打ち立て麺のおいしさに感動! 本格手打ちパスタを気軽に楽しめる店
日本人にとって身近なイタリア料理、パスタ。
気軽に食べられる喫茶店のスパゲッティから、リストランテのシェフ渾身のひと皿まで、メニューのバリエーションが豊富なことも魅力の一つ。
だからこそ、シーフードやトマトなど、ソースや具材の組み合わせにフォーカスされがちだが、パスタそのもののおいしさに唸ってしまう店がある。
駒場東大前にある『TOKYO PASTA WORKS(トーキョーパスタワークス)』だ。
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京王井の頭線「駒場東大前」駅。渋谷から2駅しか離れていないが、東大駒場キャンパスや駒場公園など緑も多く、閑静な住宅街が周囲に広がり、どこかゆったりとした時間が流れている。
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『TOKYO PASTA WORKS』は「駒場東大前商店街」という昔ながらの商店街の一角にある。駅から2分ほど歩くと、通りに面した小窓から、食欲をそそる香りが漂ってくる。
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店内は、カウンター6席、テーブル4席と小ぢんまりとしている。
以前は喫茶店だったという店は、照明をアンティーク風に変えたり、カウンターをシェフ目線の高さにしたりする程度で、家具や什器類などはほとんど以前のまま。
そのせいか、昔からこの場所にあるかのように、街並みにすっかり馴染んでいる。
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「どこにでもあるそば屋のように、街のパスタ屋さんをイメージして店を作りました」と語る店主。都内のイタリアンレストランなどでキャリアを重ねながら、ずっと自分の店を持つことを考えていたという。
満を持して構えた小さな店。他とはちょっと違う個性があって、小規模な店でも作りやすいものと考えているうちに、手打ちパスタをメインにした店に思い至った。
想像を超えるモチモチ食感。手打ちパスタは毎日食べたくなるおいしさ
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おいしいそばを表す言葉に、挽きたて、打ちたて、茹でたてという言葉があるが、『TOKYO PASTA WORKS』では、生パスタを生地から手作りし、オーダーを受けてから製麺する“打ちたて、茹でたて”がいただける(ディナータイムのみ)。
定番メニューからいくつかを紹介していこう。
歯切れの良さに驚かされる「タリオリーニ」
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一番リピーターが多いという「からすみ タリオリーニ」。
タリオリーニは、幅1~3mmほどのロングパスタ。このパスタに、アサリのだしとバター、ニンニク、赤唐辛子を使ったソースと、パスタが隠れるほどたっぷりのカラスミを合わせている。
「主役は麺です」と語る店主。パスタのソースは、麺との相性やイタリアでの定番のセオリーを考えつつ、なるべくシンプルなものにし、麺が引き立つようにしている。
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フォークですくって一口食べると、モチモチ感の強さに驚かされる。しっかりとしたコシがあり、歯を押し返すようなプリッとした弾力と軽快な歯切れの良さはクセになりそうな食感だ。
独特な風味のカラスミと、アサリだしのソースが細目の麺に良く絡み、食べ出すと手が止まらなくなる。
ランチメニューでも大人気の「タリアテッレ」
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こちらもシンプルな「信州ヒラタケのタリアテッレ」。
ソースは、信州産のヒラタケとニンニクをオリーブオイルで炒め、パルミジャーノ・レッジャーノを加えたもの。少しクリーミーなソースが、うまみの濃いヒラタケを引き立て、平打ち麺のタリアテッレとのバランスも抜群だ。
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タリアテッレとタリオリーニは生地の配合が同じとのことだが、太さが異なるとここまで食感も変わってくるのかと驚かされる。モチモチ感やコシの強さがありつつも、タリオリーニよりパツンとした歯切れの良さが心地いい。
茹で加減は、形だけでなく、合わせるソースによっても変わるという。店主のこれまでの経験による勘で、それぞれメニューに合わせて、最適な加減でパスタの茹で具合が決まる。
店主のお気に入りは、うどんのようなパスタ「ピチ」
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「ピチ」というあまり聞き慣れないパスタを使った「ピチ フレッシュトマトと燻製リコッタ」。ピチは、うどんのような極太のパスタで、トスカーナ地方でよく食べられているという。
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生地は、うどんと同じく卵を使わない。見た目も他のパスタより色白。パスタマシーンで伸ばした生地をナイフでカットし、手で伸ばしていく。均一に伸ばしていくには、熟練した技が必要だ。
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できあがったピチは、生地の配合や茹で方が異なるせいか、うどんとは全く違う食感になる。生地が少し締まったような弾力があり、太さもあるため、より小麦の風味が感じられる。
合わせるソースは、煮込みソースやニンニクの効いたトマトソースを合わせるのが定番。こちらのメニューでは、自家製トマトソースに燻製リコッタチーズを合わせている。チーズのスモーキーな香りがトマトソースにまとわり、オトナの味わいに仕上がっている。
弾力のある存在感抜群のパスタの秘密は「生地作り」にあり
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弾力あるモチモチした食感の秘密は、パスタ生地にある。
使っている粉は、イタリア産の「デュラムセモリナ粉」に、北海道産の強力粉「春よ恋」をブレンド。デュラム小麦は、小麦の中でも超硬質と言われるほど硬さがあり、日本産の小麦をブレンドしているとはいえ、生地を練り上げるのはかなりの力作業だ。
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水分量少なめの生地は、こねては寝かせを繰り返し、ゆっくりと4時間ほどかけて練り上げていく。最初はボロボロしていた生地が徐々に水分と粉が馴染んでいき、一日寝かせるとツルンとした生地に仕上がる。
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生地の配合は、パスタごとにレシピがあるが、『TOKYO PASTA WORKS』では、店主一人で切り盛りしているため、1~2種類の生地から数種類のパスタが展開できるようなバランスのよい生地作りを大切にしている。工夫を積み重ねて、小さい店ながら、ディナータイムには6~7種類の本格的な手打ちパスタがラインナップされる。
パスタの前に、素材のおいしさを生かした小皿料理で一杯
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そば屋では、一品料理を肴にお酒を楽しむ“そば前”という習慣があるが、『TOKYO PASTA WORKS』では、小皿料理や炭火焼きで、グラスワインを一杯飲み、〆にパスタを楽しんでみたい。
「イタリアンじゃなくてパスタ屋です」という店主。小皿料理や炭火焼きはジャンルレスに、シンプルに素材を楽しむ料理をそろえている。
「温野菜」は、10~12種類ぐらいの旬の野菜を盛り合わせたもの。オリーブオイルと塩、パルミジャーノチーズのみの味付けで、シャキシャキした野菜の食感やうまみが楽しめる。
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ワインの肴にぴったりな「レバーパテ」。
湯煎で蒸し焼きにしたパテは、まるで茶碗蒸しのようなフワフワの食感。生クリームや牛乳を使ったパテは、まろやかでレバーの臭みも少なく、カリカリに炭火で焼いたトーストと合わせるといくらでも食べられそうだ。
このほか、仕入れによって内容が変わるという、小田原直送の魚介類を使ったメニューも見逃せない。
地域の人に愛されている“街のパスタ屋さん”
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宣伝をほとんどしていないのにもかかわらず、手打ちパスタや料理のおいしさが口コミを呼び、昼時には行列もできるほど。夜になれば、一人でふらっと訪れたお客がゆっくりとパスタとワインを堪能していくなど、すっかり街の風景に溶け込んでいる。
現在は自家製ロングパスタが中心だが、パスタを乾燥させたり冷凍させたりして、ショートパスタなどの種類を増やせないかと試みているところだとか。工程を加えることで、打ちたてとはまた違う食感が楽しめるというパスタに興味津々だ。
街角の小さなパスタ屋だけれど、キラリと光る個性は見逃せない。一度食べると忘れられない、ここだけのモチモチパスタを味わいに出掛けてみよう。
【メニュー】
からすみ タリオリーニ 1,380円
信州ヒラタケのタリアテッレ 950円
ピチ フレッシュトマトと燻製リコッタ 1000円
温野菜 720円
レバーパテ 600円
グラスワイン 600円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
TOKYO PASTA WORKS
- 営業時間
- ランチ11:30~14:00、ディナー17:30~23:00頃
- 定休日
- 日曜、月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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