長野の人気オーベルジュで支持を集める実力派シェフが、白金高輪で独立オープン!
幼いころから食べることが大好きだった青年が、「食べる側じゃなく作る側になろう」と決意したのは、高校の部活引退後。父親が連れて行ってくれたホテルのフレンチのおいしさに感動したときだった。
以来、カナダ大使館、上野『ブラッスリー・レカン』、乃木坂『レストラン フウ』など都内のフランス料理店で修業を重ね、後にフランスにまで渡り、ブルゴーニュやアルザス、リヨン近郊の星付きレストランで腕を振るってきた峯岸昌昭シェフ。
帰国後は、東京以外での経験を積みたいと、長野県白馬村の『白馬リゾートホテル ラネージュ東館』で働くことに決めた。
フランス修業時代には農家での収穫も体験。
「農業の大変さを身をもって知ったと同時に、精魂込めて育てられた野菜のおいしさを存分に引き出した料理を作りたいと、身が締まりました」と峯岸さんは当時を振り返る。
そして2019年12月、『Minet.(ミネ)』を白金高輪にオープン。以降、長野での修業当時から付き合いのある農家から仕入れたものや、北海道産直の食材は欠かさない。
フランスや長野での生活を長く経験したことで、「人通りが少ない静かな一帯に店を出したい」との考えに至った峯岸さん。独立の地として選んだのは、白金高輪の閑静な住宅街。心地よい静寂の中、生産者が手塩にかけて育てた食材を楽しむ時間は、まるで郊外の別荘を訪れているかのよう。
料理は全9品のおまかせコースのみ。お好みでアペリティフ(食前酒)を頼みつつ、どんな料理が出てくるかワクワクしながら待つ時間も楽しみのひとつだ。
北海道産、長野県産の旬の野菜をふんだんに使った盛り合わせ
とりわけ力を入れているのは、野菜のおいしさを引き出すこと。肉料理にも魚料理にも、必ず野菜を添えるのが峯岸流だ。
まずは、峯岸さんが惚れ込んだ力強い野菜たちが主役の「北海道産、長野県産の野菜の盛り合わせ、いろんな調理法で 北海道産ホタテ貝とキャビアを添えて」(写真上)からご紹介しよう。
青芯大根(あおしんだいこん)、紅くるり大根(べにくるりだいこん)、紫ニンジンなどのカラフルな野菜によって彩られたこちらのプレートは、ニンジンのドレッシングによる水玉が愛らしく、見た目にも映える一皿。
ほとんどの野菜は、茹でるかローストかピクルスにするかで、余計な手を加えず、野菜本来の味わいを楽しんでもらえるよう仕上げている。
その中でよいアクセントとなっているのが、カリフラワーのピューレと、キャビアをのせた生ホタテ。それぞれの野菜は単品でももちろんおいしいが、ニンジンドレッシングやカリフラワーのピューレをつけたり、ホタテと一緒に口に運んだりすることで組み合わせの妙も楽しめる。
外はカリッ、中はしっとりのフォアグラを、ローストした蕪とフレッシュな蕪とともに
続いては、「フォアグラのポワレと2種の蕪と一緒に トリュフソース」(写真上)。
ローストした長野県産の赤蕪を添えたフォアグラは、外はカリカリ中はしっとりで、コントラストのはっきりとした食感に仕上がっているのが印象深い。
ソースは、ポルト酒とコニャック、マデラを煮詰めてフォンドヴォーに入れて再び煮詰め、バターモンテしたもの。最後にトリュフオイルで香りづけしている。
脂の多いフォアグラを中和しているのが、トッピングされた細切りの蕪。甘みが際立ったフレッシュな蕪のおかげで、こっくり濃厚なフォアグラに爽やかなアクセントが加わり、最後までおいしくいただける。
うまみが凝縮したジューシーな海老と、春の香りをまとった菜の花ソースは相性抜群
続いては、旬野菜の美しい色味を目でも楽しめる「軽く火を入れた赤座海老 菜の花ソース リンゴを添えて」(写真上)。
豊潤なうまみの海老が主役でありながら、生命力あふれる野菜やリンゴのフレッシュ感に心が躍る。
海老は、塩をしてフライパンで全面を焼き上げるのみ。鮮やかなグリーンが映える菜の花ソースは、オリーブオイルやタマネギ、ネギやじゃがいもなどを菜の花とともに軽く煮こんでミキサーでまわしたもの。添えられた角切りのリンゴとともに味わえば、濃厚な味わいの中に爽やかさが感じられる。
菜の花がもたらしてくれた春の香りがいっぱいで、みずみずしい海老との相性も抜群だ。
しっとりやわらかなカルガモとともに、いろんな味のソースを楽しみたい
肉料理は、今の時季においしいジビエが主役の「長野県高山村産のカルガモロースト ポワヴラードソース ビーツとカリンのピューレ」(写真上)。
長野県の腕利き猟師が仕留めたカルガモは、くさみが一切なく、しっとりやわらかな食感が魅力。オーブンでじっくりと火入れした後、フライパンで表面にだけ焼き色をつけることで、ソースの色と呼応するような美しいロゼ色に。
カルガモの横に添えられるのは、ビーツとカリンと根セロリのピューレ。さらに、カルガモの骨や香味野菜をローストして煮詰めた後、赤ワインビネガーや赤ワインとともに煮詰め、仕上げに黒胡椒を効かせたポワヴラードソースも加わり、ひと切れカットするごとにいろんな組み合わせで楽しめる仕上がっている。
ビーツ、カリン、根セロリはいずれも素材の味そのものが濃厚。カルガモを食べ終わった後も、お皿に残ったピューレを残さずすくって味わいたくなること必至。
ほおずき100%ジュースをはじめ、他店ではなかなかお目にかかれない珍しいドリンクも
同店を訪れたら、コースとともにぜひ楽しんでほしいドリンクメニューがある。ほおずきを使用した自家製アペリティフ(食前酒・写真下)だ。
こちらのほおずきも、長野県で働いていた当時に知り合ったほおずき農家から仕入れたこだわりの食材。
ほおずきを漬け込んだシロップをスパークリングワインで割った一杯は、ほんのりと甘くトロピカルな風味。アルコールが苦手な人は、ほおずき100%ジュースの用意もあるので、ぜひ試してみてほしい。
同じく長野県産のリンゴから作られたジュースやシードル、100%リンゴワインの他、ワインはナチュールを含めバラエティ豊かにそろえている。
テーブルにも、長野県産の朴葉(ほおば)をプレスして漆塗りしたパン皿や、フランスでの修業時代に出逢って以来惚れ込んでいるブランド『ティエール』のカトラリーなど、手に取るものすべてに峯岸さんのこだわりがいっぱい。
一皿一皿に、生産者への感謝とリスペクトを込める
料理を食べることも作ることも大好きな峯岸さんゆえ、生産者だけでなく、食にまつわるものづくりに関わる人への尊敬の念も大きいのだろう。
一つひとつのアイテムにまつわる思い出を語りながらも、「どれも、これからもずっと大切に使っていきたいものばかりです」と愛おしげな表情を浮かべていた。
おいしいものを食べて笑顔になってほしい。食事の時間そのものを楽しんでほしい。
そんな想いがたくさん詰まった『Minet.』で至福のひとときを過ごせば、食べることだけでなく、新しい食材探しや食器選びも、今よりもっと楽しめそうだ。
【メニュー】
・ランチ 3,500円
・ディナー 8,800円、13,400円(13,400円のコースは、オードブル、メインを選べます)
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
Restaurant Minet.
- 電話番号
- 050-5488-3301
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- ディナー 18:00~23:00
(L.O.20:30)
ランチ 12:00~14:30
(L.O.13:30、ドリンクL.O.13:30)
- 定休日
- 火曜日・水曜日
不定休日あり
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。