たしかな技術のフランス料理を、高コスパで楽しめる「下町ビストロ」
欧米には、都心から離れた場所に、一流レストランに負けないレベルの料理を手頃な価格で楽しめる店がある。東京の下町・深川にある『25Hudson(ニイジュウゴハドソン)』も、まさにそんな一軒だ。
海外で腕を磨いたシェフが作る、国産食材にこだわったフレンチ。しかもリーズナブルに楽しめるとあって、地元で人気を呼んでいる。
東京メトロ東西線『東陽町』駅のほど近い住宅街の中に、ひょっこりと緑に囲まれた南仏風の建物が現れる。それが『25Hudson』だ。
店内は、カウンター6席、テーブル席が2つとこぢんまり。奥には4席の個室もある。白い塗り壁が明るく、まるで南仏リゾートのレストランのようだ。
ニューヨークで10年活躍した実力派シェフ
オーナーシェフの能勢雄介さんは、大阪のホテルや東京のレストラン勤務やフランスでの研修などを経て、ニューヨークに渡る。当初、再びフランスで学ぶことを考えていたが、他のシェフ達とは違ったことがしたいと思い、ニューヨークに渡った。
「ニューヨークには、パリとは全く違う世界がありましたね。メニューにキムチや豆腐といった食材が並んでいるんです。伝統にとらわれず、当たり前のように様々な国の食材を使っていました」
NYのフレンチレストランで10年間働き、エグゼクティブシェフを勤めるまでになる。帰国後、代官山『蔦屋書店』のカフェ&バーの料理長を経て、満を辞しての『25Hudson』オープンとなった。
テーマは日本のおいしい食材を使ったフレンチ
能勢シェフが『25Hudson』で目指したのは、できるだけ国産食材を使ったフレンチ。
「ニューヨーク時代、シェフ達が“フードマイレージ”という運動に取り組んでいたんです。なるべく地域内で生産された食材を使って、環境への負荷を減らそうという取り組みです。店を出すなら、日本で生産される食材を使った料理をテーマにしようと思いました」
日本の食材について勉強を重ねてきたという能勢シェフ。その選りすぐりの食材を使った料理をさっそく紹介しよう。
牡蠣の味がする葉っぱ? 驚きが詰まった前菜からコースがスタート
ご紹介するのは、4品からなるディナーコース。ボリュームも満点で、3,800円という価格以上の内容に驚かされる。
まず出てきた前菜は、「三陸牡蠣と牛肉」(写真上)。
上にトッピングされた葉を食べてまずびっくり。やわらかで厚みのある葉は、『村上農園』で生産された「オイスターリーフ」と呼ばれる葉野菜。噛み締めると牡蠣のような磯の香が口いっぱいに広がる。
その下には、低温調理で生のような食感に仕上げた牡蠣と牛肉。赤ワインビネガーとエシャロットを寒天で固めたゼリーを乗せ、竹墨を混ぜたココナッツパウダーをトッピングしている。
牧草のみで飼育されたグラスフェッド牛はうまみが濃く、三陸産の牡蠣はとろりとミルキー。まるで、牡蠣が牛肉を引き立てるソースのよう。ココナッツパウダーは、口に含むと淡雪のように溶けて、牡蠣のミルキーさを強めてくれる。始まりにふさわしい、ワクワクする前菜だ。
ワインが進む! 和食の八寸のような「前菜盛り合わせ」
2品目として登場したのは、シェフが見つけてきた日本全国のおいしいものがずらりとそろった「前菜の盛り合わせ」全7種(写真下・1人前)。
上から時計回りに、富士山サーモンの「自家製スモークサーモン」、北海道産の塩水ウニを使った「ウニコンソメ」、「宮城県産鹿肉のパテ」、「栃木県産ヤングコーン」、栃木のブランド卵『極み』を使った「トリュフ入り卵焼き」、「赤貝とホタテ貝のオランデーズソース」。そして真ん中が、同店のスペシャリテ「岩中ポークのパテ」。
ウニコンソメの下には2時間かけてトロトロにしたニンジンのムースを忍ばせたり、パテはどちらも1カ月間寝かせてまろやかな味わいにしたりと、いずれも手間と時間をかけて作ったものばかり。
特筆すべきは、貝のオランデーズソース(写真上・左)と卵焼き(同・右)。
卵黄にバターやレモン果汁を加えて作るオランデーズソースには隠し味に味噌を、卵焼きには魚のすり身を使うなど、和食のテイストをプラス。
個性あふれる料理が盛りだくさんの一皿は、食べて楽しく、ワイングラスにのびる手が止まらなくなること間違いなしだ。
フレンチを食べる幸せを実感する「鴨のロースト」
メインは、遊び心あふれる前菜から一転して、フレンチの王道「青森産バルバリー種の鴨のむね肉のロースト、もも肉のガランティーヌ」(写真下)。このボリュームで1人前だ。
バルバリー種の鴨は皮下脂肪が少なく、肉厚でキメ細かい肉質が特徴。
青森県産の鴨を一羽仕入れ、むね肉(写真上・左)はローストに、もも肉(同・右)はフォアグラとミンチを巻いて供している。添えているのは、鴨の骨から取ったジュ(だし)にポートワインを加えたソース。
肉は、ストレスを与えて身が締まることのないように、最初から最後まで、弱火でじっくり焼いていく。
火入れの秘密は、ドイツ製の鉄フライパン『ターク』を使用。熱周りがよく、温度が下がりにくいため、分厚い肉の塊を焼く際も、温度が下がることなく、こんがりとジューシーに焼くことできるそうだ。
味わいの強さで選んだという青森県産の鴨は、噛みしめるほどに滋味深いうまみが溢れる。ほんのり甘いクラシックなソースが、フレンチを食べる幸せを感じさせてくれる。
ほのかに香るワインが隠し味、しっとりコクのあるチーズケーキが絶品
パティシエの経験もあるという能勢シェフ。デザートは、シンプルに素材の味を楽しめるプレーンなソルベとケーキ類の盛り合わせ。
門前仲町にあるワイン醸造所『深川ワイナリー』のワインでコクを出した「深川チーズケーキ」を中心に、ギリギリの火加減で生のように仕上げた「チョコテリーヌ」、まろやかな香りが魅力の静岡県産抹茶を使った「抹茶テリーヌ」が皿に並ぶ。
生クリームとは違う、サッパリしたクリーミーさが、ブルーベリーの甘酸っぱさを際立たせている。
様々なフレーバーが楽しいナッツのプティフール(小菓子)も最後に登場。コーヒーだけでなく、食後のお酒にもぴったりな大人のスイーツだ。
正統派ブルゴーニュからお手頃ローヌまで、フランス産ワインをラインナップ
ワインは、フランス産をメインにしたラインナップ。正統派のブルゴーニュやボルドーを中心に、リーズナブルでおいしいアルザスやローヌのワインもそろえている。
国産食材のフレンチにぴったりな日本酒もおすすめ。将来的には、日本酒を含んだペアリングも考えているのだそう。
おうちで楽しみたい至福のデサートをお取り寄せ
4月から始めたオンラインショップでは、シェフお得意のスイーツを購入することができる。
おすすめは、コースのデザートにも出た「深川チーズケーキ」(写真上)。
シェフ理想のチーズケーキにぴったりなクリームチーズを求めて出逢ったのが、北海道にある『十勝野フロマージュ』のチーズ。ヨーグルトのように爽やかで品の良い味わいのチーズを存分に生かしたケーキだ。
食べると深川ワインのコクがふわっとあと口に香り、奥行きのある味わいで、大人も楽しめるスイーツになっている。
ワイン一杯でも大丈夫! 気軽に上質な料理を楽しみたい
東陽町に店を構えたのは、ニューヨークでの経験からだという。
「ニューヨークの郊外に住んでいたんですが、近くにすごく安くておいしいレストランがあったんです。マンハッタンでも出せるレベルの料理を安く提供する。日本に帰ったら、そんな店を作りたいと思いました」(能勢シェフ)
まだ、日本には知られていないおいしい食材がたくさんあり、どんどん見つけて、取り入れていきたいと語る能勢シェフ。ご紹介した料理はアラカルトでも頼める。前菜とワイン一杯という気楽な使い方も大歓迎だとか。朗らかなシェフとの会話を楽しみに、ぜひ『25Hudson』を訪れてほしい。
【メニュー】
・コースA(前菜2品、メイン1品、デザート、コーヒー) 3,800円
・三陸牡蠣と牛肉 900円
・前菜盛り合わせ 1,580円
・グラスワイン(赤、白3種類ずつ、シャンパン1種類)700円~
・日本酒(ボトル) 3,800円〜
<通信販売>
・深川チーズケーキ 2,480円
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込みです
※通信販売の詳細は、店舗にご確認ください
撮影:佐々木雅久(お取り寄せスイーツのみ店舗提供画像)
カジュアルフレンチ 25Hudson
- 電話番号
- 050-5494-3017
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 月~土・祝前日
ランチ 11:30~14:00
(L.O.14:00)
ディナー 17:30~22:00
(L.O.21:00)
※営業時間、閉店時間は日によって異なる場合あり
- 定休日
- 日曜日
祝日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。