食通も熱視線、いまラム肉がアツい!
いま、ラム肉ブームが到来している。
2017年、16年ぶりにフランス産のラム肉(生後1年未満の仔羊)が輸入解禁になったことを皮切りにブームが加速。かつてラム肉は、その独特な臭いやクセから敬遠されがちだったが、流通技術が発達した今、そのクセは軽減。むしろ、唯一無二なおいしさを堪能できる食材として注目されている。
そこで今回は、厳選したラム肉料理を堪能できる、個性派イタリアンを紹介したい。
ラム肉をとことん堪能できるイタリアン、代官山『インクローチョ』
やってきたのは、東急東横線・代官山駅から徒歩約5分。渋谷へ向かう大通り沿いにある『インクローチョ』。北イタリアの郷土料理をベースにしながら、ラム肉と魚介に特化したイタリア料理店だ。
店名の「インクローチョ」とは、イタリア語で“交差点”の意味。オーナーシェフの守屋直さんによると、新しい人や料理、ワインと出逢う場所、イタリア料理と日本の食材が交わる場所でありたいという意味を込めたという。
店内は、テラコッタ(素焼きのタイル)を施した床や円錐型の天井が特徴的で、温かみのある雰囲気。席数はカウンター5席とテーブル5卓の併せて20席ほど。また6名用の個室もある。
こだわりのラム肉はじっくり火入れし、強いうまみを堪能できる
同店のスペシャリテは「オーストラリア産 仔羊のロースト」(写真上)。
オーストラリア産サフォーク種のロース部分をラムチョップで使用。サフォーク種は、赤身の色が深く、肉質がやわらかい。何より、ラム肉特有の香りが強いのが特徴である。
そんな肉を高温オーブンで火入れし、短時間で取り出しては休め、再びオーブンへ……と繰り返すこと6回。休ませている間に余熱で肉に火が入ることで、肉汁を閉じ込めさせることができるのだ。
肉汁が外に流れ出ないことで、表面が潤った焼き上がりとなる。そんな仔羊のローストに、ルッコラを使ったソースと、ピスタチオの粉がかかったグリーンアスパラを添える。
しっとりやわらかなラム肉は、噛みしめるたびに肉のうまみがあふれ、ラム肉の香りが広がる。上質な肉を使っているため、塩コショウのみでもラム肉本来の味を楽しめる。
ラム肉は高タンパク質で低カロリー。それゆえヘルシーと言われるが、実はそれだけではない。ラム肉の脂の融点は人間の体温より高いため、脂が腸で吸収されにくいのだ。つまり、食べても脂肪になりにくいということ。
「仔羊のローストにも脂身がありますが、ぜひ残さずに味わってもらいたい」と守屋さん。ちなみにオーダーから提供まで約50分かかるので、早めに注文しておきたい。
肉料理に合わせたいお酒といえばワイン。同店ではイタリア産オーガニックワインを中心に、常時50~60種そろえている。銘柄は日々変わるので、その日のラインナップから好みの味を見つけるといいだろう。
ラム肉だけでなく、新鮮な魚介も魅力!
冒頭でも記述した通り、『インクローチョ』はラム肉だけでなく魚介にも力を入れている。守屋さん自ら豊洲市場に出向き、寿司店や和食店が買い付けるような魚屋から仕入れるなど、品質にこだわっている。
この日「お魚冷前菜盛り合わせ3種」として供されたのが、写真上・奥から反時計回りに「イタリア産の干し鱈のバッカラ・マンテカート」「勝浦産の初鰹」「勝浦産の金目鯛」。食材は旬のものを使用するため、このメニューはあくまで一例となる。
「バッカラ・マンテカート」はイタリアの郷土料理で、干し鱈を擦りつぶして練りあげたもの。そこに刺してあるのがトウモロコシの粉を煮てこねて作るポレンタのチップス。北イタリアではパンの代わりにポレンタを食べるほど、日常的な料理だという。それらをサルサベルべと呼ばれるイタリアンパセリで作ったソースと合わせる。ポレンタのチップスのパリっとした食感がいいアクセントになっている。
「勝浦産の初鰹」は、細切りにしたサラミをトッピングし、煮詰めたバルサミコ酢が添えられている。弾力あるさっぱりした初鰹と、塩気のきいたサラミがマッチしている。「勝浦産の金目鯛」は、5日間熟成させたドライトマトでシメて皮を炙り、白インゲン豆とはっさくのサラダを合わせ、オレンジのドレッシングが振りかけられている。ねっとりとした金目鯛に柑橘の爽やかさ、豆の食感が交じる贅沢なひと口。
ラム好き大満足、自慢の羊はホルモンまでおいしい!
続いて紹介するのが「北海道産 仔羊のトリッパの白ワイン煮」(写真上)。こちらの料理には、北海道の足寄(あしょろ)町の生産者から直送されるラム肉・サウスダウン種を使用している。サウスダウン種は繊細な肉質で、サフォーク種よりもやわらかいのが特徴。また飼育に手間がかかることから、希少な品種だとされている。
そんなサウスダウン種の内臓であるトリッパ(胃袋)を贅沢に使用。そもそもラム肉の内臓は貴重で手に入りにくく食べられる店も少ないことから、ラム肉好きには人気が高いメニューだという。
トリッパといえば、基本は牛肉を使うことが多いが、そこを羊肉に置き換えるところに『インクローチョ』らしさを感じる。ラムの香りがほのかに漂い、脂ののったトリッパは、同店に来たらぜひ食べておきたい。
最後は「自家製 仔羊のパンチェッタを使ったアマトリチャーナ」(写真上)。ローマの名物料理であるアマトリチャーナは、トマトをベースに玉ネギとパンチェッタ(肉の塩漬け)を使用して作るパスタのこと。パンチェッタは豚肉で作るのが一般的だが、こちらも羊肉に置き換えている。
パスタは、イタリア製の乾麺を使用。今回は乾麺だが、手打ちパスタを使うこともあるという。トマトの酸味と仔羊のパンチェッタのうまみが凝縮された一皿だ。
羊づくしのイタリアンとして、ラム肉好きから愛される店にしたい
ちなみに平日のランチタイムでは、パスタを1,500円ほどの価格帯で提供しており、週末はパスタをメインとしたランチコースも実施。平日も事前予約があればコース対応可能だという。こだわりのパスタを手軽に楽しめるのは嬉しい限りだ。
オーナーシェフの守屋さん(写真上)は、同店のほぼ隣に位置する老舗レストラン『代官山 小川軒』で修業をはじめ、『アンティカ・オステリア・デル・ポンテ』の東京店で研鑽を積んできた。その後渡伊し、北イタリアのヴェネト州で修業した経験も持つ。そのなかで最も魅了された食材がラム肉だった。
「僕がラム肉を好きというのもありますが、ラム肉は嫌いな人も多いけど、その分好きな人は大好き。羊づくしのイタリアンとして、ラム肉好きに愛される店を目指しています」(守屋さん)
注目グルメであるラム肉。とことんラム肉を堪能したければ、『インクローチョ』に足を運んでみてはいかがだろうか。日常使いはもちろんのこと、接待や特別な日の食事にもうってつけだ。
取材:名久井梨香
撮影:佐々木雅久
【メニュー】
お魚令前菜盛り合わせ3種 2,000円~4,000円
北海道産 仔羊のトリッパの白ワイン煮 2,000円
自家製 仔羊のパンチェッタを使ったアマトリチャーナ 2,300円
オーストラリア産 仔羊のロースト 3,400円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
※サービス料1人500円別途(ディナータイム)
インクローチョ
- 電話番号
- 050-3469-8891
- 営業時間
- 月~金 ランチ:11:30~14:30(L.O.13:30) 土・日・祝 ランチ:12:00~15:00(L.O.14:00) 月~土・祝日 18:00~23:30(L.O.22:00) 日 18:00~22:30(L.O.21:00)
- 定休日
- 不定休日あり
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