利き酒師・あおい有紀アナお忍びの店!「日本料理と日本酒」の新たな世界、南青山『てのしま』

# 日本料理×日本酒 てのしま

2019年11月30日
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利き酒師・あおい有紀アナお忍びの店!「日本料理と日本酒」の新たな世界、南青山『てのしま』
Summary
1.南青山に佇む割烹で、確かな日本料理と通好みの日本酒を堪能
2.店主は京料理の名店『菊乃井』出身。丁寧な一皿と日本酒のペアリングに感動
3.ご夫婦がつくり出す、魅力に溢れた食空間で、至福のひとときを

自他共に認める日本酒好きのフリーアナウンサー「あおい有紀」が“和酒”の魅力を発信!

いまや空前の和酒ブーム! 日本酒や焼酎、日本ワインなどの“和酒”が楽しめるお店が急増している。けれども本当においしい魅力的なお店は? そのお店のお酒や料理はどう楽しめばいいの?

利き酒師、焼酎利き酒師、一級フードアナリストなどの資格をもち、大のお酒好きとして各メディアで活躍中のフリーアナウンサー、あおい有紀さんが自分の足で探し歩いた「とっておきのお店」を訪れ、選りすぐりのお酒と料理を実際に味わいながらじっくりとその魅力に迫ります。

京料理の名店『菊乃井』出身の店主が独立。うまみたっぷりの日本酒とのペアリングが魅力の割烹

こんにちは。あおい有紀です。
今回ご紹介するお店は、2018年3月にオープンした日本料理店『てのしま』です。
東京メトロ青山一丁目駅から徒歩5分ほど。大通りから入った静かな一角にあるビル2階に位置します。知る人ぞ知る隠れ家感が素敵ですね。

さあ、さっそく中にご案内しましょう。

客席は18席、ゆったりとしたカウンター席が中心です。お食事をいただきながら、ご主人ともお話できる絶妙な距離感がいいなと感じました。

モダンでいて、どこか温もりのある雰囲気の内装は、「土間のある台所」をテーマに「SUPPOSE DESIGN OFFICE」が手がけられたそうです。カウンターや壁、床には、香川県の手島から運んだ土が塗り込まれています。

奥の壁に掲げられた「心」の揮毫(きごう)は、店主・林亮平さんの師匠である、京料理の名手『菊乃井』店主・村田吉弘氏にいただいた北大路魯山人によるものです。

『てのしま』店主の林亮平さんは、大学卒業後、京都の名料亭『菊乃井』で18年間修業を積まれました。2011年には、本店の副料理長に就任。シンガポールエアライン機内食の開発や、首相官邸での晩餐会の料理なども担当されました。

そして2018年に独立し、ご実家の本家のある、香川県に浮かぶ小さな島「手島」にちなんで『てのしま』をご夫婦でオープンしました。

お酒のセレクトは女将である奥様の紗里さん。グラフィックデザイナーの仕事を経て、フィンランドに8年在住され、現地で調理師学校に通って料理の道に。日本食レストランを経営する中で日本酒に興味を持ち、勉強されたのだそう。

現在は子育てをしながらお店にも立たれています。職人としてのご主人の料理と、紗里さんの食べ手としての感覚が絶妙に噛み合い、お二人ならではの魅力的な食空間を紡ぎ出しています。

「うまみ×フレッシュ感」が見事に共存! 職人技の冴えるひと品にぴたりと合う、選りすぐりの日本酒

では、早速お料理とお酒をいただきましょう。

一品目は「牡蠣の白酢和え」(写真上)。絶妙のレア加減に火入れしたあと、さっと焼いた広島産の牡蠣に、豆腐の裏ごしで作ったなめらかな白酢をとろりとかけてあります。天にあしらった広島産レモンと、春菊のお浸しが香りと彩りを添えて、目にも鮮やか。

合わせたお酒は、山口『八百新(やおしん)酒造』の「雁木 純米吟醸 無濾過生原酒 ノ壱」。冷やで出していただきました。

まずはお酒から味わってみましょう。
うん、とても口あたりが柔らかくなめらかで、無濾過らしい芳醇なうまみを感じますね。生酒なので、フレッシュ感もあり、爽やかです。

そして牡蠣をひと口。わあ、牡蠣が柔らかい! うまみがぎゅっと凝縮して……おいしいです! 
この牡蠣、じつは柚子の皮で香りづけしたオイルに入れ、低温で火入れしてあるそう。オイルの中で火を入れることで、牡蠣が柔らかくなるのだとか。牡蠣のうまみに、なめらかな白酢のやさしいとろみがからみ、さらに柑橘の香りがふわっと漂います。

では、お料理とお酒を一緒に。
うん、合いますね~。牡蠣がまとった柑橘の香りに、雁木の生酒ならではのフレッシュ感が合いますし、牡蠣のうまみとお酒のうまみの相乗効果も楽しめる。口の中に、うまみの広がりと爽やかさが同時に来るのは、日本酒ならではの魅力かもしれません。

京都の冬の風物詩、上品な「蕪蒸し」に合わせるのは、パンチのきいた熟成古酒の燗酒?

二品目は「はたの蕪(かぶら)蒸し」(写真上)です。京都の冬の風物詩ですね。林さんが日本料理の世界に入って感動した料理の一つとのこと。

初めて教わったのですが、蕪蒸しは本来、汁物なので、全体を崩して軽く混ぜ、おじやのようにして食べるとおいしいのだとか。混ぜて味わうことで、魚のほこほこした食感や銀杏のむっちりした食感が一度に楽しめ、それを山葵がきりっと引き締めてくれます。14kgのハタを使い、だしもハタを使って仕立てられ、うまみをしっかり引き出した一品です。

合わせるお酒は鳥取『太田酒造場』の「5年熟成 辨天娘 純米吟醸熟成古酒」をお燗で。60度と、かなり温度の高いお燗ですね。酒米は玉栄です。

早速飲んでみましょう。うん、お酒自体の香りは控えめですが、骨格はしっかり。穀物系の味わいもありながながら酸味やスパイシーさも感じます。お酒自体がしっかりと造られているので、コクとうまみのバランスがよく、温度を上げても味がへこたれないのですね。

「個性のあるお酒なので、店ではお好きな方にしか出さないんです」と林さん。
それにしても、あっさりと上品なイメージの蕪蒸しに、ボディ感のある熟成古酒。普通は思いつかない組み合わせですが、いったいどんなマリアージュになるのでしょうか。

お料理とお酒を合わせてみましょう。
わあ……、自己主張していたお酒が、お料理と合わせたとたん、スッと脇役に回りました。個性の強いお酒なのに、蕪蒸しの繊細さというか、お出汁の香りを壊さないことに驚かされます。だしのうまみに、お酒のうまみが寄り添ってくるというか。蕪蒸しに入っているハタや銀杏などのそれぞれの素材の味も引き出され、海の余韻まで漂ってくる。

『てのしま』では、お椀に合うお酒をリクエストされると、必ず燗酒を合わせるのだとか。熱々のだしの温度にお酒の温度もできるだけ近づけることで、お料理とお酒の一体感を楽しめるように考えられているのです。

この「辨天娘」、温度が高い時には酸味もかなりしっかり感じられ、輪郭がはっきりしていますが、燗冷ましで温度が下がってくると、よりカドが取れて丸みが出てきますね。味の変化も楽しめるお酒です。

「料理と合わせることでお酒は角がとれますし、料理のほうは、より味わいの複雑さが増す組み合わせでしょう」と、林さん。
そもそも、日本料理の世界では、「料理とお酒を一緒に味わって味が完成する」という発想はなかったそう。日本料理はそれ自体の味わいが完成されたものであって、それ以上の味を足す必要はないと考えられてきました。

「もともと日本酒は『お神酒』つまり、神様への捧げものでした。それ自体の味について語る発想自体がなかったでしょうね」(林さん)
出汁のうまみに、しっかりした味わいのお酒のうまみを合わせるのは、『てのしま』の得意とする組み合わせ。思わぬマリアージュに感動しました。

シンプルな肉料理には、フルボディタイプのひやおろしを。自家製醤油麹のうまみとお酒が一体となって幸せに

さあ、三品目のお料理を出していただきましょう。
盛り付けも美しい「はなが牛ステーキ 香川本鷹唐辛子醤油麹」(写真上)です。

はなが牛のもも肉を炭火で焼き、なめらかなマッシュポテトを敷いています。ていねいに裏ごしし、鶏の出汁と干し椎茸の出汁でのばし、葛でとろみをつけてあります。お肉の味付けは塩・胡椒と自家製の醤油麹だけ。付け合わせはセリのお浸し。炒った松の実とともにポン酢であえてあります。

合わせたお酒は鳥取『山根酒造場』の「日置桜 純米ひやおろし 山装ふ」を常温で。
熟した感じがしっかりありますね。フルボディタイプです。お米のうまみ、ふくらみをしっかりと感じながらも、甘さは控えめ。味わいの後半にかけてシャープさが感じられるお酒です。

お肉と合わせましょう。
うーん、赤身のお肉のうまみが広がります! 肉と醤油麹のうまみに、日置桜の酸味と複雑な風味が寄り添います。これは絶対日本酒と合わせてほしいですね~。

見せていただいた自家製の醤油麹は「醤(ひしお)」とも呼ばれ、万葉集でも登場するほど歴史の深い調味料です。大豆と大麦、塩を使って仕込み、林さんの故郷の手島で採れる「本鷹唐辛子」という珍しい品種の青唐辛子を加えてオリジナルの味わいに仕立ててあります。これだけでお酒がどんどん進みそう。

「懐石料理よりもっと昔の日本料理のかたちを探りたいです」と笑顔で語る林さんは、日本料理の源流にも興味をお持ちで、日本古来の調味料や食材のエッセンスを、ところどころお料理に取り入れています。

自慢の日本料理と日本酒、『てのしま』ならではの体験をぜひ!

今回登場したお酒は、酒器も紗里さんのセレクトです。

こちらのお店は、お料理だけではなく、お酒と合わせて楽しんでもらうことを意識されていることが嬉しいです。お客様の好みに合わせて、飲みやすいものからマニアックな日本酒までそろえていらっしゃるのも素敵。
お店のセレクトに委ねて楽しみたいですね。

技術だけでなく料理に対する考え方も含め、いままでの経験をお料理で体現しつつ、これからもどんどん進化していくだろうという可能性を大いに感じます。そんななか、先日発表された『ミシュランガイド東京 2020』にて、一ツ星として初めて掲載されました。これをきっかけに、ますます飛躍されることでしょう。

しっかり素材のよさを引き出した優しい味わいのお料理ながら、旬のさまざまな食材の組み合わせや調理にチャレンジされていて、ここに来ないといただけない、『てのしま』ならではのお料理が楽しめます。ぜひ季節ごとにお伺いしたいですね。

料亭で本格的なペアリングを楽しめるお店は珍しいので、ご主人自慢のお料理に、奥様の合わせたお酒との組み合わせを頂ける、というのも貴重な体験だと感じます。

編集協力:糸田麻里子(フードライター・エディター)
撮影:佐々木雅久

【メニュー】
料理
おまかせ 9品 13,000円
ドリンク
ペアリング 6,000円
日本酒 1合950円~
グラスワイン 1000円~
クラフトビール 5種類 900円~
生ビール 800円
ソフトドリンク 800円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です。

※『dressing』プレミアム読者限定のご来店プレゼントあり※

『てのしま』林さんに、dressing読者へプレゼントをご用意いただきました。
特典をゲットして、あおい有紀さんおすすめの店『てのしま』の料理とお酒を堪能しましょう!

※取材時にいただきましたご来店時特典は、2019年12月15日(日)まで有効です。

ご来店時特典は…! (続きは 下の「今すぐ続きを読む」ボタンへ)

てのしま

住所
〒107-0062 東京都港区南青山1-3-21 1-55ビル2階
電話番号
03-6316-2150
営業時間
18:00~23:00(L.O.22:00)
定休日
日・祝日、不定休あり
公式サイト
https://www.tenoshima.com

※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。

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