今こそ味わいたい、「正統派」の鮨!
2019年、鮨の世界はますます盛り上がりを見せ、特定のネタをプッシュする店や、提供スタイルや盛り付けに個性を出す店など、多数の魅力ある鮨店が誕生した。
そんな個性重視の鮨店ラッシュの中、逆に注目を浴び始めているのが「正統派」というジャンル。ジャンルというより、江戸前寿司の技術をベースに、そこから大きく道を外すことなく、ネタやシャリに手を加えすぎない“素材の良さを極めた鮨”といったところだろうか。
そんな「正統派」を感じる鮨店が2019年9月に誕生した。それが東京・白金高輪にある『鮨まつうら』だ。
店主はなんと元魚屋! 魚好きが高じて鮨職人に
お店は、東京メトロ南北線・都営三田線の白金高輪駅から少し歩いた閑静なエリアにあり、お店の造りも街並みになじむようにひそやかだ。
ドアを開けるとカウンターが8席。ややコンパクトな造りだが、このサイズ感とシンプルな造りが落ち着く。
このお店を仕切るのは店主の松浦修さん(写真上)。なんと、元は魚屋に勤務していたという変わった経歴の持ち主だ。
そこからどうやって現在にたどり着いたのか伺うと、「魚屋で毎日魚を捌いているうちに、魚を捌くことが大好きになりました。そこで、“魚を捌いて料理ができる仕事をしよう、鮨職人になろう”と決め、『銀座 鮨 おのでら』『鮨来主』などで修業をしたんです」と、驚きの理由を教えてくれた。
では、その魚好きの松浦さんが出す『鮨まつうら』の鮨はどのようなものか? さっそく見せてもらおう。
黒アワビは、4時間蒸すことでうまみと食感のよさを引き出す
▲「岩手県産 黒鮑」
アワビのうまみを生かすため、お酒と昆布、塩で蒸しただけというつまみ。
ひと口噛むと驚きのやわらかさを感じ、そしてアワビ独特のうまみが喉を突き抜ける。この食感は4時間、静かな火で蒸すことで実現するそうだ。
素材を生かしたシンプルな味こそ、時間のかかるものだと痛感する一品。
基本的に『鮨まつうら』では、つまみは刺身、焼きものや蒸しものといった、“鮨屋のつまみ”的なシンプルなものが中心だそう。
柑橘がほんのり香る、生イクラの秘密は漬け地にあり!
▲「岩手県産 いくら」
大粒なイクラは小丼仕立てにし、シャリをしのばせて。かつおだしと酒、醤油少々という漬け地はイクラの味を壊さないよう、淡い味わい。
中でもアクセントになっているのが柑橘の香り。しかし、イクラの上にはのっておらず、その出所を探すと、漬け地に入れてあるという。これで香りがほんのり、イクラの味を邪魔しない仕上がりになるのだとか。
シャリは松浦さんの好みである、粒が小さい、固めに炊けるものをブレンドしているそう。使っているのは山形県産の「あきたこまち」と「コシヒカリ」。そこに赤酢2種と塩を合わせ、さっぱりと仕上げている。
澄み切った味にプロの技を感じる白子は、スダチとポン酢でシンプルに
▲「北海道根室産 真鱈の白子」
塩水と酒に漬け、臭みと汚れをしっかり取り除いた白子を、さっと湯にくぐらせたもの。スダチとネギ、ポン酢でいただく。
ふっくら肉厚な白子は、ネギなしで食べてもまったく臭みを感じない。むしろ、後味に爽やかさも感じるほどに澄み切った味わいだ。
適度に包丁目を入れたイカは、サクッと歯切れの良い食感も魅力
▲「鹿児島県出水産 スミイカ」
まっすぐに1,2本、右左ななめに数本入った包丁目の理由を聞くと、「適度に包丁を入れることで食べやすさとスミイカのサクサクした食感、両方を感じることができるからです」と松浦さん。
なるほど、たしかにバツッとした歯ごたえも含めて、イカ独特のしっとりした甘みを十分に感じることができる。
風味のいい煮切りはみりんと醤油、少量のたまり醤油。そこに、香りがよくなるように焼いた昆布を合わせたものだそう。
旬を迎えたマグロは、うまさに定評のあるボストン産のものを使用
▲「ボストン産 鮪の赤身」
1週間くらい寝かせたというマグロは冬という旬を迎え、脂も満ち、酸もほどよい具合になりうまみいっぱい。寝かす日数は魚の状態にもよるが、数週間と長めに寝かせたものを使うこともあるそうだ。
そして、口いっぱいにマグロのうまみが広がる大トロ(写真上)。その幸福感は何物にも代えがたい。
▲「ボストン産 鮪の大トロ」
特にこちらの大トロは甘みも脂のノリも抜群で、ボストン産マグロの高い評判も納得の味わい。かためのシャリに鮪の脂がまとい、噛むほどにとろけゆく甘みは、飲み込むのが惜しいほどだ。
定番メニューの卵は今どきのカステラ系ではなく、だし巻きで!
▲「浜名湖のヒトエグサ入り出汁巻き卵」
「ヒトエグサ」という青海苔入りの卵はだし巻き仕立て。ひと口噛むと海苔の香りが広がり、鮨の締めにちょうどいいさっぱり感。
元々は海老入りのカステラ玉子を作っていたそうだが、ある日海老の入荷がなく、だし巻きにしたところ逆に好評に。今では『鮨まつうら』の定番人気メニューになっているそうだ。
味付けは塩のみ! スペシャリテの穴子は必ず食べたい一品
▲「長崎県対馬産 穴子」
「長い付き合いで信頼を得て、やっとおろしてもらえた」という穴子は、ちょっとやそっとの鮨屋じゃ仕入れることができない仲買『株式会社ウエケン』のもの。特に穴子の見極めに長けており、「穴子といえばウエケン」と称されるほど。
「ツメ(甘みのあるタレ)は塗らないので、塩で召し上がってください」の言葉に、ひと口食べて即納得!
食べたことがないほど穴子自体の味が澄み、甘みがあるのだ。この味ならツメはむしろ不要だろう。ネタとシャリの間にほんのりしのばせた柚子の風味もいいアクセントだ。
合わせるお酒は、旨口の日本酒がおすすめ
松浦さん自身が選んでいるという日本酒は、純米酒・純米吟醸が中心。鮨に合わせるならほどよい旨口のお酒がいいという思いから大吟醸は置いていないそう。
あん肝の季節は相性のいい貴醸酒の『陽乃鳥』なども。価格は、日本酒ならどれも一合、徳利で一律1,100円というのもわかりやすい。
鮨好きから初心者まで、鮨と向き合う時間を楽しめる『鮨まつうら』
「ゆったりとした時間が楽しめ、ゆったりと味わえる鮨屋を目指したい」という松浦さん。
気持ちがほっとするような落ち着いた味わいの広がるこの鮨なら、きっとそんな想いを叶えてくれそうだ。
2020年、正統派の鮨を求めてますます人気が高まりそうな『鮨まつうら』。鮨好きの方から初心者まで、ゆったりした雰囲気は誰もがくつろいで鮨を楽しむことができるだろう。
【メニュー】
▼料理
おまかせ 15,000円
昼の握り 7,000円
▼ドリンク
日本酒一合 1,100円
他、ビール、焼酎、ワインやソフトドリンクなどあり
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税・サ別です
撮影:岡崎慶嗣
鮨まつうら
- 電話番号
- 050-5492-7882
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- ランチ 12:00~14:00
(L.O.13:00)
ディナー 17:00~23:00
(L.O.20:30)
完全予約制
(ランチは前日昼までにご連絡ください。)
- 定休日
- 日曜日
祝日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。