2019年、最も印象に残った一皿は?
1年とは早いもので、気づけば2020年はもうすぐそこ! 2019年も『dressing』では、読者の皆様のフードライフを彩るべく、魅力的なレストランを厳選取材。個性豊かなおいしい料理と、熱意溢れる料理人の想いをお届けしてきた。
今回は、『dressing』編集部員3名が、2019年に出逢った料理の中でも「最も印象に残った一皿」を厳選。忘れられないほどに惚れ込んだ一品…、その魅力を紹介しよう!
【1】プリッとした歯切れの良さに驚き! 駒場東大前『TOKYO PASTA WORKS』の「タリオリーニ」
2019年もありがたいことに、取材を通してたくさんのおいしいお店、料理人の方々と出逢うことができた。どのお店も個性が光っていて、“一皿”に絞るのは非常に難しいのだが、なかでももっとも印象に残っている一軒を紹介したい。
京王線・駒場東大前にある『TOKYO PASTA WORKS』。店主がおひとりで営む、カウンターメインのこぢんまりとしたお店だ。
店名から読み取れるとおり、ずばりパスタ屋さん。でも、ただのパスタではない。
オーダーが入ってから手打ちする、正真正銘の“打ち立てパスタ”を楽しめるお店なのだ。
なかでも、私が衝撃を受けたのが、「カラスミのタリオリーニ」(写真上)。
タリオリーニとは、幅1~3mmほどのロングパスタのこと。この細いパスタに、アサリのだし、バター、ニンニク、赤唐辛子を使ったソースを絡め、仕上げにたっぷりのカラスミをかけた、見た目にもシンプルな一品。
でも、ひと口食べた瞬間、今まで食べたことのない食感にびっくり!この細いパスタからは想像ができないほどの弾力なのだ。
弾力といっても、よくある「モチモチ」とはちょっと違う。まるで弾けるかのように、噛むと一瞬だけ反発してくるが、すぐに「プリッ」と切れる、心地のよい歯切れの良さ。“活きの良いパスタ”とでも言うべきだろうか。
そんなパスタに、カラスミの塩気をまとわせ、アサリだしのソースとともに味わえば、もう何皿でも行けそうなほどのおいしさ! じんわりと優しいその味には、ひと口食べ進むごとに「もっと食べたい」と思わせてくる不思議なパワーがあった。
「地元の人がいつでもふらっと立ち寄れる、“街のパスタ屋さん”でありたい」という店主の想いから、今のところ事前予約は受け付けていないそう。
それでもわざわざ足を運びたくなってしまうのは、おいしさの余韻がいつまでも続く、『TOKYO PASTA WORKS』だけの特別な味があるからだろう。(dressing編集部 岩田)
TOKYO PASTA WORKS
- 営業時間
- ランチ11:30~14:00、ディナー17:30~23:00頃
- 定休日
- 日曜、月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
【2】未知なるおいしさとの出逢い! 錦糸町『SOUTH LAB 南方』の「ハムユイヨッペン」
かく言う私も、取材やプライベートで様々な未知と出逢ってきたことで、中国料理が大好きになった。
なかでも特に衝撃を受けたお店が、2019年6月、錦糸町に誕生した『SOUTH LAB 南方(サウスラボ みなかた)』だ。香港料理の新たな可能性を探る”研究所”として、食好きに人気を博している。
この店は、いわば”オールスター軍団”。
プロデュースは香港料理に精通する菊地さん、シェフは名店を渡り歩いてきた通称トミーさん、他にも元フレンチシェフやソムリエールも。さらには、菊地さんセレクトの食材や自然派ワイン、こだわりの野菜など、各方面の一流が集まっている。
それを一番に感じられたのが、ハムユイと呼ばれる塩漬け魚を乗せた蒸しハンバーグ「鹹魚肉餅(ハムユイヨッペン)」(写真上)だった。
香港の定番料理だというが、これが本当にうまい。
菊地さんだから仕入れられる最高級鹹魚の濃厚なうまみと香りが、今でも忘れられない。舌や鼻、脳、そして体中に広がっていくようだった。
そして、これを紹興酒ではなく自然派ワインといただく、というのも今っぽくて良い。
同店には、他にも数々の未知が潜んでいる。コースでもアラカルトでも、感情の赴くままに片っ端から気になるものを体験してみてほしい。
終わった頃には、普段触れる食材や料理、あらゆるものに対する感性が磨かれていることに気が付くだろう。(dressing編集部 道岡)
SOUTH LAB 南方
- 電話番号
- 03-6658-5299
- 営業時間
- 火~金曜18:00~22:00(L.O.)、土曜12:00~22:00(L.O.)、日曜12:00~21:00(L.O.)
- 定休日
- 月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
【3】つまみでも、握りでも! 御成門の鮨店『冨所』のタコは必食
カウンター鮨店のオープンラッシュが続いている。関係者たちからも「いま、鮨バブルでしょ」と、一様に聞く。バブルかどうかは別として、2019年は、編集部に「鮨店オープン」のニュースが相次いで飛び込んできたのは確かだ。
カウンター鮨店。ここでは決して安くはない鮨店、寿司ではなく鮨のことを指すが、筆者が「2019年の一皿」をあえて選ぶなら、御成門にある『冨所』の鮨を真っ先に挙げるだろう。2019年初頭に取材した『冨所』。それ以降、いろんなカウンター鮨店を巡ったし取材もしたが、なかでも『冨所』の鮨だけは忘れられない味だった(あくまで私見です)。
まず、食べごたえ・ほどけ方・ネタとの相性……どれをとってもすばらしいシャリ。通称“助六”という米を羽釜で炊いて赤酢で調味するのだが、大粒で存在感があるのにどこか控えめ。
「いい魚を仕入れて、どう出すか。それが鮨の基本」と大将は言うが、目利きによる魚選びもさることながら、“どう出すか”という点に、その秀でたワザが垣間見られる。
そして何と言っても、つまみでも握りでも「タコ」は必食!
あえて噛みごたえを残すため、王道の柔らか煮にせず、塩のみで40分茹でて自然に冷ますというのが、むしろ職人らしい。マグロでも小肌でもない、タコ。くっきりとした輪郭がきれいな断面に、プツンと噛む小気味よさ、そして押し戻すようなこの食感は、今まで出逢ったことがない味わいだ。
大将が一番好きなネタ。それが「タコ」というが、好きだから食べてほしい、という気持ちが究極のおいしさを醸しているのかもしれない、と思った次第。
ぜひ訪れてほしいカウンター鮨店だ。(dressing編集長 大澤)
冨所
- 電話番号
- 03-6876-0646
- 営業時間
- 昼 12:00~、夜 17:00~
- 定休日
- 不定休
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
きっと読者の皆様も、2019年に出逢った料理のなかに「これは忘れられない…」「また食べたいな…」と、心に残り続けている一皿があるはず。もしその料理が、『dressing』を通して出逢ったものだとするならば、編集部にとってこんなに嬉しいことはありません。
2020年も引き続き、グルメメディア『dressing』をどうぞよろしくお願いいたします!