人気ビストロを手掛ける、原シェフの新たな境地
『ミシュランガイド東京 2014』から6年連続ビブグルマンとして掲載された『Bistro Rojiura(ビストロ ロジウラ)』と、行列が絶えない人気店『PATH(パス)』。
2つの人気ビストロを成功に導いたオーナーシェフの原 太一さんが、ジャンルレスな多国籍料理のレストラン『LIKE(ライク)』を白金台にオープン。
これまでの店とは違う異色の楽しさが詰まっている。
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まず、誕生した空間がとびきりだ。ハイセンスなプラチナ通りでもひと際目立つ、テラスから緑あふれたユニークなビル。1階にファッションやボタニカルなどを扱う複合型ショップ『BIOTOP(ビオトープ)』が入り、その3階に『LIKE』がある。
立地は、都営三田線「白金台」駅から徒歩10分、JR山手線「恵比寿」駅からは13分のところ。決して良いアクセスとは言えないが、それがむしろ”知る人ぞ知る”特別感をつくりあげている。
螺旋階段の先に広がる、緑あふれる”大人の自由空間”
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入口へと続く螺旋階段は、自然光が差し込み、グリーンがそこかしこに飾られている。一段ずつ登って行けば、非日常的な雰囲気にワクワクしてくるはず。
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奥へと広がる店内は、木目を基調とし、天井まで届く大きなガラス窓越しにテラスの豊かな木々が見え、開放感に満ち溢れている。都会のど真ん中とは思えない、まるで避暑地にあるレストランのようだ。
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一目見て、この空間が気に入ったという原シェフ。これまでの店では実現できなかった長年の夢を次々と盛り込んでいる。
「時間を問わずカクテルを飲みながら、音楽を聴いて自由に過ごす。そんな風景にずっと憧れていました」(原シェフ)
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ライブハウス顔負けの機材をセッテイングした店内ステージ、世界各地の洋酒が並んだバーカウンター。できあがったのは、遊び心いっぱいの大人の自由空間だ。
フレンチ料理人が自在に作る、ジャンルレスな多国籍料理
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カフェカルチャーに惹かれて、飲食の道に進もうと決めた原シェフ。やるからにはきちんとした料理を出したいと思い、フレンチの修業をスタート。地道に腕を磨き、世界的に有名なレストラン『キュイジーヌ[s] ミッシェル・トロワグロ』で活躍するまでとなる。
その後独立して、渋谷に『ビストロロジウラ』、代々木八幡に『パス』と、東京でも指折りの人気ビストロを手掛けてきた。そして自身3店舗目として『LIKE』をオープン。これまでフレンチをメインにしてきたが、同店で披露するのは、ジャンルを超えた多国籍料理だ。
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「もともと中華料理やエスニック料理が好きだったんです。そういった料理を本格的に学んだことはないのですが、フレンチ料理人という自分のフィルターを通して料理を作ってみれば面白いんじゃないかと考えました」と原シェフは語る。
店名の『LIKE』は“何々のような”という英語に由来。“中華のような”、あるいは“エスニックのような”料理にフレンチのエッセンスを盛り込み、シェフの感性を生かして自在に作り上げる。つまり、どこにもないユニークな一皿に出逢えるのだ。
中華のおいしさをプラスし、フレンチ定番メニューも変身
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さっそく料理を紹介していこう。
こちらはフランスのビストロ定番料理「馬肉のタルタル」。九州産の赤身の馬モモ肉を粗くたたき、豆板醤や甜麺(テンメン)醤などで味付け。卵黄の他に、レフォール(西洋ワサビ)を使ったドレッシングであえたプルピエという葉野菜をトッピングしている。
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赤身の馬肉は、臭みや脂っぽさがなくさっぱりした食べ心地。豆板醤は、辛味だけでなく豊かな風味とコクがあり、フレンチのメニューを一瞬にして中華の様相に変えてしまう。
西洋ワサビがピリリと利いたプルピエは、シャキシャキした食感で、しっとりしたタルタルの良いアクセントになっている。
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「毛ガニの茶碗蒸し」(写真上)は、ふんわりと優しい一品。フレンチでも使うチキンスープと卵で作ったシンプルな茶碗蒸しに、鶏ガラと金華ハム、漢方食材から取ったうまみの詰まったスープを注いでいる。
コクがありつつ淡い味わいのスープが、トウモロコシと毛ガニの甘みを引き立てている。トッピングのくるんと愛らしい形の野菜は、ピーテンドリルというスナップエンドウの芽。ほんのり甘い青々しい味わいが優しいスープとぴったり合う。
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こちらの発想元は、フレンチのメニューであるフラン(卵やクリームで作った液体を蒸して固めたもの)。原シェフが修業時代に出逢った、スープの中にフランを入れた料理を中華風にアレンジしている。
フレンチの技術に、醤油や味噌、漢方食材といった異色の素材を巧みに合わせている。
「漢方食材は初めて扱うので、香りや味をいろいろと試しています。フレンチベースで考えているので、もしかしたら、中華ではしないような使い方をしているかもしれませんね。難しいけど、面白いです」(原シェフ)
誰が食べてもおいしいと思う料理を『LIKE』流にアレンジ
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「屋台料理などで、ひとくち食べて、あ、おいしい!と思う料理があるじゃないですか。そのようなシンプルでストレートなおいしさって何だろうって考えていくうちに、餃子のような誰もが好きなメニューを自分なりに作ってみようと思ったんです」(原シェフ)
そして、生まれたのが「氷見(ひみ)放牧豚の水餃子 ネギソース」(写真上)。氷見放牧豚は、その名の通り放牧で育てられており、肉質は硬めだが濃い味わいを持つのが特徴。これに合わせるのは、塩漬けしたキャベツ。シャキシャキした食感を失わないよう、皮に包む直前にキャベツを入れている。
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皮にも注目いただきたい。
皮の専門店からいくつものサンプルを取り寄せ、試作を重ねたという。そして選んだのは、薄さとモチモチ感を併せ持つもの。通常の水餃子の皮は厚めで存在感が強いが、ツルンと薄い皮にすることで、中に詰まった餡のおいしさを際立たせている。
ネギをたっぷり合わせた醤油ベースのソースも、まろやかで甘みのある赤酢が利いた奥深い味わい。ワインにも合う餃子になっている。
フレンチの技を発揮!絶妙な火入れの仔羊炭火焼き
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メニューの中には、「仔羊の炭火焼とフムス」(写真上)のような、まさにフレンチという料理もある。
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ニュージーランドやオーストラリアから仕入れた仔羊を、塩コショウのみのシンプルな味付けで、炭火でこんがり焼いている。
付け合わせのフムスは、クミンなどのスパイスをしっかり利かせたスパイシーな味わい。隠し味にヨーグルトを使っているため、ほのかな酸味があり、ソース代わりにたっぷりと肉にのせて食べれば、さっぱりと味わえる。
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仔羊は、肉が硬くならないように20分焼き、いったん休ませてから、皮目をもう一度直火で焼いている。これにより、ナイフがスッと入るほど肉がやわらかく仕上がり、またしっかり焼き切った脂身には、しつこさが全くない。この絶妙な火入れは、フレンチのシェフならではの技だ。
必ず食べたい! 一番人気の「担々麺」
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ランチとディナーどちらでも提供している「担々麺」(写真上)は、同店人気メニューのひとつ。リュウガンやクコの実、ナツメといった漢方食材由来の豊かな香りが漂い、まるで台湾の屋台にいるかのような気分になる。
スープを一口すすれば、辛みと共に広がる濃厚なうまみに驚く。その秘密は、京都の『七谷(ななたに)地鶏』という地鶏を肉が付いたまま大量に使い、6~7時間掛けてだしを取った贅沢なスープだ。
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トッピングの肉は合い挽きを使い、濃い甘辛に味付け。ゴマペーストは、タヒニ(生ゴマのペースト)をブレンドすることで、ゴマのコクに更なる深みを与えている。隠し味として使っているのは、ヤーツァイと呼ばれる青菜の漬物。コリコリとした歯応えが楽しい。
麺は、〆で食べることをイメージして重くならないよう細麺をチョイス。ツルっとのど越しが良く、シコシコとした歯ごたえもある麺に、マイルドな辛さで、コクと香りが豊かなスープを絡めて食べれば、一瞬で魅了されることだろう。
自然派ワインとオリジナルカクテルで、さらに楽しい時間を
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ワインは、『ビストロロジウラ』や『パス』と同じく自然派ワイン100%でラインナップ。自然派ワインには個性的な味わいのものもあるが、同店ではピュアで飲みやすいものを中心に揃えている。
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多国籍料理に合うだろうと、同店はカクテルも充実。原シェフもファンだという恵比寿の『バー トレンチ』に監修してもらい、オリジナルカクテルも6種類ほど揃えている。
ワインだけじゃなく、カクテルも料理に合わせて選べるのも、“大人の自由空間”である『LIKE』ならではの楽しみだろう。
日々、試行錯誤。原シェフの挑戦は続く
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遊び心を大事にいろいろなアイデアを出しつつ、全国各地から取り寄せた味噌や醤油、豆腐など、これまで使ってこなかった食材にもチャレンジ。日々、試行錯誤しながら、料理を作り上げている。
「ちょっと漢方を使うだけで、こんなに料理の幅が広がるんだと思いました。楽しみが増えた感じでしょうか」(原シェフ)
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『LIKE』から溢れるワクワクした楽しさが、白金台に住んでいる人たちだけでなく、若い世代の人々も多く惹きつけている。この楽しさをぜひ味わってほしい。
【メニュー】
馬肉のタルタル 1,800円
毛ガニの茶碗蒸し 1,900円
氷見放牧豚の水餃子 ネギソース 980円
仔羊の炭火焼とフムス 2,800円
担々麺 1,100円
ワイン 950円~(グラス)
オリジナルカクテル 1,100円~
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LIKE
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