「スパークリングワイン」のおいしい飲み方、選び方【3つの法則】

みんな大好き「お酒」だけれど、もっと大人の飲み方をしたいあなた。文化や知識や選び方を知れば、お酒は一層おいしくなります。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエによる「お酒の向こう側の物語」
#「スパークリングワイン」のおいしい飲み方、選び方

2019年08月11日
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「スパークリングワイン」のおいしい飲み方、選び方【3つの法則】
Summary
1.「スパークリングワイン」選びの法則【ワインナビゲーター】
2.「泡+場面」「味わい+フード+場面」「国・地域+その国のフードや文化」
3.残暑をちょっと優雅に! でも気軽にスパークリングワインを楽しもう

「スパークリングワイン」のおいしい飲み方【ワインナビゲーター・岩瀬大二】

年々厳しくなる酷暑。これからの時期、残暑もまた辛そう……と、下を向いてもしょうがない。世の中よくできたもので、暑いからこそ楽しめるものがたくさんある。もちろん酒もそのひとつだ。

キンキンに冷やしたビールにシャリキンホッピー、レモンサワーもいつもより氷を多めに、酒場で流行の凍結レモンのサワーもいい。すっかり定番な感もあるガリガリ君サワーなんてのもいいし、焼酎なら、米焼酎。前もって水と氷で割ったものを冷蔵庫でじっくりと冷やしておく。これが最初の一杯目に実にいい。和の前菜、酒場のお通し、九州の郷土料理などに合う。さらには日本酒。夏酒を目にも涼しい酒器と共に。

と、ここまでは、暑い時期に酒を「冷やす」ことで得られる楽しみ方。ここから本題。スパークリングワインなら、暑い時期を「ちょっと優雅に」、「それでも気軽に」楽しむことができる。その理由は?

「泡+場面」で気分がさらに上昇!

まず、泡の存在だ。スパークリングワインは、その存在自体で、日常でも非日常でも晴れやかな気分をもたらしてくれる。その理由はむちゃくちゃシンプルだが「泡」であること。グラスに注いだ時、泡が広がり、グラスの中を立ち上る泡を見ているだけで気分がアガる。この泡、細かさ、繊細さ、立ち上る連続性、逆に快活さやゆるやかさなどいろんな個性がある。この泡が様々な場面で、より楽しく個性を発揮することで、さらに気分をアゲることができる。これが「泡+場面」の法則だ。法則と言っても難しくない。泡を見ていれば誰でも想像できるものだ。

例えば大らかな泡が、元気に立ち上がっていれば、自然に休日の晴れやかな午後が浮かぶだろう。具体的にいえば、ニューワールドのナイスプライスで、カジュアルなスパークリングワイン。オーストラリアや南アフリカ、チリなどが挙げられる(このあたりの各国別の紹介は後で)。テラスバーベキューでタンブラーに注いで楽しむのも気分がいい。泡をきれいに見せるなら定番はフルート型のグラスだが、バーべーキューやピクニックといった場面では、ステム(脚)があるだけで緊張するものだ。肉やシーフードに楽しくかぶりつくならステムは不要。泡も大らかで元気なら、タンブラー全面に上がっていくほうが、気分がいい。

夜、いいムードで夜景を……だったら一転して、繊細に立ち上る泡をフルートグラスで。やはりここはシャンパーニュやイタリアのフランチャコルタの出番か。ここでちょっと解説。
泡の出方は造り方によってさまざまに変わってくる。シャンパーニュやフランチャコルタ、さらにスペインのカヴァなどは「瓶内二次発酵」。単純にいうとワインに糖分と酵母を加え、もう一度瓶の中で発酵させる。すると密閉空間の中で炭酸が発生。これが繊細な方向性の泡になる。

リーズナブルなものでよく使われるのは後から炭酸を注入する「シャルマ方式」。これは繊細というより大らかさ。単純だけれど素朴な風味の「瓶内一次発酵」は儚く弾けていくなど、どれが優れているかというよりもそれぞれ持ち味が違うのが面白い。気の置けない友人との家飲みにはちょっと刺激的な強めの泡、夏のビーチにはやわらかいけれどフレッシュな香気の泡……、そんな感じで好きな泡のタイプを感じておくと、仕事帰りのおつかれの乾杯はどれにしよう? なんて、いろいろな場面や気分にあわせて選ぶことができるのだ。

スパークリングワイン、どんなフードと合わせる?

次は、味わいの違いでいこう。法則でいえば「味わい+合わせるフード+場面」。スパークリングワインには、酸のきれいなエレガントタイプ、複雑味と深みのちょっとお高いタイプ、果実味たっぷりのジューシータイプ、切れ味のあるドライタイプ、甘やかなテイストのオフドライやスイートタイプ……と、かなり幅広いバリエーションがある。つまりは、合わせられるフードのバリエーションも幅広いということ。

軽やかなフィンガーフードならドライ、フレンチっぽい前菜なら酸のきれいなエレガントタイプ、メインの肉なら複雑味、デザートならオフドライ。夏は軽め、フレッシュなフードも多いので、スパークリングワインはおおむね合わせやすい。

さらに、エキゾチックでスパイシーなものは意外とスイートタイプがいい。ガーリックシュリンプや青パパイヤのサラダあたりをオープンエアで、そんな場面ならよく冷やしたスイートタイプに氷を入れても面白い。夏の休日、みんながコンビニやデパ地下で買ったものを持ち寄るような飾らないホームパーティなら、むしろ1,000円台ぐらいのドライなタイプがお似合い。高いスパークリングはペアリングの幅が狭くなる傾向があるので、ここは財布的に無理をしたり、見栄を張ったりするよりも、ワインをあまり飲み慣れていない人が飲みやすいなと感じるようなものがかえってうまく手を取り合う。

「国・地域+その国のフードや文化」の法則

最後に3つ目の法則「国・地域+その国のフードや文化」。基本的には国や地域のキャラクターや文化とスパークリングワインのキャラクターは似ている。それぞれの国がお好きならぜひその国のフードや、その国っぽいものの相性はいい。

まずはスペインを例にとろう。この国の代表的なスパークリングワインと言えば「カヴァ」だ。中心地はカタルーニャ州だが、場所ではなく決められた製法による認証のためバレンシア、ナバーラ、ガリシアなど現在は8つの自治州で造られている。製法はシャンパーニュ同様の瓶内二次発酵。豊かな柑橘と果実、飲みごたえのある泡と骨格、親しみやすさとコストパフォーマンスの良さで世界的にも人気だ。

これに合わせるならもちろんスペイン料理やバルメニューということになる。それだけではなく、スペインと言えばサッカーやモータースポーツに自転車とスポーツ大国でもある。カヴァを飲みながら観戦すればかなり盛り上がる。建築、美術もある。カヴァを飲みながら語り合えば舌も滑らかになる。そう、「国・地域+その国のフードや文化」、とても簡単なペアリングなのだ。

フランスはシャンパーニュだけではなく、一般的なスパークリングワインは「ヴァン・ムスー」と呼ばれ、いろいろな地域で造られている。その中で「クレマン」という選ばれた地域で造られたものがある。例えばアルザス地方で造られた良質なものは「クレマン・ド・アルザス」と呼ばれ、他にもボルドーやブルゴーニュなどいくつかの場所があり、高品質な泡として高い評価を受けている。

例えば南仏のヴァン・ムスーなら地中海料理、各地のクレマンなら、その地のチーズとの相性がいい。チーズもワイン同様、フランス国内で生産されるものは地域によって個性がある。このチーズとワインのペアリングはなかなか難しいものなのだが地域であわせてみれば早い。チーズに特化したお店で地域を聞いてそれにスパークリングワインを合わせるだけ。簡単だ。

イタリアはフランスと並んで伝統的に発泡性ワインの文化がある国。一般的なものは「スプマンテ」。これはイタリアの南北関係なく汎用性が高い。パスタやピッツアなどでは、日本ではあまりイタリアの地域性にこだわらずいろいろ食べられる店が多く、またグループではそのいろいろなものを同時にシェアすることもある。そんな時、スプマンテならある程度まかなってくれる。

イタリア料理は郷土料理の集合体と言われ、日本でも各地の専門店が多数あるし、デパ地下でも特化したものを購入できる。であればスパークリングワインもミラノ近郊の上質な「フランチャコルタ」、ヴェネト州の爽やかで気軽な「プロセッコ」、柔らかい甘やかさがあるピエモンテ州の「アスティ・スプマンテ」、エミリア・ロマーニャ州からは珍しい赤泡の代表格「ランブルスコ」などと合わせてみよう。スペイン同様、食だけなく、サッカーや歴史のロマン、そしてフランチャコルタならオペラ鑑賞もいい。

その他の欧州では、世界中の発泡性ワインの1/4近くを生産する泡大国ドイツの「ゼクト」。近年評価を受けているイギリス南部。アメリカでは、カリフォルニア州やニューヨーク州。もうその生産地を聞いただけで合わせるものは頭に浮かぶだろう。音楽、映画、アート、アウトドア、避暑地の風景……、いくらでもペアリングの楽しさは広がる。チリ、アルゼンチンのカジュアルな泡には炭火のステーキ、ゆるっと明るいテイストが特徴のメキシコやブラジルも、夏なら余計に楽しい想像が浮かぶだろう。

日本も忘れてはいけない。炭酸飲料、ビール、サワー、最近はハイボール……。日本ではもともと発泡性の飲料が好まれているからスパークリングワインが生まれるのは必然とも言える。果実が甘やかで度数も低く炭酸の軽やかなもの、イチゴキャンディ感のある可愛らしいもの、鮮烈な酸と和を感じさせるうまみのある自然派など、実に個性豊かだ。ペアリングでは和食というよりも各地の郷土料理や普段の食卓がいい。回転寿司と北海道の泡、いぶりがっこと東北の泡、各地にはトンカツや焼鳥にたこ焼きなんてものまでカバーできるものもあるから、ぜひ、試していただきたい。

スパークリングワインを夏のいろいろな場面に登場させれば、「ちょっと優雅に」、「それでも気軽に」楽しめる。各国の夏の風景、今、自分たちが楽しむ残暑の場面をイメージして選んでみよう。


写真提供元:PIXTA