「ドライエイジング」の熟成和牛
ご存知だろうか、熟成肉といっても、その製法はいくつかある。
管理のしやすさから現在一般的に広く出回っているといわれるのが「ウェットエイジング」。真空パックに入れて冷蔵庫で短期間熟成させる方法だ。そして昔ながらの「枝枯らし」は、枝肉(皮や内蔵を取り除いた胴体部分)のまま食べごろになるまで冷蔵庫内に吊るしておく方法で、「ドライエイジング」は、適した環境で低温と湿度を保ち、風をあて、乾燥させながら熟成させることをいう。環境だけでなくトリミングにより可食部が減少してしまうため、非常に贅沢な熟成方法だ。
『香水亭』は研究を重ねた結果、同店オリジナルのすき焼きに最も合う「ドライエイジング」の熟成和牛に行き着いた。―― 従来のフレッシュな牛肉ではなく、なぜ熟成肉なのか。
「初めてエイジングビーフを食べたとき、噛むほどにじんわりあふれるうまみの深さに衝撃が走りました。そんな折、最新鋭の工場を有する食肉会社さんとの出逢いもありまして。このおいしさをどうにか自分達の店でご提供できないものかと、協力いただき試行錯誤を繰り返して、やっと実現することができたのです」と代表取締役社長の中嶋一生氏は振り返る。
「ドライエイジング」の熟成肉を作るには、肉を乾燥させ熟成させるための特別な「熟成庫」が不可欠。同店は食肉会社に委託をし、常に温度は0度、湿度は80~95%、適正な送風の管理下のもとプロがチェックを行いながら30~40日間ほど熟成させていくという、徹底した環境で手当てした肉を仕入れている。
こうして熟成させた和牛は、熟成前と比べるとうまみ成分が1.6~1.8倍、甘み成分が約1.5~2.1倍、風味が2.4~3.7倍にも(※1)。数字で見るとその差は歴然だ。
まずはすき焼きの前の八寸で、さまざまな季節の食材をほおばる
うまみや甘み、風味がそんなに増すものなのかと驚き、どんどん肉への期待が高まる。
夜のコース「熟成和牛すき焼き会席」には写真左・手前の箱「八寸」が付く。フタを開けると、左から鯖の松前寿司、玉子チーズカステラ、赤こんにゃく土佐煮、鶏味噌松風、新丸十蜜煮、インカのめざめから揚げ、若桃甘露煮、紫花豆蜜煮、枝豆塩茹で、胡麻豆腐が並ぶ。
5~7月の初夏が旬の若桃に季節を感じ、そのやさしい甘みにホッとする。インカのめざめやサツマイモのホクホク感や、赤こんにゃくや胡麻豆腐のほどよい弾力感など、食感のコントラストも楽しい。
熟成和牛に、オリジナルの割り下とだしが、合う!
いよいよ噂の熟成和牛のリブロースがやってきた。色は、いつも見ている牛肉より少し濃いめの赤だろうか、という程度の違いで、ほどよいサシが入っている。
肉の左側にはすき焼き用の食材がズラリ。ほうれん草、白ネギ、トマト、椎茸、焼き豆腐、赤こんにゃく、丁子麩(ちょうじふ)と、種類も豊富だ。全て日本国内からその時季においしく、すき焼きに適したものを選定している。
特徴的なのは、八寸にも入っていた“赤こんにゃく”であろう。これは中嶋氏の故郷・滋賀県の、近江八幡市の名物だ。プリッとした食感は白滝よりも歯ごたえがあり、鍋の彩りにも一役買っている。
受け皿に生卵をといて、準備完了。さあ、いよいよ肉である。
「全体的に肉の色が変わったら食べごろです」と、最初の肉はお店の方が火の通し加減を説明しながらサーブしてくれる。
割り下にサッとくぐらせて、箸で肉を持ち直しクルッとまるめて…
全体にちょうど火が通った瞬間、一番おいしいところを、と急いで口に運ぶ。
噛むとふわっとやさしく戻る、しなやかなやわらかさに驚く。そして噛むごとにほんのり染み出してくる肉の力強いうまみが口中をめぐる。肉をくぐらせた「割り下」は東京で研鑽を積み試行錯誤して作りあげた関東風のものに、創業の地である京都で培った伝統の「だし」をあわせたもの。少し甘さ強めで、肉の力強いうまみや風味に負けずに肉を引き立たてるという、絶妙なコンビネーションだ。
1枚肉を楽しんだところで、他の食材を投入。
特製の割り下をくぐらせた熟成和牛肉は、噛めば噛むほどうまみが増幅していく。もうひとつ、と肉を口に運ぶたびにその味わい深さに惹かれていく。合い間にフレッシュ感のあるほうれん草や、割り下をたっぷり吸い込みふかふかとなめらかになった丁子麩などをほおばり、また肉へと戻る。このコンビネーションとおいしさに完全ノックアウトだ。
肉を全て平らげたところに「さあ、〆に入りましょう」と、うどんが投入され、卵とじに! 肉のうまみが溶け込んだ割り下でいただくうどん、お腹がいっぱいと思いつつもペロリと完食してしまう。
すき焼きにおすすめのドリンクが、秋田県『新政酒造』のスパークリング日本酒「白麹仕込み純米酒 亜麻猫(あまねこ)スパーク」だ。肉も割り下も濃厚なので、「亜麻猫スパーク」の甘酸っぱさをもった軽やかな味わいが、口の中を爽やかにまとめてくれる。
ふと思い出してしまう、罪な味
「熟成肉には、日が経つとまた食べたくなるという魅力があるのでしょうね、今再訪されるお客様が増加中です」と中嶋氏。うまみが増幅した熟成和牛を、我々日本人がこよなく愛する「すき焼き」というメニューで割り下とともにいただくことが醍醐味だ。おいしさとともに喜びも重なってくる。
ふと思い出し、また食べたくなる罪な味、こんな贅沢で至福のご馳走は、他にない。
画像提供(店、料理一部):株式会社mihaku
(※1)㈱エスフーズ 資料より(日本認証サービス株式会社 平成24年3月21日調べ)
【メニュー】
ランチ
熟成和牛リブロースすき焼き御膳 3,800円
熟成和牛すき焼きコース 7,000円
熟成和牛サーロインステーキ 5,000円
ディナー
熟成和牛・上州麦豚すき焼き 5,000円
熟成和牛すき焼き会席 9,000円~18,000円
熟成和牛ステーキ会席 10,000円~18,000円
熟成和牛蒸しゃぶ 8,000円~15,000 円 他
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別(税込)です
京都 瓢嘻 六本木店
- 電話番号
- 050-5486-5462
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 土・日・祝
ランチ 12:00~15:00
(L.O.13:30)
月~日・祝日
ディナー 18:00~23:00
(L.O.21:30)
日
ディナー 18:00~22:30
(L.O.21:00)
- 定休日
- 無
定休日なし、ただし臨時でお休みする場合がございます。
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※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。