京都を代表する肉割烹の2店で腕を磨いた店主が独立
昨今、牛肉を和食として食べる「肉割烹」の専門店が人気である。
京都でいえば、創業70年の老舗『安参(やっさん)』や、『ミシュランガイド京都・大阪+鳥取 2019』で二つ星として掲載された『京洛肉料理 いっしん』などが有名。どちらも肉好きなら絶対味わっておくべきレジェンド店に違いない。
今回ご紹介する『京洛肉料理 かなえ』は、2018年11月にオープン。店主である榊原善史さんは、この2つのレジェンド店で腕を磨いた人物だ。
実は、『安参』は榊原さんの曽祖父が始めたお店。祖父が腕をふるう姿を間近に見た環境から肉料理に興味を持ち、料理の道へ進むことは自然のなりゆきであったであろう。家業の『安参』やホルモン専門店で目利き力や技術を磨く。
さらに「店をやるのだったら自分のところでも勉強しませんか?」声をかけてくれたのが『京洛肉料理 いっしん」の主人だった。その昔『いっしん』の主人が『安参』の味に感銘を受けて、自分もこんな店をやってみたいという思いから店を始めたのだった。
今回、榊原さんが自身の店を始めるにあたり、「今度は自分が技を伝授する側に」と名乗り出てくれたのだという。
レジェンド店のDNAを引き継ぐ『京洛肉料理 かなえ』の、時代と店の枠を越えて継承される味とはいかに。
上質な黒毛和牛に手間ひまをかけて、さらにおいしく
主役となる肉は、その時々で上質な黒毛和牛を厳選。京都・宮崎・長野・滋賀と産地にこだわらず、榊原さんの目利きで仕入れている。
「素材の良さはもちろん、それをさらにおいしく仕上げられるよう、手間ひまを惜しまないこと」
これが榊原さんのモットーだ。
細かい職人技で、かつてない肉のおいしさに出逢う
例えばこの「タン刺身」(写真上)。身を傷めないよう細かく刃を入れずに、サシが入った部分のみをカット。添えてあるのは、昆布ダシと2種の醤油をあわせた醤油に、みりんで調味した自家製の昆布の佃煮だ。
ほどよく締まった脂の食感は心地よく、噛むほどにトロリとほどけていく。タンの甘みに昆布のうまみと程よい塩味が加わり、一品目からすでに魅了される。
続いては「ミノてっさ」(写真上)。透き通るほど薄くカットされたミノは、まるでフグのてっさのような美しさ! これも榊原さんの技術の証と言えるだろう。
「鍋の中でしゃぶしゃぶっとして淡いピンク色が白く変わったら食べ頃です」と奥さんがタイミングを教えてくれる。
ぽん酢につけて口に運ぶと、実にやわらかな食感。コリコリとした食感が前面に出てくる印象の強いミノだが、噛むとほどけるやわらかさに驚くお客がほとんどだという。
うまみが凝縮した「タンシチュー」と「テールスープ」は必食
そして、同店を訪れたら絶対味わっていただきたいのが「タンシチュー」(写真上)。鍋にタンをまるごと1本入れて、酒と味噌、赤ワインで調味。6~8時間かけじっくりと煮て肉のうまみを凝縮させる。鼻腔をくすぐる香りだけでもご飯が進みそうだ。
タンは厚くカットされているのに、食感は豆腐を思わせるふるふるとしたやわらかさ。とろっと口の中でとろけていくようだ。時間をかけて引き出されたうまみが素晴らしく、味噌の風味も濃厚だが、角がなくまろやかな味わいである。
締めは「テールスープ」(写真下)がお決まり。昆布出汁に牛テールを入れて3日間炊き続けたスープは、塩のみの味付けにもかかわらず実にうまみが溢れている。牛テールは骨からすーっと肉が外れるほどほろほろだ。
上に添えられている三つ葉とショウガが口の中をさっぱりとするアクセントに。コラーゲンたっぷりなので女性にもうれしい一杯である。これは最後の一滴まで飲み干すしかない。
同店の逸品たちを味わうと、「今まで食べてきたお肉は何だったのだろう…」と感じられるほどの衝撃を受ける。それは、小さなころから肉の世界に浸り、肉を愛し続けてきた榊原さんだからこそなせる技なのだろう。
「京都はもちろん、全国のお肉好きに愛される店にしたいですね」とにこやかに語る榊原さん。技術を磨き続け、時間をかけ、手間をかけ、おいしさを表現していくに違いない。
<メニュー>
お刺身4種 (タン、心臓、ミノ、赤身)4,000円
ミノてっさ 1,400円(2人前)
タンシチュー 2,500円(2人前)
おまかせコース(2名様より) 8000円、10,000円、13,000円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
京洛肉料理 かなえ
- 電話番号
- 050-3462-8761
- 営業時間
- 18:00~22:30(L.O.22:00)
- 定休日
- 毎週木曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。