恵比寿に誕生した、産直鮮魚がコース仕立てで楽しめるカウンター居酒屋『魚見茶寮』
洗練された空間で過ごす時間は、心にうるおいを与えてくれる。自身が食事で利用するときも、その条件を満たした居心地のいい店を選ぶことが多いという御幸佑亮(ごこうゆうすけ)さん(写真下)。
前勤務先の『魚まみれ眞吉渋谷店』で7年半にわたって包丁を握っていた当時から、独立後、カウンタースタイルの粋な店でおもてなしする自らの姿を思い描いていた。
いざ独立の手筈が整うや、気に入って通っていたという都内数店舗に嘆願して修業開始。各店のよいところを吸収しながら、自身の店の内装やメニューのアイデアを詰めていった。
内装に関しては、憧れの渋谷『高太郎』を担当したデザイナーにも相談を持ち掛けたが、予算面で折り合いがつかず内壁も自分で塗装することに。しかしこれが圧巻の出来。元デザイナーのキャリアに納得の美しい仕上がりが、居心地の良さに拍車をかけている。席はカウンターのみのため、カップルなどのふたり客が多いというが、席間も広めでゆったりとした気分で過ごせるため、いつも以上にリラックスして楽しめるに違いない。
手ごろな価格でおいしいものを少しずつ楽みたいなら、イチオシの「本日のお任せコース」を!
メニューは、コース、アラカルトともに用意するが、「その時季もっともおいしいものをぜひ食べてほしい」という想いを元に構成されたコースはお得度満点。もっとも手ごろな4,800円の「本日のお任せコース」で、約8品を楽しむことができる。
コースは全部で3つ用意するが、どのコースでも一品目に提供されるのはお店のスペシャリテでもある、温かいあんに浸った「甘鯛と生うに 奥飛騨キャビア蒸し鮨」(写真上)だ。
甘鯛のお寿司にあんをかけ、その上にウニをトッピングして蒸し上げた後、キャビアを盛り付けたら出来上がり。あんは、カツオと昆布の一番だし、みりん、醤油、酢で作っているが、一番だしに使っているカツオは、御幸さんの出身地である鹿児島県内のカツオ漁港の名所・枕崎のもの。
カビをつけることによって水分を抜きながら熟成させた本枯れ節を使うことで、だしのおいしさも追及したいと、現地まで赴いて作り手と契約を交わした代物だ。「気に入っている食材の作り手さんには、できる限り会いに行きたいんです」と話す御幸さん。来月もスタッフらとともに山梨を訪れるのだと教えてくれた。
しっかりとだしがきいた「ワンタン」はナチュールと相性ぴったり
続いては、独立前に修業させてもらった一店舗、渋谷『琉球チャイニーズ TAMA』の人気メニューを御幸さんなりにアレンジした「黒豚と海老のワンタン」(写真上)。
お皿にゴマペーストを敷いた後、茹でたワンタンをのせ、鹿児島醤油と小エビを油で煮だして作ったエビラー油をかけ、仕上げにネギとフライドオニオンをトッピングしたもの。ワンタンの具材は、鹿児島名物・黒豚のミンチと、食感が残る程度の大きさにカットしたエビ。さらに、卵とネギ、黄ニラも入り、鼻から抜ける香りも抜群だ。
「『TAMA』で働かせていただいたとき、『ワンタンってこんなにもワインに合うんだ!』ということを知ったのですが、そのときから、ワインはナチュール主体のラインナップにしたいと考えていたので、ナチュールと相性のいい、だしがきいたワンタンを作りたかったんです」と明かしてくれた。
ナチュールはすべて日本のもの。山形『グレープリパブリック』や長野『小布施ワイナリー』のものなど、ナチュールファンにはうれしい品ぞろえ。すべてグラスでも注文できるので、いろいろ試してみたい人にはうってつけだ。
日本各地のおいしい魚をとりどりに楽しめる盛合せ
こちらは、日本各地の新鮮な魚を一皿で堪能できる「お造り盛合せ」(写真上)。この日は、左から順に、北海道産「ぼたんえび」、島根県産「〆鯖」、島根県産「鰤藁焼き」、明石産「平目」、対馬産「のどぐろ」と彩り豊かで見た目にも気分が上がる一皿だ。
藁焼きした鰤は、脂がにじみ出て香りも圧巻。すだちを搾り、からしをつけていただくと味のバランスが絶妙だ。
刺身に添えられてくるのは、昆布やカツオを煮出して、味醂と合わせた自家製土佐醤油。甘みたっぷりのぼたんえびとも、さっぱりとした平目とも好相性で、一つひとつの魚のうまみをお酒とともにゆっくりと堪能したくなる。
高級魚のどぐろは豊潤なうまみ、〆鯖はちょうどいいしまり具合。追加で単品でもオーダーしたくなってしまう。
自家製コンビーフ、新鮮とれたて卵と混ぜ合わせて完成させるポテトサラダ
最後に紹介するのは、コースにもオプションで追加できる「自家製コンビーフポテトサラダ 浅野養鶏場さんのとれたて卵のせ」(写真上)。同店のこだわりがいっぱい詰まった名物メニューだ。
ポテトサラダ自体の味付けは控えめ。食べる直前に、周りに添えられた自家製コンビーフと玉ネギのソース、トッピングされた卵黄とともに混ぜ合わせることで、玉ネギの甘み、コンビーフのうまみ、卵のコクが融合した濃厚なポテサラへと昇華するのだ。
コンビーフは低温調理で2時間ほど火入れ。魚粉で育てられたニワトリの卵は、とろりとしたまろやかな舌触りも魅力だ。
店主お気に入りの作家が作る器にも注目してほしい
同店は、器選びにも余念がない。写真上・右の小石原焼は福岡県朝倉郡の辰巳窯で焼かれたもの。お造り盛合せに使われている器も、同じ窯元のものだ。写真左の丸皿は、鹿児島の薩摩焼を現代風にアレンジしたもの。「御茶碗屋つきの虫」の名前で作陶している作家の作品だ。箸置きと奥の器は、伊賀焼の若手作家・新学(あたらしまなぶ)氏が手掛けている。
また、冒頭で紹介した「甘鯛と生うに 奥飛騨キャビア蒸し鮨」を閉じ込めた古伊万里など、骨董の器にも目がない。「日本各地のおいしいものをさまざまに楽しんでほしい」との想いに溢れた同店ゆえ、食事を目でも存分に堪能してもらいたいのだろう。
きめ細やかな心配りで彩られた時間を過ごせば、こちらまで洗練された気分になってくるから不思議。通うほど、自分の内で「食や人生を楽しむ余裕」が膨らんでいくことを実感できるはず。
【メニュー】
▼コース
本日のお任せコース 4,800円
鰤しゃぶコース 6,800円
季節の蟹食べ尽くしコース 8,800円
▼一品料理
・甘鯛と生うに 奥飛騨キャビア蒸し鮨 1,800円
・黒豚と海老のワンタン 900円
・盛合せ 1人前1,600円(写真は2人前)
・自家製コンビーフポテトサラダ 浅野養鶏場さんのとれたて卵のせ 900円
・日本ワイン グラス750円~
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
魚見茶寮
- 電話番号
- 050-5488-2811
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 17:30~24:30
- 定休日
- 不定休日あり
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。