フランス料理は豪華なコースにあらず! 地方で食べられている郷土料理とは?
2010年、「フレンチガストロノミー(フランス美食学)」がユネスコ無形文化遺産に登録され、“フランス料理”は現代の「世界三大料理」のひとつにも挙げられている料理だ。
そんなフランス料理だが、17世紀前半頃はイタリア料理の影響を受けたレシピから脱却すべく、フランス本来の料理様式を守ろうという運動が活発になり、以降、宮廷料理をベースとした「オートキュイジーヌ」の誕生などを経て、現代のフランス料理文化の礎が作られた。
しかし、フランス本土ではそのような高級一辺倒な料理と共に各地方の食文化も大事にしようと、20世紀半ばからはいわゆる「カントリー・サイド」の料理も守るという機運が高まった。そのカントリー・サイドの料理、いわゆるフランス郷土料理は東西南北・海側山側の16地方ほどから成り、その土地の恵みを生かした個性的な顔が揃う。
そんなフランス郷土料理の中でも、日本の田舎料理を思わせるような素朴さを持つ「アルザス地方の郷土料理」が堪能できるお店が東京・浅草橋にあるという。
それが『ジョンティ』だ。
目印は黄色とブルーのカラーリング! まるでフランスの片田舎のような洒落た外観
浅草橋駅から5分ほど歩いた福井町通りに出ると、黄色いテントと青い外壁が目立つ一軒家が見える。
下町エリアの浅草橋というロケーションからはちょっと意外性のある、まるでフランスの片田舎のビストロのような外観。この地で創業し、2019年で10周年を迎えるアルザス地方料理を名物とする人気店『ジョンティ』だ。
アルザス現地を思わせる、素朴で温かな店内
中に入るとギンガムチェックのクロスがかけられたテーブルが並び、初めてでも思わず寛いでしまうような温かみのある空間が広がる。
「現地出身の方も“まるで地元アルザスにいる気分”と言われます」と店主の富田裕之さん。今回はここでしか味わえない本格的なアルザス地方の郷土料理を求め、遠方からもフランスの田舎料理好きが集まるという『ジョンティ』おすすめのアルザス地方の郷土料理を紹介してもらった。
アルザス地方料理の特徴は?
アルザス地方は、パリから東に約500km、ドイツとの国境近くに位置し、料理はドイツと東ヨーロッパの影響を受けている。また、立地が山側のため、塩蔵した肉やジビエ、ソーセージやベーコン、ハムといった加工肉、川魚、チーズを使ったレシピが多い。
食材は保存性を高めるため、塩分やスパイスを多用し、それらを使った料理も多く、昔から家庭の保存食として常備されていた発酵キャベツやスパイスを使った煮込み料理など、素朴な味わいが特徴。
また、アルザスはワインの産地としても有名で、中でも生産量のうちの9割を占める白ワインを求め、世界各地からワイナリーに人が訪れるほど。170 km に渡って続くアルザス・ワイン街道と呼ばれる通りも。
【主な郷土料理】
シュークルート、タルトフランベ、フォアグラのパテ、ハムなどのシャルキュトリー、ウオッシュタイプのマンステール(チーズ)、クグロフ(クグロフ型で焼いた伝統的な焼き菓子)など
『ジョンティ』で作られているアルザス郷土料理は富田さんが現地のワイナリーなどでレシピを学び、独学で味を探求したという現地発の本格的な味わい。それらのレシピを元に、シェフの齋藤光さんたちと毎日、なんと40種類ほどのアルザス地方料理を提供しているそうだ。
『ジョンティ』で食べられるアルザス地方料理とは?
ベーシックなグラタンや牛肉のワイン煮込みなど、アルザスの郷土料理に寄せないメニューもいくつかあるが、黒板に書かれた“本日のアルザス郷土料理メニュー”だけでも、最近日本でも人気の高まっているタルトフランベ(薄い生地にチーズなどの具材をのせてパリッと焼いたピザのような料理)は5種類、アルザス風エスカルゴ、アルザス風パスタのスペッツェル、白ワインで羊肉と鶏肉とじゃが芋をマリネしたシンプルな蒸し料理のベッコフ、牛ハツのスライスをのせた現地風のサラダ、鰻のクリーム煮込みのマトロット、デザートもクグロフからパンデビス(数種のスパイスを効かせたパンのような焼き菓子)など、こちらでは書ききれないほどの料理を提供している。
では、バリエーション豊かな『ジョンティ』のアルザス郷土料理から、今回は代表的な料理を紹介しよう。
▲ビブレスカス
じゃがいもをディップでいただく、サラダ感覚で頂ける素材を生かした前菜。このディップは「農夫のチーズ」と言われ、フレッシュクリームチーズをベースに生クリーム、香味野菜を混ぜ合わせたもの。
ふかしてスライスしたじゃがいもにディップを添えて食べるのだが、チーズがフレッシュタイプのせいか、とても口当たりが軽く、香味野菜の効果もあり、ひと口食べると食欲が増す! スターターにぴったりの一品だ。
▲タルトフランベ
「トラディショナル」とよばれる、現地でも王道の素材をのせたタルトフランベがこちら。ピザと似ている料理だが、タルトフランベはよりシンプルで形も四角形のものがベーシックだそう。チーズはのびないフレッシュチーズを使い、口当たりはとてもあっさりしている。
生地は小麦粉とバター、塩、砂糖をベースにしたものを3回ほど発酵させ、先に生地を空焼きする。そこにフレッシュチーズ、生クリーム、ナツメグなどのスパイス、玉ネギと自家製ベーコンをのせて焼き上げる。
「元々は家庭の余り物を使った料理。煮込み料理などと合わせて食べてもおいしい、シンプルな味が特徴」(富田さん)。前菜としてワインと頂くメニューだそうだ。ちなみに食パン4枚分くらいと大きなサイズだが、『ジョンティ』ではこの現地サイズ原寸大で提供している。
▲シュークルート(肉)
『ジョンティ』のシュークルートはメイン食材を肉か魚かを選べる。日本では肉が主流だが、現地では魚を使ったものもよく食べられるそう。ボリューミーなソーセージとベーコンは自家製。肉は豚すね肉を塩漬けにしたもので、自家製の発酵キャベツとじゃがいもでじっくりと煮込み、好みで自家製マスタードを添えていただく。
塩で発酵させた自家製のキャベツはアルザス地方でも各家庭で作っているメジャーな食材だそうで、日本の田舎料理にある、漬物を使ったレシピを思い出させる。
煮込みのベースは豚のだしで。「アルザスではワインも入れて煮込みますが、うちではあえて加えません。両方試しましたが、ワインがないほうが素材のうまみがダイレクトに出ると思います」(富田さん)。
ボリューム満点の料理だが、ほのかに香るスパイスが爽やかで、ひと口食べるとほっこり温かな味わいがこれからの季節にぴったり。また、アルザス現地ではみんなで取り分けて食事を楽しむ大皿料理が多く、『ジョンティ』の一皿のボリューム感もなかなか! 他のメニューも楽しみたいという方用にハーフサイズも提供している。
フランス現地の人も納得の味とボリュームを目指して
さて、『ジョンティ』が目指すフランスの郷土料理とは“現地らしさ”だという。「前菜とメインの1人2皿で満足できるようなサイズ感で提供しています。でも実はアルザスのビストロではこの3倍くらいの量ですけどね」と富田さん。
そして料理と一緒に注目したいのがバリエーション豊かに揃うアルザスワイン。「アルザスワインは生産量のうち9割が白ワインで現地の人が飲むのもほとんどが白ワインです。キリッと飲みやすい口当たりのものが多く、料理にも合わせやすいので世界各地にファンが多い。こちらでは料理にマッチするワインも提案できるので、ぜひ一緒に楽しんでほしいですね」(富田さん)。
実は『ジョンティ』のランチョンマットはフランスの地図とワインの解説入り。ランチョンマットを読みながら、興味の持ったワインについて質問するのもいいだろう。
10年もこの地で愛される、ツウ好みの本格派アルザスビストロ
「最初はアルザス料理ってなに? フランス料理じゃないの? というお客さまも多かったですが、今では遠方からもフランス郷土料理に興味のある方が来てくれます。この、現地っぽい気さくな雰囲気は初めての方も馴染みやすいと思います。そもそも、アルザス料理は日本の田舎料理と共通する要素も多く、初めてでも食べやすい料理が多いですからね」(富田さん)。
ランチでもタルトフランベなどのアルザス料理が楽しめる『ジョンティ』。ワインの飲み比べをしながらでき立ての「アルザス郷土料理」を楽しむのはいかがだろうか?
【メニュー】
おまかせコース 3,500円~
シュークルート 2,000円(ハーフサイズもあり)
タルトフランベ 1,200円~
マンステールチーズ 1,000円
アルザス風サラダ 900円
クグロフ 600円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
ジョンティ
- 電話番号
- 050-5488-0778
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 月・火・木・金
ランチ 11:30~14:00
ディナー 18:00~22:30
(L.O.21:30)
土・日・祝前日
ディナー 18:00~21:00
(L.O.21:00)
ランチ 12:00~14:30
(L.O.14:30)
- 定休日
- 水曜日
第3火曜日
年末年始(2019年12月31日~2020年1月5日)
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。