2020年の食トレンドは”本場の本物”だ! 本場スペインを体感できる「本物のバル」が来る【食の賢人】

2020年01月05日
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2020年の食トレンドは”本場の本物”だ! 本場スペインを体感できる「本物のバル」が来る【食の賢人】
Summary
1.2020年の食トレンドは何がくるか!?
2.食の賢人・岩瀬大二が大胆予測!
3.「本場の本物」が体感できるスペインバルが流行る予感

2020年の食トレンドは「本場の本物」

前回のコラムでは、2020年に味わっていただきたいワインについて紹介した。凝り固まってしまった知識や常識に縛られていてはもったいない、というテーマだった。

食や場も同じだ。ただ消費するものではなく、凝り固まってしまった知識や常識から離れる発見と体感の場。SNSで注目を集めるために消費するものではない。じっくりと楽しみ、じわじわと幸せを感じる時間と空間の中で「本当の本物」を知る。いわば、外食は「旅」であり「ツーリズム」である。それにふさわしい店が日本では増えているが、その中でアイコンとなるのがスペインバル、料理店だ。

今さらスペインバル? いや、これまでは玉石混交。「これが本当にスペインバル?」という「石」の方が目立つというような状況でもあった。

フランス、イタリアと並ぶ欧州の美食の国ながら、スペイン料理とその楽しみ方は長らく日本で誤解されてきた。海鮮パエリアとアヒージョとせいぜいイベリコ豚か。メニューにはイタリア語やフランス語の料理名やワインが並んでいた。

一方で『エル・ブジ』、『サンパウ』といった旧来の伝統料理ではないモダンスパニッシュが世界の料理界を席巻。普段のスペインとは何か? を知らない中で、新しいスペインを理解しようとしてもそれは浮ついたものになる。

伝統スペイン料理を真正直に味わえるバルスタイル

その流れが変わってきた。無国籍なバルではなく、ちゃんとした伝統的スペイン料理を真正直に味わえるバルや、スペイン現地での経験を生かしたバルスタイルを理解する店主、利用者が増えてきた。

また、渋谷や日本橋の再開発に合わせて、伝統を生かしながらもアップデートされた本国でも著名な店やそのエッセンスを堪能できる店が進出。

日本橋では、若手実力者パコ・ロドリゲスがプロデュースした『ミゲル ファニ』、かの地の技術と魂を日本で伝え続けてきたシェフ、ジョセップ・バラオナ・ビニェスが料理を監修し、豊富なピンチョスを提供する『ビキニ ピカール』、渋谷では1957年に開業、スペイン・マドリードで60年以上にわたって国王から市民に支持されてきたレストラン『ホセ・ルイス』。伝統とモダンなスペインに良い意味で東京・渋谷的なセンスでマッシュアップされている。

渋谷ではバルセロナのパエリア人気店『チリンギート エスクリバ』も話題になった。

街場のバルに目を移せば、とにかくスペインが好きで、その好きなものを伝えたいという情熱が伝わる店の存在が頼もしい。そこにいけば、発見がある。スペインでは伝統的でも我々にとってはまだまだ発見がある。

フィデワ(パスタのパエリア)、カルドソ(パエリアよりもだしが多く雑炊に近い)、スペインのサンドウィッチ、ボカディージョ。ピーマンや青唐辛子、イワシの意外なおいしさ、大西洋と地中海、2つの海があるからこその恵みの豊富さ、オリーブオイル大国ならではのアヒージョの本当の楽しみ方…。パエリアも海鮮、魚介だけではなく本場・発祥の地であり米の国であるバレンシアで愛される「山のパエリア」。酒でいえばチャコリ、シェリーといったスペインの地方独自の酒に、今やビールやワインと並んで定番化しているというベルモットもある。

「バスク風チーズケーキ」が2019年にトレンド視されたが、これが実に酒と合うというぜいたくな楽しみ方。

レストランは「外食の場」ではなく「旅の場」だ!

すでに当コラムで紹介した伝統的な田舎の食堂を標榜する『バル・ポルティージョ・デ・サル・イ・アモール』、都会の洗練も併せ持つ『パブロ』(ともに中目黒)をはじめ、薪で焚くバレンシアスタイルのパエリアにこだわった『エル トラゴン』(虎ノ門)、現地の海の家で焼かれるイワシ料理を堪能できる『エル チリンギート』、ボカディージョなら『フェルミンチョボカ』(六本木一丁目)。

さらに空間でいえば神楽坂の『バル・マコ』。料理はもちろんだが、入口にスタンディングスペース、奥にはカウンター席やテーブル席があり、まさにバルらしい楽しみ方ができる。

本物のバルか? それをチェックするならば、生ハム(ハモン・セラーノ)の質とコンディションとカットにこだわった店、フライドポテトの目玉焼きのせやロシア風ポテトサラダ(なぜかスペインで人気がある)といったタパスがある店。チーズの大定番マンチェゴを気軽につまめて、多彩なスペインワインを地方の料理を意識しながら出してくれる店。

それらバル、レストランは2020年の「求める」ものがある。「本場の本物」を味わう。空間の使い方や楽しみ方、クラフト的な手触り、食を通じての体感。

2019年、バスク、サンセバスチャンが食のツーリズムとして大いに話題になった。日本で、“サンセバ”のエッセンス、マドリードの100年以上続く老舗やバルセロナの人気店、アンダルシアの田舎の食堂に、ガリシアの海を感じさせてくれるバルなど、これを堪能できる場がある。

外食の場ではなく旅の場。2020年、まずはスペインバル、料理店で感じていただきたい。