ひっそり通いたい店が集結、大人のグルメエリア「西原」
舌の肥えた人々が集まる話題のエリア・代々木上原。都心へのアクセスが良く緑豊かで静かなこの地区は、住みたい場所として近年とくに人気が高いと言われている。
代々木上原は、西原・大山・上原・富ヶ谷と、さらに大きく4エリアに分けられるが、駅の北側に位置する「西原」エリアでは、シェフのこだわりや目配りが細部にまで行き届くこぢんまりとした店が人気。これらの味わい深い店が、地元民だけでなく「その店を目当てにわざわざ訪れる」人たちをも惹き寄せている。
フレンチの手法を駆使し“手で食べる”珠玉のコース料理を提供する『&piece』
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そんな西原に2019年5月、またひとつ要注目のレストランが誕生した。「ほとんどの料理が指でつまんで食べられる」というコンセプトの『&piece(アンド ピース)』。おつまみ感覚の軽い料理ではなく、“オシャレな見た目が売り”のフィンガーフードとも違う。第一においしい、そして可憐で繊細、かつ遊び心あふれる個性的なアプローチで、目も舌も楽しませてくれる。
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ウッディでカジュアルな内装やキッチンはほぼ居抜き。ニューオープンにあたり、この店の雰囲気や西原エリアにふさわしいコンセプトを考えたという。
「気軽に楽しんでほしい」との想いから“手で食べるスタイル”を提案。価格はランチ・ディナーともにコースで一律4,200円とリーズナブル、そしてメニュー構成は毎月変わるため、女子会やデートなどで何度も訪れたくなる。
名だたるフレンチレストランで経験を積み、新店のシェフに抜擢
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シェフの山岸正祈さんは、かのジョエル・ロブション氏が世界で展開するレストランの中でも最高峰のブランドである恵比寿『ガストロノミー ジョエル・ロブション』、1973年の誕生以来、優雅な料理・空間・サービスを提供し続ける銀座『 L'OSIER(ロオジエ)』、2015年のオープン直後から「予約の取れない店」として食通をうならせるモダンフレンチ・中目黒『CRAFTALE(クラフタル)』で経験を積んだ後、『&piece』のシェフに抜擢された。
料理の特徴
山岸シェフの提案する料理は洗練されたフレンチ。調味料や食材には和、中華、イタリアン、エスニックの要素も盛り込み、独特のスタイルでありながら、フレンチの正統な調理の基礎が維持されている。
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手で食べるスタイルを考案した背景には、“アジアNo.1”といわれるバンコクのスタイリッシュなインド料理店『ガガン』で受けたインスピレーションが強烈に影響しているという。
「ひとくちで味わう15品ですから、深く印象に残るようなアクセントをどこかに添えられるよう、食感や香り、食材の取り合わせなど、インパクトを与える要素を常に考えています」という山岸シェフ。
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食器づかいにも新しい概念を取り入れる。高級レストランのようなお皿はほとんど使わず、植木鉢や額縁、ミラーなどを食器がわりに。ほぼ指でつまめるので、カトラリーは不要だ。
ひとつひとつ味わう間、終始サプライズに包まれながらワクワク過ごせる。
ひと皿ごとに歓声があがる、ワクワクに満ちた珠玉のコース料理
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▲くちびるの形に仕上げられた「Caprese(カプレーゼ)」
溶かしたモッツァレラをトマトのジュレでコーティング、下にはバジルのペーストが敷かれている。味わいは間違いなくカプレーゼなのだが、口どけがなめらかで、食感も新しい。ホエーの塩分だけなので、ナチュラルな塩味だ。
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「隠れテーマは“KISS”。キスするようにお口で直接召し上がっていただきたいのですが、恥ずかしがって結局指でつまむ方が多いです(笑)。ぜひ、キスするように味わってみてください」と山岸シェフ。
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▲あじさいをイメージした「Chiken(チキン)」
しっとり蒸し焼きにした鶏モモ肉の中に低温調理の砂肝コンフィとくるみ油で炒めた刻み長ネギを詰めて丸めたもの。「バロティーヌ」という伝統的なフランス料理がベースだ。
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「あじさいらしさ」を愛らしく表現するためビーツの果汁を加えたほんのり紫色のシャンパンソースをのせて完成。焼鳥をイメージして味をつくった」という言葉通り、口に含むと和のテイストを感じる。しっとりやわらかい肉の食感と泡ムースのバランスが絶妙で、レモンの酸味がほどよく効いている。
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▲仔豚の頭蓋骨がインパクト大の「Pork(ポーク)」
下から新ジャガの蒸し焼き、豚の頭や舌、耳、豚足などでつくった煮こごり、淡いピンクの層は赤ワインでマリネしたほどよい酸味のエシャロット、一番上はクレソンのスプラウト。ジャガイモのホクホク感とエシャロットのシャキシャキ感が、なめらかな煮こごりにアクセントを添え、ワンバイトで味わってこそのまとまり感を満喫できる。
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▲イワシをメイン食材にすえた「Sardine(サーディン)」
正方形のミラーに置いて「水面」にただようイメージを表現。イワシ自体は塩をして表面をさっと炙っただけなので、「特有の風味をどう活かすか、バランスが難しい一品でした」と山岸シェフ。
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おいしさの秘密はイワシの下に敷かれた新ショウガのかき揚げだ。フレンチならではのベニエ生地をからめて細切りショウガをガリッとかために揚げてあり、その香りと食感がイワシとベストマッチ。きれいなグリーンは青梅のピューレ、愛らしいトッピングは赤シソ。ショウガと梅とシソ。和食でイワシを味わうときの組み合わせがフレンチの手法とうまく融合し、非常に印象的な一品に仕上がっている。
「もうちょっと食べたい」という気持ちが15品の料理にずっと続く。これは、そうなるよう計算された味と量なのだろう。
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▲店名のデザート「&piece(アンド ピース)」
店名のついたデザートも、名前と形状は同じで中身は月ごとに変化する。
こちらは、メロンパンを意識した焼き菓子。かためのクッキー生地とほんの少しやわらかめのサブレ生地、食感の異なる2種のピースでなめらかなムース状のカスタードクリームをサンドしてある。メロン果汁を加えた香り豊かなムースとカリッと香ばしい生地の組みあわせはインパクト大だ。
店内で楽しい時間を過ごせるだけではなく、ふらっと立ち寄ってくれる近隣の人がすぐにお菓子を買えるよう、ショーケースには焼きたてのフィナンシェと濃厚なバスクチーズケーキを用意。「地元でおいしい手みやげを買いたい」「買って帰って、お友達と家でお茶したい」という地元民の要望にこたえたい、との思いからだ。
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土日は早い時間に売り切れることも多い「フィナンシェ」と「バスクチーズケーキ」(写真上)。時間帯によっては焼きたてのフィナンシェを提供することもできるので、店内で珈琲を飲みながらのんびり待つのもいいだろう。バスクチーズケーキは冷蔵庫で1〜2日置いてさらに濃厚な味わいを堪能するのもおすすめだ。
山岸シェフが語る、「西原」の魅力とは?
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斬新なコンセプトの店をスタートさせ、「西原」で過ごしはじめた山岸シェフ自身が感じる、街の印象を伺ってみよう。
「オープン直後から気軽にお店をのぞいて気さくに声をかけてくださる、近所にお住まいの方らしき女性が多いです。新しいものに敏感だなと感じます。テイクアウトのフィナンシェとバスクチーズケーキも、ありがたいことに好調です。
西原の街並みは以前暮らしていた中目黒に似ている気がします。観光地ともいえない中目黒にすばらしい飲食店が増えて多くの人が集まっているように、西原にもその可能性があるのかなと。実際、西原エリアには魅力的な店が多いですね」(山岸さん)
お客様に届けたいのは「ワクワクする楽しいひととき」
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『&piece』で提供したいのは、ワクワクする楽しい時間。ここでしか味わえない珠玉の15品で、わざわざ足を運ぶだけの価値をつくる。
“西原に『&piece』というレストランがある”ではなく、“『&piece』があるのは西原だよ”とイメージしていただける料理を提供し続けたい、と語る山岸シェフ。西原をさらに醸成する一翼を担いながら、個性を発揮し続けてくれそうだ。
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▲山岸正祈シェフ プロフィール
1986年生まれ。辻調理師専門学校フランス校卒業後、『ガストロノミー ジョエル・ロブション』(恵比寿)、『ロオジエ』(銀座)を経て、『クラフタル』(中目黒)にて2015年のオープン時より従事。2019年5月、『&piece』のシェフに就任。フランス料理をベースとした「手で食べる」という新しいスタイルの料理を提供している。
編集協力:木戸上かおり
撮影:SHIge KIDOUE
【メニュー】
15品のコース 4,200円
Wine set(ワインセット)3 glass+coffee 3,000円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
&piece
- 電話番号
- 050-3477-0226
- 営業時間
- 月・木~日 12:00~15:00(L.O.12:30) 月・木~日 18:00~23:00(L.O.20:00)
- 定休日
- 毎週火・水曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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