町中華のようなカジュアルさが嬉しい、本格中華料理店が誕生!
連日行列ができる飲茶料理店や、マニアックな食材を使った郷土料理など、中国料理・中華料理への注目が集まる中、じわじわと人気が広がっているのが「ネオ中華」。町中華の気楽さはそのままに、定番中華料理にはない新たな広がりのある料理を味わえるのが、人気の理由だ。
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2019年5月23日にオープンした『farm studio #203(ファームスタジオ 203)』は、そんなネオ中華の醍醐味を感じさせてくれる店。
場所は、東急東横線の学芸大学駅から徒歩2分。庶民的な酒場の多い一角に新しくできた、スタイリッシュな飲食店が揃う「学大十字街ビル」の2階だ。店名の「#203」は、この建物の部屋番号。
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▲カウンター8席のみのシンプルな店内
中華でありながら「野菜もたっぷり食べてもらいたい」
同店を営む濱田利彦シェフは、徳島県出身。実家が農家のため、幼いころから当たり前のように採れたての新鮮野菜を食べて育ったそう。『farm studio #203』という店名は、都会の人にも野菜をたっぷり食べてもらいたいという想いから。
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『銀座アスター』で本格中華料理を習得した後、オーベルジュ形態のリゾートホテルなどで10年間、接客サービスや経営の経験を積みつつ、ソムリエの資格も取得したという濱田シェフ。
一見、料理人から離れていたように思えるが、この時代に料理メニューの開発などを担当した経験が今、とても役に立っているという。42歳にして、「体力的に無理がきくうちに」と満を持してオープンしたのがこの店だ。
「detox salada」は、一皿に40種類以上の食材が詰まった活力たっぷりのサラダ!
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この店に来たらぜひ食べてほしいのが、40種類以上の食材が使われた「detox salada(デトックスサラダ)」(写真上)。
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トッピングだけでもナッツ類、カカオニブ、大麦、フライドオニオン、グリーンレーズン、クコの実やカボチャのタネ、松の実などの種子、きのこ、キウイ、イチジク、カブのピクルス、トマト、ブロッコリー、白キクラゲと十数種類が入る。
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▲目の前で、さまざまな食材が次々にトッピングされていく様子は圧巻
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均一に繊細に千切りされた野菜たちをトッピング&ミックスし、スプーンですくって食べる。
ひと口の中にフルーツの甘みと酸味、香味野菜のシャキシャキ感と香りが広がり、噛むとナッツの香ばしさ、カカオニブのカリカリ感、大麦のもっちり感…、まるで大地が奏でる美しい交響曲のようだ。これだけたくさんの食材を使っているのに味がまとまっているのは、あらかじめ材料に油をまとわせているから。
「ただ上からドレッシングをかけただけでは、野菜に味がのらないんです」(濱田シェフ)
香り付けは「山椒」と「葱」の2種類からチョイス!
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味付けはベーシックなマスタードドレッシングがベースだが、使うオイルの香りを「葱」「山椒」から選べる。
特にインパクトが強烈なのが「山椒」。ひと口食べただけで舌に電流が流れたような刺激が走り、まさに“痺れるサラダ”。山椒の香りと刺激が野菜の隠れた甘みを引き出すのか、ヒリヒリする辛さなのにスプーンが止まらない。唇の感覚が完全に麻痺しても、悶絶しつつ食べ進めてしまう。
「人気の麻婆豆腐にもかなり山椒を効かせているので、この後に麻婆豆腐を食べる方には、サラダは葱の香りをおすすめしています」と濱田シェフ。
ちなみに「葱の香り」バージョンは辛みはまったくなく、葱を炒めた時の香ばしい甘みが感じられる。野菜にコクが増して、あっという間に山盛りの野菜をたいらげられてしまう。
「白子入り」の麻婆豆腐は、食感のラビリンスに迷い込んだよう
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この店一番の人気メニューは、濱田シェフの故郷・徳島名産の「阿波牛」を使った麻婆豆腐。
麻婆豆腐といえば豚肉のイメージだが、四川の麻婆豆腐は牛肉を使うのが一般的なのだという。この冬にオススメなのが、白子入りの麻婆豆腐。
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▲食感の違いを出すため、鱈の白子(写真上・左)のほかに秋鮭の白子(同・右のボウル)も入れている
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豆腐は、目黒区五本木で50年以上営業している老舗豆腐店『三井商店』の絹ごし豆腐と木綿豆腐を半々で使用。味がしっかりしていて、濃い味にしても豆腐の味が負けないし、にがりを使ってしっかり固めているので、強火で炒めても崩れないのだそう。
辛み付けには、異なる豆板醤を2種類ブレンドし、スパイスを強く効かせた自家製ラー油をたっぷりと使う。
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▲立ちのぼる湯気がもう辛い…
豆腐が隠れるほどに山椒たっぷり! 燃えるような辛みと濃厚な旨みに悶絶
麻婆豆腐といえば茶色いイメージだが、目の前の麻婆豆腐は赤黒い。豆腐が隠れるほど山椒がかかっているためだ。
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恐る恐る口に入れると、唇に激しい痺れの衝撃! 口中に風が吹き渡るような爽快な刺激と山椒の香りが広がり、その後を追いかけるように唐辛子の燃えるような辛み、そして濃厚な旨みがあらわれる。これまた、身悶えしながらもスプーンが止まらない。
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あれだけ炒めたのに、木綿豆腐はしっかり形が残っていて、しかも辛さの奥に豆の甘みが感じられる。絹ごし豆腐はトゥルンとしたなめらかな食感。このふたつの味わいが、口の中で交差するのが楽しい。
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極めつけは、やはり白子。ミルキーなコクと甘み、とろりとした食感が、山椒の刺激でさらに際立つ。秋鮭の白子は、鱈の白子よりもしっかりした食感。豆腐と似ているが、豆腐にはない動物性のコクがある。
木綿豆腐、絹ごし豆腐、鱈の白子、秋鮭の白子、4つの異なる食感が、次々にあらわれては舌の上で溶けていき、そこに山椒の鮮烈な風が吹く。めくるめく迷宮のような麻婆豆腐だ。
1個からオーダーできる「餃子」は、肉のパンチ力に圧倒!
定番人気の餃子は、1個単位でオーダー可能。
「おなかいっぱいだけど、餃子1個だけ食べたい、という時があるでしょう。そういう気持ちにも応えたいと思って」(濱田シェフ)
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徳島県産のブランド豚「匠豚」を使用した「餃子」(写真上)は十分に味がついているので、つけダレなしでそのまま食べられる。餡をたっぷりと詰め、コロッと張りのあるフォルムが、たまらなく食欲をそそる。
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噛みしめた瞬間に圧倒されるのが、あふれ出る肉の力強いうまみ! 厚めでもっちりした皮が、肉の強烈な存在感をしっかり受け止めていて、絶妙なバランスだ。
「徳島産の『匠豚』は味がしっかりしているので、味付けはシンプルに塩と醤油だけ。ニンニクも使っていないんです」(濱田シェフ)。
初めての食感とみずみずしさに、「野菜炒め」の概念が覆る
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中華の野菜炒めといえば青菜炒めが定番だが、「野菜の食感を味わう野菜炒めにしたかったので、食感の違う野菜を組み合わせています」と濱田シェフ。
使う野菜はその日によって違うが、取材当日はレンコン、黄ニラ、ブラウンマッシュルーム、万願寺唐辛子、キクラゲの5種類。食材によって油通しなどで軽く火を通しておき、葱、生姜を炒めて調味した後に、香ばしい葱油で一気に炒めあげる。
味付けもその日によって異なるが、取材当日は腐乳(豆腐に麹をつけ、塩水中で発酵させたもの)と塩のみ。
野菜は火が通ったか通らないかくらいのフレッシュな食感だ。「炒めサラダ」と呼びたいほどのみずみずしさで、「野菜炒め」の概念が覆る一皿。
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ワインはジョージア産のナチュラルワインが中心。「黄金桂」など本格的な中国茶も6種類揃っている。
「食べた次の日、元気が出るような料理を出していきたい」
濱田シェフは当初、「麻婆豆腐とサラダだけのランチ営業の店にしたい」と考えていたそう。だが、酒場が多く深夜の外食が活発な学芸大学の特性から、夜営業のみの店としてオープン。現在はなんと午前2時まで営業している。
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「飲み屋街なので、夜遅くまで外を歩いている人が多いんです。家に帰る前にちょっとお腹が空いた、そんな時にファストフードじゃ、次の日、元気が出ないですよね。気軽にふらっと寄ったら、ちょっと美味しいものをお腹に入れられて、次の日もがんばる元気を補給できる。そんな店にしたいと思うようになって、どんどん営業時間が伸びてしまいました(笑)」(濱田シェフ)。
8席しかないので、土日は18時のオープン直後の時間帯が予約でほぼ満席。予約なしで訪れるなら、最初の波が引く9時過ぎが狙い目だ。
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撮影:岡崎慶嗣
【メニュー】
detox salada 香りのチョイス 葱or山椒 1,100円
餃子 1個180円
阿波牛の四川麻婆豆腐 白子 2,000円
野菜炒め 1,100円~
グラスワイン 800円~
中国茶(6種類) 1,000円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
farm studio ♯203
- 電話番号
- 050-5488-3261
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 月・金~日
ランチ 12:00~14:30
(L.O.14:00、ドリンクL.O.14:00)
※予約不可
月~土
ディナー 18:00~23:00
(L.O.22:00、ドリンクL.O.22:00)
※予約可
日
ディナー 18:00~22:00
(L.O.21:00、ドリンクL.O.21:00)
※予約可
- 定休日
- 不定休日あり
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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