おしゃれもグルメも感度の高い街「中目黒」
「住みたい街」ランキング常連の東京・中目黒。懐かしい風情のある商店街から、おしゃれなカフェやレストランまで、バリエーション豊富な食の「it」が楽しめる街として、フーディーやインスタグラマーにも大人気だ。
その中目黒の駅から数分歩くと、『ミシュランガイド東京2020』で一つ星に輝いた人気の天ぷら店『天婦羅 みやしろ』がある。この『天婦羅 みやしろ』、味はもちろんのこと、一見天ぷら店には見えないような古民家というロケーションも話題のひとつとなっている。
そして、『天婦羅 みやしろ』の2階になんとも面白い鮨店がオープンした、ということで伺うと…。
住所は合っているのに入り口がわからない。そこで目の前の古民家に近付くと、小さな名刺サイズの表札とおぼしきものとドアノブが…。
思い切ってドアを開けると、中に階段が続いている。
まるで誰かの家にお邪魔するような雰囲気に驚きつつ、2階に上がると、ふいに視界が開け、温かな灯りが。
ツケ場を囲むように設えられた10席のカウンター。ここが話題の『鮨 おにかい』だ。
伝統の技に一工夫。鮨に『おにかい』流の個性をにじませる
元々こちらは『くずし割烹 おにかい』として営業していたが、同じ目黒区にある系列の人気鮨店『鮨 つきうだ』の若手鮨職人が活躍する場を広げたいという想いから、鮨店にリニューアルしたそうだ。
こちらで鮨を握るのは、坂本和樹さん(写真上・左)と望月将さん(同・右)。2人とも『鮨 つきうだ』で技を磨き、こちらを任されることになった。
お2人にズバリ『鮨 おにかい』の魅力とは? と質問すると、「伝統ある江戸前寿司に一工夫、“くずし”を加えて、ここでしか味わえない鮨を提供しています」と教えてくれた。
おつまみ少々、握り主体の「鮨屋」らしいコース構成
では、さっそく、『鮨 おにかい』らしい料理をご紹介いただこう。
まずはお通し3品。こちらは鮨の邪魔をしないような小鉢を定期的に内容を変えて用意。取材日は北陸産の「もずく酢」(写真上・上)、「湯葉と芹のおひたし」(同・右)、自家製の「松前漬け」(同・左)。
旬の食材や箸休めになるような味を考え、すべて自家製。どれも適度に軽やかで、後味もさっぱり。スターターとして鮨の合間に食べても合うよう、いい塩梅の味付けになっている。
カウンター鮨ならではのライブ感! 目の前で仕上げる鯖の瞬間スモーク
次の品を準備していただくと、見慣れないガラスの器を出してきた。
なんとこちら、短時間でスモークができる器具だそう。
今回は塩で下味をつけた国産の鯖の醤油漬けを、魚の香りを邪魔しない桜のチップで4~5分、器の中で燻す。
燻製する時間やチップは合わせる食材やシャリに合わせて選んでいるそうだ。
仕上がった「鯖の瞬間スモークの握り」(写真上)をひと口食べると、口の中に爽やかな香りが一気に広がり、そしてすっとシャリと馴染む。
「鯖の古典的な食べ方である酢締めもいいですが、スモークした鯖とちょっと垂らした煮切り醤油の組み合わせもなかなかいいでしょう?」という望月さんの意見に納得だ。酸締めしていないせいか、じゅわっと感じる鯖の脂がまたうまい。
バランス感のいいシャリと仲卸『石司』のマグロの豪華な共演!
さて、世間一般の“コスパ鮨”というと、価格高騰ゆえにマグロは後回しにならざるを得ないという印象もあるが、なんと『鮨 おにかい』では、マグロを専門に競り落として約80年、飲食業界ではレジェンド仲卸のひとつである『石司』のマグロを使っているそうだ!
「目利きの仲卸さんが仕入れてくれるマグロは、産地や魚体の大きさにかかわらず、質がいい。例えばこの時期は脂の具合のいいアイルランド産のマグロを使っています」と坂本さん。
さらに上質なマグロのお腹の下や尻尾寄りなどを仕入れており、うまく包丁を入れたり寝かせ方や塩の振り方などを調節することで、コストパフォーマンス面を維持し、味はより高みを目指している。
その『石司』のマグロを使った「中トロ」(写真上)の握り。包丁を縦に入れており、中トロ特有のコクや柔らかさを生かすような口当たりの良さが魅力だ。
合わせるのは福井県産コシヒカリを使い、赤酢で仕上げたシャリ。マグロに合う酸味のきいたシャリだが、ほのかな甘みもあり、とてもバランスがいい。
スペシャリテは1階と2階のコラボレーション「海老天海苔巻き」!
最後に出してもらったのは、なんと他の店ではなかなか見ることのできない“特別な”スペシャリテ。なんと1階にある『天婦羅 みやしろ』の海老天を使った「海老天巻き」(写真下)。
こちらはオーダーの都度揚げてもらう車海老の天ぷらを、シャリをのせた海苔で巻いたもの。手渡しでいただき、受け取ったらそのままがぶっと食べるのが正解。
サクッと軽い衣にプリプリの海老、そこにシャリと甘ツメが重なり、なんとも言えないおいしさだ。また、使っているのは鹿児島県産の活け車海老、海苔は最高級の有明産の「こんとび」。“スペシャリテ”という名も納得の食べごたえ!
日本酒、ワイン、梅酒…お好みに合わせて鮨とのマリアージュを
『鮨 おにかい』がおすすめするお酒は、スッキリ香りのいい、鮨の邪魔をしない辛口の日本酒、寒い時期なら後味のいい熱燗用のものも揃えている。
また、ソムリエがこちらの鮨に合わせてセレクトしたイタリアンワインや、『鮨 おにかい』のほか、『鮨 つきうだ』『天婦羅 みやしろ』など系列店で味わえる一般販売のしていないあらしぼりの梅酒(写真上)もおすすめだそう。
水にもこだわりがあり、料理に合う透明感を持った、奥会津金山の天然水だけを提供している。
絶品鮨と寛ぎのある優しい雰囲気の店内に、その場で次の予約を取る人が急増中!
コースを食べ終えるまでの数時間、シンプルながら細部まで工夫のされた店内はゆったりと寛げる。
心地のいい椅子に天井に映るカサの柄を楽しめる白熱灯を使った灯り、鮨ネタとして使う魚類がプリントされた吊り棚。そして、ほどよい距離に職人との会話が思わずはずむカウンター。
「今後はもっと“らしさ”を追求し、アイコニックとなる品を増やしたい」と語る2人の声に、日本の鮨業界の明るいこれからを感じる。
【メニュー】
▼料理
おまかせ(つまみ3品、握り15貫、玉子、お椀) 9,000円
▼ドリンク
日本酒 5勺700円~
他、ビール、酎ハイ、焼酎、シャンパン、ワイン、梅酒ソフトドリンクなどあり
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税・サ別です
撮影:岡崎慶嗣
鮨 おにかい
- 電話番号
- 03-3714-9888
(※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください)
- 営業時間
- 18:00~23:00(L.O.22:30)
- 定休日
- 月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。