あの人気蕎麦屋『浅草じゅうろく』で鮨が食べられる!
東京の下町、浅草駅から少し歩くと、雷門付近の観光エリアらしい表情が消え、静かな住宅街に差し掛かる。その一角、2015年のオープン以来、都内でも指折りの人気を集める蕎麦店『浅草じゅうろく』がある。
この『浅草じゅうろく』に2019年夏、ちょっとした変化が起きたと、食通の間であっという間に噂が広がった。なんでも、「鮨が食べられる」というのだ。
その内容を確かめようと取材を申し出ると、なんと曜日を指定された。土曜日と日曜日のランチタイムのみ、『舎利処じゅうしち』という屋号で鮨屋として営業していると教えてもらった。
蕎麦と鮨、その組み合わせの影響を探る
『舎利処じゅうしち』で握るのは、普段は『浅草じゅうろく』のスタッフとして働く角藤文俊さん(写真下)。
実は角藤さん、鮨屋で修業していた経歴を持つ。
その腕を生かし、『浅草じゅうろく』では大将が目利きした極上の刺身、穴子などを調理していたが、ちょうどカウンター割烹風を目指し店内のリニューアルをしたところ、鮨を出すのに適した造りとなり、蕎麦屋と鮨屋の2つの顔を持つスタイルをスタートさせた。
蕎麦店と同じ店舗で、特定日だけ開く、カウンターに石臼のある鮨屋! 隠れ家感というか、知る人ぞ知る感満載の話題の鮨屋、その内容を見せてもらおう!
ネタは豊洲で数時間かけて選んだ逸品ぞろい
まずは「大トロ」(写真下)。
産地は大間という、名前を聞いただけで期待値が上がる贅沢な一品。大将と豊洲で3、4時間かけ選び抜き仕入れた、自信のマグロだそうだ。
素晴らしいツヤとしもふりの具合! そして細かく入った包丁目の効果でシャリとの一体感もいい。
次いで、浅草という地が似合う、江戸前の古典ネタである「小肌」(写真上)は熊本県産のものを使い、寝かせて3日経ったもの。酢の回りと熟れ具合がちょうどよく、身のほのかな甘みも感じる。
スッと横に一本、包丁の入り方が美しい「春子鯛」(写真上)は酢で洗った後、昆布に包み2日間寝かせたもの。魚体が小さく処理が大変という春子鯛は鮨ツウが好むネタと言われるが、ほわっとした歯ごたえと昆布のうまみにシャリのキレ、とてもいい組み合わせだ。
煮切りや漬け地にある秘密が!
そして江戸前で取れたという「穴子」(写真下)。
大ぶりなサイズに驚くが、食べると他の魚とは違う穴子独特な身のほぐれ方と甘さ、それを引き締めるシャリがまたおいしい。
ところで、ここまで食べて、握りから鰹のような風味を感じることに気が付く。
角藤さんにうかがうと、「その穴子は鰹だしで煮ています。また煮切りやツメ、ヅケにする漬け地は蕎麦のかえしやだしを使っています。“だし香る穴子”なんて、蕎麦屋っぽさが見え隠れしていいでしょう?」と、その秘密を教えてくれた。
それを聞いてから頂いた、「鮪 赤身のヅケ」(写真上)。まるでWスープの効果のようとでもいうか、噛むごとにだしが香り、うまみが倍増している。
知床産の「生いくら」(写真上)も蕎麦だしを使って漬けており、味も丸く、まろやかで絶品!
そしてこの蕎麦屋のエッセンスが効いたネタに、エッジの効いたシャープなシャリが合う。宮城県産のササニシキを固めに炊き、酢と塩だけを使って仕上げているのだとか。
単なる二毛作ではない! 蕎麦屋のこだわりと鮨屋のこだわりのマリアージュ
他に、蕎麦前らしいだし巻き卵や蕎麦屋の八寸に使っているいぶりがっこのトロタクなどのつまみも楽しめるそう。
そして、これだけいい素材でこだわって作る鮨だが、値段は7,500円からという。「旬の味を求めて、仕入れ値のほうが高いこともあるような、ないような…」と苦笑する角藤さん。
週に2回、土曜日と日曜日の昼間だけ出逢えるこの『舎利処じゅうしち』の鮨。浅草らしいフレンドリーな接客とここだけの味は、きっと心に残るものとなるだろう。
【メニュー】
つまみ数点と握りのみ 10貫 7,500円
いろいろなつまみと握り 12貫 12,000円
日本酒 700円~、 ビール 680円~、他ワインやソフトドリンクなど
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
撮影:岡崎慶嗣
舎利処じゅうしち
- 電話番号
- 03-6240-6328
- 営業時間
- 12:00~14:00 ※土曜・日曜のランチタイムのみ
- 定休日
- 月~金
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。