中目黒の複合施設『ザ・ガーデン』に、大人のためのモダンイタリアンが誕生!
トレンド感のあるカフェやレストランに昔ながらの店舗が混じる目黒銀座。その一角に、2019年10月、新しいスタイルの複合施設『ザ・ガーデン』がオープンした。
『ザ・ガーデン』は中目黒駅から徒歩5分。マンションビルの1階と地下1階部分に、グリーンショップやブックストア、ワインショップ、トラットリア、レストランなどがシームレスに展開されている。
オーナーである建築・ガーデン資材メーカー『LEC』の副社長・大久保圭人さんが「今まで出逢った素敵な人たちを集めたら、どれだけ素敵な店になるだろう」と声掛けをし、集まったのは各業界で知られた達人ばかり。庭園をコンセプトにしたこの場所に、それぞれの花を咲かせている。
個性豊かなショップが揃う中、グルマンの注目を集めているのは、今はなき伝説のイタリアン・表参道『フェリチタ』(現在は閉店)出身の武笠(むかさ)裕一さんがシェフを務める『リストランテシンティッラ』だ。
地下階段を降りると…隠し部屋のような空間が!
明るい色使いでナチュラルな雰囲気の1階の奥に進むと、何やら秘密めいた階段が現れる。降りていくと、がらりとイメージが異なる、まるで隠し部屋のような空間が。そこが『リストランテ シンティッラ』だ。
飲食部門を任されたのは、『フェリチタ』の元総支配人で、自然派イタリアワインの伝道師とも称される永島農(あつし)さん。
現在は、荒木町で紹介制ワインバー『HIBANA(火花)』を経営しており、“火花”の新たな展開の意味を込めて、『シンティッラ(イタリア語で火花)』という名のレストランをオープンした。
火花から立ち昇る薄煙をイメージしたというブルーグレーを基調にした空間は、家具や内装の色使いや装飾などがミニマムに抑えられている。主役である料理に五感が集中できるようにとデザインされたのだそう。
店奥には、プライベート感いっぱいの個室(写真上)も完備。個室料が別途かかるが、接待やお祝い事などに利用できそうだ。
名店の遺伝子を受け継いだ、腕利きのスタッフが再び集結!
シェフを務める武笠さん(写真上)は、老舗リストランテ『サバティーニ』や、トスカーナ料理メインの『ダノイ』で修業。その後、名イタリアン・シェフとして知られる岡谷文雄氏が率いる『フェリチタ』に入店し、1年半後、若干27歳でシェフに就任し活躍。
「『フェリチタ』が閉店してからは、料理長という立場から離れて仕事をしていたので、新店の話をいただいたときは正直迷いました。けれど、自分の集大成としてもう一度頑張ってみようと思い、挑戦することを決めました」(武笠さん)
そしてもう一つの理由が「再び、永島さんと共に働きたい」という想い。
チームワークが抜群だった『フェリチタ』。今は、武笠さんを中心に、スーシェフの奥野木(おくのぎ)隆介さん(写真上・左)を始め、当時の料理人、サービススタッフが再集結。『シンティッラ』は、最高のチームでオープンしたのだ。
イタリア郷土料理を軸にした、洗練されたモダンイタリアン
「モダンイタリアンではありますが、『これはイタリア料理です』と胸を張って言えるような料理を出していきたいと思っています。新しいことには積極的に挑戦しつつ、あくまでベースはイタリア郷土料理なんです」(武笠さん)
イタリアの伝統に根差した、新しい料理。気になる全貌をさっそく紹介しよう。
マグロをラビオリに!? シチリア特産品をふんだんに使った軽やかな前菜
シグニチャーの一つ「マグロのラビオリ仕立て メッツァルーナ」(写真上)。
半月形に整えられているのは、なんと極薄にスライスしたマグロ。中から水牛のリコッタチーズが透けて見える、繊細なビジュアルが美しい。
マグロはしっかり塩をした後、2日間ほど寝かせることでネットリ食感に。ほんのり香る程度にレモンを効かせたドレッシングが、マグロの自然な甘みを引き立てる。
フィリングは、リコッタチーズの他、砕いたアーモンドとバジリコ。クリーミーなリコッタチーズに、アーモンドの香ばしさとバジリコの爽やかさが絶妙なバランスだ。
「リコッタチーズのラビオリは、シチリアの伝統料理。そこに、シチリアの特産品であるマグロ、レモン、アーモンドをかけ合わせました」(武笠シェフ)
見た目の驚き、食べる楽しさ、イタリアの伝統が一体となった、シェフのセンスが感じられる一皿だ。
日本全国から取り寄せた、四季折々の素材を余すことなく一皿に
温かい前菜「ホロホロ鳥のガランティーヌ」(写真上)は、ホロホロ鶏1羽を余すことなく使用した一品。
ヴェネト州でよく食べられているというホロホロ鳥を丸ごと開き、内臓や余分な肉を除いて平らに成形。取り除いた肉をミンチにし、セージや塩、白ワインで風味付けたら、成形した肉で巻きつけて焼き上げる。
しっとりと淡泊な味わいの肉に包まれたミンチは、さまざまな部位が使われているため、食感、味わいが多彩に重なり、奥深い味わい。
下に敷かれているのは、赤ワインビネガーでサラダ仕立てにした、ヴェネト州名産のレンズ豆。さっぱりとした酸味が、肉料理の味わいを引き立てる。
骨はじっくりと煮出し、コンソメスープ(写真上・右)に。少量ながらうまみが濃厚で、雑味のない後口が絶品だ。
ちなみにホロホロ鶏は、専門農場である岩手県『石黒農場』から仕入れたもの。食材にこだわる同店では、野菜や肉などもシェフ自らが産地を訪ねるなど、自信を持ってすすめられる食材のみを仕入れている。
トリュフの華やかな香りに圧倒される、濃厚クリーミーなパスタ
常連客にも人気なのが「香りを包み込んだラビオリ トルテリーニ」(写真上)。
トルテリーニは、具材を詰めた生地をくるりと巻いて指輪状にしたボローニャ地方発祥のパスタ。同店では、香り高いポルチーニなどのキノコのペーストと、チーズ、ベシャメルソースなどを詰めて仕立てている。
▲キノコの風味に負けないほどに濃厚なのが、和牛の筋と香味野菜からとったソース
テーブルに皿が供されると、その場でトリュフを削り、トッピング。ヒラヒラと料理に舞い降りるトリュフは、濃厚な香りを放ち、うっとりとさせられる。
ツルッとしたパスタをトリュフごとすくって口に入れると、広がる華やかな香りに思わず感動。豊かな香りと重なり合ううまみが、とことん楽しませてくれる逸品だ。
絶妙な火入れから生まれる、しっとりやわらかいシカ肉料理
メインは「エゾシカのロースト ポレンタ タレッジョチーズ」(写真上)。
ローストしたエゾシカのロースを、「ポレンタとタレッジョチーズのソース」、「鹿のジュ(骨などから取っただし)のソース」の2種類で楽しむ。
シカは、赤身肉を脂から外したのち、その脂で再度肉を包み、直接火が触れないようにしてじっくりと火入れしている。ローズ色のしっとりとした肉は驚くほどやわらかく、じんわりと滋味に溢れている。
ポレンタとは、トウモロコシの粉を粥状に煮た素朴な料理。同店では、ゆるいポレンタに、イタリア・ロンバルディア州特産のタレッジョチーズやパルミジャーノを合わせてソースにしている。
タレッジョチーズはウォッシュタイプだが、クセがなく食べやすい。穀物由来のほんのり甘いポレンタに、チーズがミルキーな酸味をプラス。ぽってりしたクリーミーな味わいが、淡泊なシカによく合っている。
“自然派イタリアワインの伝道師”によるワインのラインナップも楽しみ
さて、永島さんが関わるリストランテということで、ワインへの期待も否が応でも高まる。
永島さん監修のイタリア自然派ワインを中心に、フランス・ブルゴーニュワインも交えてワインをラインナップ。イタリアワインは、永島さん自身が毎年1カ月以上イタリアを訪れ、工業生産に頼らずワインを作っているワイナリーから揃えたものばかり。ここでしか飲めないものもたくさんある。
ヴィンテージの1993年の赤ワインもバイザグラスでいただけるのだとか。ペアリングコースもあるので、『シンティッラ』でしか味わえないアッビナメント(マリアージュ)に酔いしれたい。
遊び心も忘れずに。楽しいひとときを過ごす、大人のためのリストランテ
「お客様には、おいしい料理はもちろん、楽しい時間を過ごしていただきたいですね」と語る武笠シェフ。鴨の料理を供するとき、『おまけです』といって、フォアグラを使ったひと口サイズのハンバーガーを出すなど、遊び心を欠かさない。
イタリアンと言えばカジュアルなイメージもあるが、ぜひ洗練された空間で、日常を忘れモダンなイタリアンを楽しんでみてはいかがだろう。
【メニュー】
<おまかせコース>
7品 9,000円
9品 13,000円
<ワイン>
グラス 1,200円~
ボトル 7,000円~
※完全予約制(当日16時まで受け付け)
※個室使用料は別途5,000円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜です
ristorante scintilla
- 電話番号
- 050-5488-3807
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 火~土
17:30~23:00
(L.O.20:30)
【ディナー】17:30 〜 (L.O.20:30)・レストラン利用は当日16時までの完全予約制
- 定休日
- 月曜日・日曜日
祝日や連休の中日の日曜は営業する場合もございます。
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。