味よし雰囲気よし値段よし! 江戸前寿司発祥の地で味わう現代の寿司とは?
江戸前寿司の原型である、魚類と酢飯を握った「早ずし」、つまり「握り寿司」が生まれたのは江戸時代、墨田区両国からだと言われている。
そんな「江戸前寿司発祥の地」両国にある、正統派の江戸前寿司を味わえるのが『鮨 北條』。
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店主を務めるのは北條充さん(写真下)。海の近くで育った根っからの“魚好き”である北條さんは、魚を一番扱える料理ということで鮨職人を目指す。
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創業1887年、日本の鮨界を代表する職人を数多く輩出している蛎殻町『都寿司』で修業を始め、その後は人気ホテル『マンダリンオリエンタル東京』の鮨店『鮨そら』(※現在は閉業)などで鮨の技や目利きなどを学んだそう。
独立の地に両国を選んだのは、「落ち着いたロケーションで開業したかったことと、江戸前寿司発祥の地で鮨を握るのも面白いなと思い」(北條さん)とのこと。
その言葉通り、大通りから少し入った立地は駅近とは思えないほど静か。近くの両国公園の緑も爽やかだ。
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店内に入ると白木のカウンターを主役に、シンプルで凛とした空間が広がる。一般的に初めて入る鮨屋というものは緊張しがちだが、北條さんの柔和な雰囲気と落ち着きのある空間づくりに誰もが和めそうだ。
さて、このような雰囲気の『鮨 北條』が提供するのは、素材を主役にしたシンプルな江戸前寿司。
「やはり主役はタネ。主役を立てるためには過剰に味をのせない方がいい。なので、うちの鮨は魚自身が持つうまみや味を引き出すことに主軸を置いています」(北條さん)
そんな北條さんは毎日豊洲市場まで足を運び、自分の目で見たタネだけを仕入れているという。
「“第一印象のいい魚”ってやはり味もいいんです。そのためには人任せにせず、自分が魚と向き合うことが大事」と語る。
さて、江戸前寿司発祥の地で握る、令和の江戸前寿司とはどのようなものか? さっそくつまみや握りを見せてもらった。
旬の光り物と薬味の組み合わせが妙味!「鰯と薬味の海苔巻き」
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まず出してくれたのは修業先の『都寿司』の看板メニューで、『都寿司』出身の職人の間でも作り続けられている「鰯と薬味の海苔巻き」(写真上)から。
しっかり酢締めした旬の光り物(今回は岸和田産の鰯を使用)に、ネギ・ガリ・紫蘇などの薬味をのせ、海苔で巻いたもの。
コクのある光り物独特の脂のうまみと酢と薬味の爽やかな組み合わせがよく、スターターとしてはもちろん、握りの合間の口直しにもおすすめの一品だ。お好みでワサビを添えていただいても、より後味がすっきりしてこれまたおいしい。
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ぜひ見てほしいのがこの巻き込みの美しさ! 酢で締めてもなお脂っ気のある鰯とバラけやすい薬味をしっかり巻くのは、素人目で見てもかなり難しい。
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しかし、タネを置く位置や力加減で、このようにキュッときれいに巻けるそう。しかも時間が経ってもその巻きが緩まないのは、さすがの職人技であろう。
ほろりと崩れるシャリとの組み合わせが絶品! スペシャリテの「小肌」
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次は握り。『鮨 北條』のスペシャリテであり、また江戸前寿司の看板とも言える「小肌」(写真上)は熊本県天草産のもの。今日は、サイズが小ぶりのため2枚付けにしているそう。
小肌は下ごしらえの段階でしっかりめに塩をしてから塩抜きし、薄い身にちょうどいい具合になじむよう酢で漬ける。この見切り具合もプロの技ならでは。
ひと口食べると、うまみと酸味、甘みと、いくつもの味が口いっぱいに広がる! 背中に縦1本、すっと入った包丁目の効果で噛み心地もよく、そしてほろりとした食感のシャリがいっそうタネの味を引き立てている。
シャリは北條さんの好きな米だという、福島県産「コシヒカリ」と宮城県産「ひとめぼれ」をブレンドしたもの。崩れ具合のいい、粒の大きなものを選んで使っているそうだ。
また、古米を使う鮨店が多い中で、こちらでは新米を選んで使っている。
「やはり新米のおいしさは日本人なら誰でもおいしいと思う味」という北條さんのこだわりから、水分含有量の多い新米を、シャリに合うように水加減を調整しながら炊いている。
シャリの味付けは酢と塩のみのシャープな味わい。3年寝かした赤酢と1年寝かした純米大吟醸の赤酢、米酢の3種をブレンドして使うことで、味に深みを出している。
江戸前寿司といえば仕事をしたタネ! ギリギリの温度で火入れした煮イカは歯ごたえが絶妙
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次いで、青森県産スルメイカの「煮イカ」(写真上)。
江戸前寿司といえば煮穴子や煮蛤(ハマグリ)など、火を入れた煮物のタネが代表的。中でも火入れ具合の難しいイカを出しているとは、正統派江戸前寿司ファンにとってはうれしい限り!
また、驚きなのが歯ごたえと生のイカのレア感を感じる食感。あまり火を入れず、低めの温度のお湯でさっと火入れし、固くなる寸前のギリギリで引き上げるのがポイントだそう。
そして食べにくさから苦手とする人も多いイカだが、こちらではミリ単位の驚くほど細かい包丁が入っており、すっと噛むことができる。
味を仕上げるツメは、ゲソのだしと酒、水に醤油を少々加えたもの。仕上げにゆずを振ることで爽やかな後味に仕上げてあり、煮物の甘みが苦手という人にもぜひ試してほしい一品だ。
締めはやっぱりギョク! 芝エビとあわせた玉子焼きは焼き目もおいしい
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締めの一品は「玉子」(写真上)。
群馬県高崎産の味の濃い赤たまごに芝エビのすり身を加えて焼き上げた玉子焼きは、最近流行のフワフワ系ではなく、ぎゅっとした食感。
焼きあがったら紙とラップフィルムで包んで寝かせることで、気泡が落ち着いてこのような食感になるそうだ。固めのプリンのように口当たりがよく、こんがりとした焼き目もいい具合だ。
おすすめは日本酒。味も産地もバリエーション豊富なラインナップを楽しんで
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お酒はワインやビールなども揃うが、鮨と合わせるなら、日本酒が特におすすめ。
食事に合わせたいお酒は千差万別だからということで、揃える種類は産地もいろいろ、味もバリエーション豊富に個性的な日本酒が揃っている。
そして現状、誰もが気になるコロナ対策だが、衛生管理に細心を払って調理するのはもちろんのこと、店内の換気や消毒、従業員のマスク着用、席間隔を開けての営業から、お客にも除菌アルコールなどの使用などをお願いしているそうだ。
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さて、ここまでこだわった鮨の値段だが、実は鮨10貫に先付、巻き物、玉子焼き、お椀がついて8,000円から楽しめるというから驚き! 食材、手間、味わい、立地…どれをとっても破格である。
味よし雰囲気よし値段よし、と三拍子揃った『鮨 北條』。気軽に正統派江戸前鮨を食べるなら、ぜひ押さえておきたい一軒だ。
【メニュー】
▼コース
・鮨10貫コース 8,000円
(先付、巻き物、玉子焼き、お椀、鮨10貫)
・握りとつまみ12,000円
(先付、おつまみ、珍味、焼き物、蒸し物、巻き物、玉子焼き、お椀、鮨8貫)
※お好みでの単品注文も可
▼ドリンク
日本酒 一合 1,000円~
他、焼酎、ビール、シャンパン、ワイン、ソフトドリンクなどあり
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税・サ別です
撮影:佐々木雅久
鮨 北條
- 電話番号
- 03-6659-9300
- 営業時間
- 17:00~22:00(※12:00~14:30のランチタイム希望の方は3日前までの予約をお願いいたします。メニューは夜と同一です)
- 定休日
- 月曜日(※営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください)
- 公式サイト
- http://sushi-hojo.jp/
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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