日本一インド人の多い街・西葛西に誕生した、インドの生菓子専門店
大阪発祥のスパイスカレーの人気店が次々に東京に進出したり、スタイリッシュなニューウェイブ・インド料理店がオープンしたりと、今、日本で新たな進化をとげているインド料理。だがインド料理のジャンルの中で、ほとんどの日本人になじみがなかったのが“インドスイーツ”だ。
2019年8月、“日本一インド人が多い街”といわれる東京・西葛西にオープンした『トウキョウ ミタイワラ』は、珍しいインドの生菓子や、インドで大人気の屋台フードが食べられる店。「こんなお店を待っていた!」と、オープン当初から近隣のインド人たちが詰めかけ、連日大盛況なのだ。
▲「ミタイワラ」はヒンドゥー語で「お菓子屋さん」の意味
東京メトロ東西線・西葛西駅から徒歩5分。居酒屋など庶民的な店が多いエリアにあって、おしゃれなカフェ風の外観(写真上)が目をひく。
店に入ると目に飛び込んでくるのは、カラフルなインド菓子がずらりと並んだショーケース(写真上)。店内の厨房で作ったインド菓子が常時15~20種類ほど並んでいて、イートインのほか、250g(5~6個)からの量り売りでテイクアウトできる。
▲店内にイートインスペースもあり、できたてのインド菓子やスナックも食べられる
日本人向けに甘さをセーブし、食べやすくアレンジ
数多いインドのお菓子の中でも、日常的にもっともよく食べられているのが「ラドゥー」という、球形の揚げ菓子。穀物の粉を練って、たっぷりのギー(バターを溶かして濾過したもの)で揚げてからシロップに漬けたお菓子で、さまざまな種類がある。
▲ひよこ豆の粉で生地を作った「モティチョール ラドゥー」。黄色い色は、ひよこ豆の色
表面は固いが、手で割るとほろりとくずれ、中はしっとり。ドーナッツよりもしっかりと密度のある食感だ。豆を使っているせいか、どこか和菓子の白餡と似た味わいもあるが、ギーで揚げているのでコクもある。
インドのお菓子といえば“世界一甘い”とも言われるが、意外にも甘さは控えめで、シロップの甘みの奥に、ひよこ豆の素朴な甘みが感じられる。同店では日本人にも親しんでもらうため、本場よりもかなり控えめな甘さに調整しているとのこと。
インド菓子の特徴は、“ミルク”をメインに使うこと
ラドゥー以外のほとんどの菓子に乳製品が使われていることも、インド菓子の特徴だ。
「パルフィ」(写真下)はその代表で、ミルクをゆっくり煮詰めて濃縮し、ひよこ豆の粉や砂糖、ナッツ、スパイスなどを入れて冷やし固めたもの。ラドゥーと同じようにさまざまな種類が並んでいる。
▲代表的なインド菓子「バルフィ」のピスタチオ風味「ビスタ バルフィ」
ホロホロとくずれるような、繊細な食感。甘さもほどほどで、ナッツや穀物の素朴な甘みが広がる。油脂を使わず植物性の食材のみで作られているためか、ラドゥーよりもさらに和菓子に近い感覚。らくがんとも似ているような…。
▲茹でたカッテージチーズを濃縮ミルクに浮かべた「ラスマライ」
ミルク好きにぜひ試して欲しいのが「ラスマライ」(写真上)。自家製カッテージチーズを丸めて、レモンの皮などを入れたシロップで約20分茹でる。十分に煮えたら甘みをつけた濃縮ミルクに浮かせ、サフランとスライスアーモンドをトッピングしたインドスイーツだ。
じっくり茹でたカッテージチーズの中心はスポンジ状に変化。そこに甘い濃縮ミルクがたっぷり染みこんでいる。しっとりしているのにホロホロほどけるような不思議な食感だが、ミルクのおいしさが存分に味わえる。
イートインならではの“作りたて”が食べられるメニューも!
ショーケース内のラドゥーやパルフェは持ち帰りのみの商品だが、イートインスペースを利用するならぜひ注文して欲しいのが「ジャレビ」というお菓子。
▲店内で揚げたてが食べられる「ジャレビ」。目が覚めるようなオレンジ色が特徴
「ジャレビ」は、小麦粉と水から作ったゆるい生地を、熱したギーの中に渦巻き状に落として揚げ、すぐにサフランを入れたシロップに漬けて固めた菓子。鮮やかなオレンジ色が目を引くが、これはシロップに入ったサフランによる自然な発色だ。
ひと口食べて連想したのは、日本でもお馴染みの「かりんとう」。外側はカリッとした軽い食感で、甘さだけでなく香ばしさも感じられる。中心にいくにしたがってシロップの浸透量が多くなり、カリッじゅわ~な食感が新鮮だ。インドでは冷めたものも食べられるが、イートインができる『ミタイワラ』に来たら、ぜひ揚げたてを食べてみてほしい。
親切なスタッフがアドバイスしてくれるので、インド菓子初心者でも安心!
スタッフはすべてインド人だが、日本語が堪能なのでご安心を。わからないことがあれば親切に説明してくれるうえ、ショーケースの値札にも説明書き(写真上)があるので、インド菓子初体験の人でも味のイメージは掴みやすい。
甘くないスナックも大人気! なかでもオススメは“インド風タコ焼き”⁉
イートインスペースでは、インドで人気の屋台フードも提供している。ぜひ味わって欲しいのが、「ダヒ プリ」という、球形の皮の中にさまざまな具材やソースを入れた、タコ焼きのようなスナック。
▲インドを代表する屋台フード「ダヒ プリ」
薄い球形の皮の中には、豆、ジャガイモ、甘いヨーグルト、タマリンド(東南アジア原産の果物)の甘いソース、クミンの辛いソースなどが入っている。仕上げにフライパンで炒めたクミン、マジックマサラ、パクチーなどで香りをプラスして仕上げる。
▲高温で揚げた生地の上部に穴を開け、順に具材を詰めていく
パリパリと軽い皮とともにかじると、まず感じるのはヨーグルトの爽やかな甘み。続いてタマリンドソースの甘み、クミンソースのピリリとした刺激、そしてハーブやスパイスの複雑な香り…。次から次へとさまざまな味わいが押し寄せ、ひとつ食べるともうひとつ食べたくなってしまう。
「本場インドで食べるよりおいしい!」と評判の“ご当地カレー”もおすすめ
カレーといえばナンを連想するが、インド・ムンバイでは、パンといっしょに食べる「パオ バジ」が人気とのこと。パオは「パン」、バジは「野菜料理」という意味で、添えられているのは野菜たっぷりのカレー。
▲ランチや軽食にもおすすめの「パオ バジ」
単なる野菜カレーと侮るなかれ。使っている食材を訊くと、ニンジン、インゲン、カリフラワー、キャベツ、ピーマン、タマネギetc…など、数えきれないほどの野菜とスパイスをミックスしているそうで、ピリリと刺激的ながら、コク深いうまみがたまらない。
横に添えられた紫タマネギのサラダのフレッシュな辛みも良いアクセントで、パンと合わせて食べると絶妙なバランス。「インドで食べるよりおいしい!」と近隣のインド人たちにも大人気なのも納得だ。
ドリンクにもこだわり! 自家製ならではの香り高い味わい
店内で手作りしているドリンクもおすすめ。特に日本でもお馴染みのチャイ(写真・左)は、本場インドでは、午後4時~6時を“チャイの時間”として楽しむ習慣があるくらい、日常に欠かせないドリンクなのだそう。同店では、素焼きのチャイカップに入れて提供される。
アーモンドの粉末とミルク、スパイスを煮込んで作る「バダムミルク(アーモンドミルク)」(写真上・右)は、インドの屋台でも大人気のドリンク。最近流行りのアーモンドミルクのような味を想像していたが、はるかに濃厚で複雑な味わいがある。
老舗インド料理店『MOTI』運営会社の社長がオープン! 社長は大のスイーツ好き
同店をオープンしたのは、『MOTI』などの人気インド料理店を経営しているSJB シング・サンダールさん(写真上)。自身も大の甘いもの好きで、『ミタイワラ』をオープンする以前も、経営するインド料理店で作ったスイーツを希望者にのみ販売し、喜ばれていたそうだ。
「インドでは毎日の生活の中で、お菓子がとても大事な要素を占めています。車を買ったり、昇進したりとちょっといいことがあると必ずお菓子でお祝いしますし、お祝い事やお祭りには、必ずお菓子を持って親族や友人宅を訪れます。日本ではお彼岸にしか食べないおはぎを、一年中食べている感覚なのです。インド人に熱烈に愛されているインド菓子のおいしさを、ぜひ日本人にも知ってもらいたいと思って、この店を作りました」(サンダールさん)。
サンダールさんがオススメする、インド菓子とドリンクの組み合わせは?
サンダールさんのおすすめは、「ダヒ プリ」と「ジャレビ」を食べた後、「チャイ」を味わう食べ方(写真上)だ。しょっぱいもの、甘いものと順に食べてから温かい飲み物で締める…と、コースのように流れを楽しむのが本場インド流なのだそう。同店を訪れたら、ぜひ試して欲しい。
「夢は、日本の百貨店にインド菓子店を出店すること」
インド菓子といえば、屋台での食べ歩きや、飾り気のない素朴なパッケージで販売されることが多い。だが『トウキョウ ミタイワラ』では、日本人が手土産としても活用できるよう、洗練されたショーケースやギフト用パッケージでも販売している。
▲ギフト用の詰め合わせ「ミックスミタイ(小)」
「私が日本に来た33年前は、本格的なインドカレーの店は都内にも数えるほどしかありませんでした。でも今はいたるところにあります。もちろん時間はかかると思いますが、本場のインドカレーが日本にしっかり根付いたように、インドのお菓子も日本人にとって親しまれる存在にしたいのです」(サンダールさん)。
サンダールさんの夢は、日本の百貨店にインド菓子の店を出店すること。この繊細で奥深い甘さを知る人が増えれば、それは遠い夢ではないだろう。
【メニュー】
<スイーツ系>
・モティチョール ラドゥー(250g)450円 ※250gは6~7個
・ビスタ バルフィ (250g)800円 ※250gは6~7個
・ラスマライ 280円
・ジャレビ(2個) 300円
<フード系>
・ダヒ プリ 700円
・パオ バジ 600円
<ドリンク>
・バダムミルク 490円
・チャイ 390円
<ギフトボックス>
・ミックスミタイ(小)1,200円/(大)2,800円※大のみ要予約
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
トウキョウ ミタイワラ
- 電話番号
- 090-9961-5154
- 営業時間
- 12:00~21:30
- 定休日
- 月曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。