知られざるグルメタウン「イタリア・マルケ州」の料理を楽しめる一軒
イタリア・マルケ州と聞いても、場所が思い浮かぶ人は少ないだろう。ブーツに例えられるイタリアの「ふくらはぎ辺り」に位置するマルケ州は、アドリア海を望む美しいビーチや世界遺産に指定された歴史地区もあり、ヨーロッパ中から観光客が訪れ、美食を楽しむ人々も多い地域だ。
そんなマルケ料理を楽しめる店『aniko(アニコ)』が2019年10月、赤坂にオープンした。
赤坂通りを一本入った路地裏、老舗のそば屋や料亭などの並びにある白壁の外観は、隠れ家風の佇まいで思わず足が止まる。半地下へと続く階段へ誘う装飾が中部イタリアのリゾートのようで、気分もワクワクしてくる。
「家に招かれたようにくつろいで、料理を楽しんで欲しい」
全20席とこぢんまりした店内は、カウンター席と壁で仕切られたテーブル席、ソファ席がある。ヨーロッパのアンティーク家具、塗り壁の内装などが、まるでイタリアの田舎にある家のような雰囲気を放っている。
「家に招かれたようにくつろいで、料理を楽しんでほしいと思って作りました」と語るオーナーの井関誠シェフ。ここは、シェフの心づくしの料理とワインでくつろぐ空間なのだ。
10年じっくりイタリアで腕を磨いた井関シェフ
井関シェフは、都内のレストランでイタリア料理の修業をスタート。その後、イタリアに渡り、ピエモンテ州で3年、トスカーナ州で2年、マルケ州で5年と、計10年じっくりイタリアの四季を感じ、人々と暮らしながら料理人としての経験を積んだ。
特にマルケ州では、ミシュラン2つ星のレストラン『マドンニーナ・デル・ペスカトーレ』にて、日本人初のメインシェフに抜擢されるほどに活躍。人気店ならではのクリエイティブな料理から伝統的なイタリア料理まで、幅広く学んだ。
帰国後は、乃木坂にあった人気イタリアン『パーネアモーレ』(現在は閉店)で、その実力を発揮。そして満を持して独立し、『aniko』オープンに至る。
山の幸、海の幸、どちらもおいしいマルケ郷土料理
「マルケ州は北・南イタリアの中間にあり、どちらの特徴も取り入れた料理が魅力ですね。アドリア海に面しているため、魚介を使った料理も豊富。パスタも手打ちと乾麺両方があり、良質な生ハムやサラミもたくさんあります」(井関さん)
同店メニューの多くはマルケ郷土料理で、あまり見慣れないものばかりだが、いずれも食材のおいしさが生きたシンプルで豊かな味わいだ。マルケ州のみならず、イタリアで様々な経験を積んできた井関シェフ、その多彩な引き出しから生まれる料理の数々をご紹介しよう。
手間のかかった「オリーブの肉詰めフリット」は、ワインと相性抜群
まずは、ほとんどのお客が頼むという「オリーブの肉詰めフリット」(写真上)。「オリーベ アスコラーネ」と呼ばれるマルケ郷土料理であり、屋台などで気軽に売られるほど、現地でも人気の料理だ。
オリーブの果肉を、リンゴの皮のようにクルリとむき、肉のフィリングを中に詰めて真ん丸に仕上げ、極細のパン粉をまぶしてカラリと揚げる。
▲パン粉を付ける前の肉詰めオリーブ
肉のフィリングは、牛モモ肉の塊を香味野菜やニンニクと共に煮込み、柔らかくなったらミンチにし、さらにパン粉・チーズ・ナツメグ・レモンを混ぜ合わせるという手の込んだもの。『aniko』流として、肉のうまみを増すために、刻んだサルシッチャ(豚肉の生ソーセージ)を隠し味に使っている。
「使うオリーブは絶対にグリーンオリーブです」とシェフが語るように、ふっくらとしたオリーブの果肉のジューシーさが、塩気も効いたフィリングのうまみと好バランス。スターターとしてつまみながらワインを飲み、次の料理を待とう。
トロッと柔らかい絶品「サラミ」
「マルケ州の逸品チャウスコロ」(写真上・左)は、マルケ州で作られる定番サラミ。通常のサラミに比べて塩分も控えめで、柔らかいのが特徴。霜降り和牛のように細かく脂身が入っており、味わいはトロっとまろやかだ。
右に添えてあるのは、「クレッシャ」と呼ばれる炭火で焼いたフォカッチャ。薄い生地を炭火で焼いているため香ばしく、ピザ生地のような食感だ。たっぷりかけられた、マルケ産の香り高くマイルドなオリーブオイルが、その香りを引き立てる。
ミルフィーユのような「マルケ風ラザニア」は、3種の肉でうまみたっぷり!
人気パスタメニューの一つ、一般的なラザニアの原型とも言われるマルケ風ラザニア「ヴィンチスグラッシ」(写真上)。極薄に伸ばした手打ちパスタに、牛肉・豚肉・鴨肉の3種類を使ったミートソース、ベシャメルソース、パルミジャーノチーズを重ね、さらにチーズとバターを乗せて、オーブンで焼く。
ラザニアというとソースたっぷりのイメージがあるが、マルケ風ラザニアはソースもパスタも薄く、ミルフィーユのように何層にも重ねられている。本場では、ソースに鶏レバーなど内臓系の肉も使われるが、日本では苦手な人も多いため、同店ではレバー類を使わない。たっぷりの赤ワインを注いで作られるソースは、風味豊かで優しい味わいだ。
アッツアツで登場したら、ぜひ上からザクッとフォークでカットして豪快に頬張りたい。カリカリのチーズ、モチモチのパスタ、肉のうまみがギュッと詰まったソースのハーモニーがたまらないおいしさだ。
シェフ自慢の魚料理で、魚介のうまみをシンプルに味わう
アドリア海の豊富な魚介類も魅力のマルケ州には、魚介をおいしく食べる料理もたくさんあり、井関シェフもそれを得意としている。日本の旬の魚介にパン粉をつけて、炭火で焼いた「魚介のマルケ風グリル」(写真上)もその一つ。
パン粉は、オリーブオイルでいったん炒ってから、ニンニク・パセリ・オリーブオイルを混ぜ合わせ、魚介にまぶして炭火で焼いている。いったん炒ったパン粉を使うことで、衣が焦げず、キツネ色にこんがりと仕上がるという。
魚介の種類は仕入れ状況で異なるが、この日はヒラマサとヤリイカ、赤海老。高温の炭火で一気に焼き上げた後、身の厚いヒラマサのみオーブンで仕上げる。
シェフの長年の経験による絶妙な火入れで、表面はカリッと香ばしく、中はしっとりふっくら。魚介のおいしさがしみじみ堪能できる。
イタリアワインを知り尽くしたシェフが、ワインも厳選
ワイナリー巡りが趣味で、イタリアでも100軒以上巡ったという井関シェフ。世界でも最も古い歴史を持つというイタリアソムリエ協会、AIS認定ソムリエ資格も持っているほど。
「場所を聞くと、景色が思い浮かぶんですよ。北の断崖絶壁のブドウ畑、南の太陽が降り注ぐ畑とか。そういった風景がわかると、味もわかります。寒いところは少しタンニンが効いたクリアな味わいがありますし、南は華やかな味わいがありますよね」(井関シェフ)
そんなシェフが、海が近くてミネラル感の強いマルケ産ワインをメインに、自らワイナリーを訪れたイタリア各地のものやフランス産を厳選してラインナップ。ワインにぴったり合う料理とのマリアージュをぜひ楽しみたい。
「ラザニア」は土祝日限定ランチでも! おいしい料理とワインを気軽に楽しめる
▲3種の小麦粉をブレンドした自家製酵母のパンもおすすめ。ふかふかで香ばしく、しみじみおいしい。
「『aniko』とはマルケ州の方言で“たくさんを少しずつ”を意味していて、この店でもあれこれ少しずつ楽しんでほしい、という想いを込めました」(井関シェフ)
ちなみに、土曜および祝日は、人気メニュー「ラザニア」も含んだランチコースを提供している。一人でも気の合う仲間同士でも楽しみ方はいろいろ。
ぜひ心和むマルケ料理を味わいに出掛けてみよう。
【メニュー】
マルケ州の逸品チャウスコロ 1,200円
オリーブの詰め物フリット 800円
ヴィンチスグラッシ マルケのラザニア 1,600円
魚介のマルケ風グリル 1,800円
ランチコース(土曜・祝日限定) 1,200円~
グラスワイン(赤、白は常時2~3種類、ロゼ、スパークリングもあり)800円~
ボトルワイン 3,200円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
撮影:佐々木雅久
aniko(アニコ)
- 電話番号
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(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
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(L.O.23:00)
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