至福のペアリングが話題を呼んだ『ふた味』が新たなスタイルで登場
2020年1月、新しい年の幕開けにふさわしい、注目の日本料理店『味はな』が東京・麻布十番に誕生した。料理と日本酒の至高のペアリングで名を馳せた、渋谷『ふた味』が名前を改め、心機一転、移転リニューアルしたカウンター割烹だ。
料理長を務める西山道泰(みちやす)さん(写真上)は、スイス・チューリッヒ郊外にある温泉割烹旅館『兎山(うさぎやま)』や西麻布『いちの』で、それぞれ『ミシュランガイド』の星に輝いた実力の持ち主。
名料亭として名を馳せた銀座『花蝶(かちょう)』で和食料理人のキャリアをスタートさせた後、数々の名店で熟達した職人技から生まれる正統派日本料理を披露。その至福の料理を求めて、国内のみならず、海外からもわざわざ訪れる人が後を絶たないという。
その西山さんが新たなステージに選んだのは、シェフズカウンタースタイル。凛とした佇まいの店内で存在感を放つ、木目も清々しい檜のカウンター。たった7席のカウンターに座って、シェフと向き合えば、今宵はどんな美食に出逢えるのかと胸がときめいてくる。
ちなみに、店名の『味はな』は、今はもう閉店した知る人ぞ知る京都にあった名割烹が由来となっている。店主は、日本全国の料理人から一目を置かれていた存在。店主直系の弟子である西山さんだからこそ許された名前だ。
極上の素材を惜しげもなく使った料理にしばし日常を忘れる
シェフズカウンターで供されるのは、普段はなかなかお目にかかれないような極上の食材を使った料理。「旬の食材、その中でも本当に上質なものだけを選んで、自分なりのフィルターを通して料理を作っていきたいですね。日常を離れた特別なひとときのための料理を作りたいと思います」と語る西山さん。
メニューは、13~14品から成る月替わりのコースのみ。海の幸と山の幸をふんだんに使ったコースは、途中でそばが供されたり、デザートに出来立てのイチゴ大福が現れたりと、緩急自在な料理で、最後までお客を飽きさせない。コースの真髄は、日本の四季の味わいを楽しむオーソドックスな日本料理だ。
例えば、冬季のコースに供される椀物は「カラスミ餅 白河甘鯛 車海老」(写真上)。彩りがお正月らしい華やぎを伝えている。自家製のカラスミを餅でくるんだ「カラスミ餅」に、幻の高級魚と言われる白い甘鯛を合わせている。
だしは、軟水を使い、福井県の老舗昆布店『奥井海正堂』から仕入れた利尻昆布と、削りたての鹿児島県枕崎産の本節(カツオ節)、そして、カツオ節の強さをおさえ、品よく仕上げるためにマグロ節もプラスしている。繊細かつ端正なだしが、身体の隅々まで染み渡るようだ。
余分な味付けは一切なし! 極上の素材の持つパワーに圧倒される
蒸したアワビにウニとキャビアをトッピングした、なんとも贅沢な前菜「蒸しアワビ バフンウニ キャビア 鯛の煮凝りのせ」(写真上)。愛媛県産のアワビは、昆布と大根おろし、酒で柔らかく蒸し上げ、大振りにカット。北海道産バフンウニ、ベルギー産の高級キャビア、オシェトラキャビアを惜しげもなくトッピングしている。ウニとキャビアの相性は抜群。無添加の生ウニが持つほんのりした塩気に、キャビアのコクのある塩気が相まって、極上の調味料としてアワビのうまみを引き立てる。
ソースのような鯛の煮凝りは、鯛の骨を焼いて、だしをとったもの。いずれの素材にも余分な調味料は一切使われていない。シンプルを極めることで、素材本来のおいしさを際立たせる。引き算の美学の和食ならではの一品だ。
至福の喜び! 旬の蟹を味わい尽くす
取材時のコースのメインは「石川県能登産のカニ」(写真上)。まるまる一杯(2人前)を様々に調理し、楽しませてくれる。能登産のカニは、たんぱく質の多い餌を食べているため、味噌がおいしいと評判だ。他のカニに比べても味噌の色合いが異なり、濃厚な甘さがたまらない。
最初に、昆布だしにサッとくぐらせた半生のものが供され、続いて、炭火で焼いたものが登場。蒸したカニ肉が供された後、味噌が残った甲羅にご飯を入れてリゾットにしていただく。冬の味覚を堪能し尽くす、まさに至福のひとときだ。
ぜひ体験したい! カリスマ日本酒ソムリエとの至高のペアリング
『味はな』でも、『ふた味』同様に、日本酒と料理のペアリングの第一人者であり、『赤星とくまがい』を仕切る、酒ソムリエの赤星慶太さんが、西山さんの料理にぴったり合った日本酒をセレクト。よりパワーアップした至福のペアリングを楽しむことができる。赤星さんの選ぶ日本酒は、マニアも驚くほど希少なものばかり。味だけでなく、香りのバランスも考え抜かれた五感を満たすペアリングは、ぜひ体験してほしい。
現在、ワインソムリエは常駐していないが、ベテランのソムリエが、西山さんの料理をより引き立てくれるワインをセレクト。こちらはペアリングではなく、ボトルで用意されている。極上の和食のパートナーとして楽しみたい。
伝統の中にも新しいチャレンジを忘れない西山流日本料理を堪能
学んだ師匠が京都の名店『たん熊』の出身だったため、西山さんにも京料理の伝統が受け継がれている。
「京料理で一番感動したのは煮炊き物でした。けれど、今、そういう煮物の味を出せる料理人が少なくなっていると実感しています。煮物のような料理は季節ごとに違う食材を炊いて、それを繰り返さないと“本物”の味を作り出すのは困難。ホッと心が落ち着くような煮炊きものを若い料理人たちにも残していきたいなと思い、コースには必ず煮炊き物を入れるようにしています」と西山さん。
そんな西山さんが創り出す日本の四季折々の美味を、“シェフズカウンター”で堪能してみてはいかがだろう。
麻布十番 味はな
- 電話番号
- 03-6809-5516
- 営業時間
- 17:30~23:30(L.O.22:00)
- 定休日
- 毎週日曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。