祐天寺の住宅地に潜む本格フレンチ『ボンシュマン』
駅から少し距離はあるが、わざわざ、どうしても訪ねたくなるフランス料理店がある。
東急東横線・日比谷線「祐天寺」駅、「学芸大学」駅、どちらからも徒歩10分ほどに佇む『ボンシュマン』。家族の記念日のささやかな祝宴に、大切な人との食事に、いつまでも心に残るおいしい時間を約束してくれる、知る人ぞ知る名店だ。
一度訪ねたらまた次回もと、お客も再訪を約束したくなり、繰り返し予約する人が多い実力派レストランなのだ。
小ぢんまりとした店内は白を基調としたぬくもりある雰囲気。照明もほんのりやわらかく、世代を超えて和める空間を表現している。
各テーブルに飾られた可憐な草花など、隅々にさりげないもてなしの心を感じる。奥には6名が集える個室も完備していて、子ども連れのファミリー利用も歓迎。三世代が集う夜も少なくない。
オーナーシェフは、花澤龍さん。あべの調理師専門学校を経て、一旦はホテルの厨房へ就職したが、グランメゾンで食事をした経験が刺激となり、レストランで働きたいと思うようになった。当時、スターシェフが続々と誕生した時代だ。
「『小田原ステラマリス』へ転職したのですが、ここでの経験は大きな分岐点になりました」と、振り返る。さらにフランスで4年半、帰国後は表参道『ラ・ブランシュ』でスーシェフ、『代官山ラブレー』でシェフを務め、独立の夢を叶えた。
旬のひと皿は「鮎づくし」!
この時季、琵琶湖から稚鮎が届くと、夜のコースに必ず登場する「鮎のパテ」(写真下)。花澤シェフの得意料理の一つで、当店の夏の風物詩とも言えよう。
写真下は、盛り付けにあしらうフライ用の稚鮎。パテには、稚鮎ではなく、少し大きめの鮎を使う。
鮎のパテは、手間も時間がかかる料理。鮎は丸のまま、相性の良いほろ苦いネズの実、塩、砂糖でマリネし、焼き色をつけてから蒸す。その後、マデラ酒、ポルト酒、さらに日本酒も使いゆっくり煮て、フードプロセッサーにかけて裏ごし。口当たりがなめらかになるまで、3回ほど繰り返す。
盛り付けの仕上げに、サクッとした稚鮎のフライをあしらうが、濃厚なパテのまわりを勢いよく泳いでいるように見てとれる。双方のほろ苦さを、添えられたフルーツトマト、スイカがやわらげてくれる。「毎年夏にお出ししていて、楽しみにしてくださる方も多いんです」と、花澤シェフ。
ランチの定番、具沢山の野菜を食べるスープ
「ランチでは、季節を問わず定番のスープです」と、供されたひと皿は、「スープ」(写真下)だと知らされなければ野菜料理かと思うほど具だくさん!
根菜を中心に、セロリ、マッシュルーム、白インゲン豆、ニンニクなど野菜をたくさん使っている。野菜に隠れて見えないが、食べ進めると顔を出すのは、イワシだ。「軽くソテーして、仕上げに入れてさっと煮ているんです」。
器に盛った後、赤いスパイスを振りかけるが、これは韓国産唐辛子。多様な食材使い、アイデアの引き出しの多彩さに経験が光る。
ひと口含むと、野菜とともにイワシの風味が立ち、ほのかに和のテイストが広がる。
一体何種類の野菜が入っているんだろう? 種類を数えながらスプーンを動かすのも楽しく、正解は花澤シェフに聞いてみよう。
開店当時の定番「鶏のサラダ」が復活!
開店当初のスペシャリテ、鶏のざまざまな部位を味わう「鶏のサラダ」(写真下)が最近復活した。常連客からのリクエストがあったためだ。
鶏のモモ肉、皮、ぼんじり、砂肝などをそれぞれに応じた下ごしらえ、味付けを施し、野菜に乗せてサラダ仕立てに。半熟卵も使い、まさに鶏づくしの一品だ。
レンズ豆と玉ネギを使ったソースをかけ、豪快に混ぜてスプーンで味わうのだが、部位ごとの食感を感じながら食べ進めたい。小さな器に、鶏の魅惑が封じ込められているよう!
フランスの日常に欠かせない、バゲットのサンドイッチ
こちらは春先から続いているテイクアウトで、評判の高かった「自家製ハムのサンドイッチ」(写真上)。バゲットに、自家製ハム、クリームチーズ、ホースラディッシュ(西洋ワサビ)をたっぷり挟む、シンプルでボリューミーなサンドイッチだ。
自家製ハムはとても薄くスライスしているので食べやすく、ほどよい硬さのバゲットと相性抜群。アウトドアで頬張ってもいいだろう。作りたてを用意するので事前予約がおすすめだ。
ワイン会を開くこともあると聞き、ワインのラインナップにも期待が高まる。グラスワインは赤・白3種類ずつ、ボトルワインはさまざまな産地、品種、年代のフランスワインを揃えているのでふさわしい1本、今開栓すべき1本を案内してもらおう。
「駅から遠い辺鄙な場所に、うちを目指して来てくださるお客さまを喜ばせたいと常に思っています」と花澤龍さん(写真上)。ランチにディナーにテイクアウトと多忙な日々の中、チャレンジし続ける厳しさを持つが……
「小学生の時から家族と来店していた子が、デートで来てくれたりします」と、語った時のうれしそうな表情が印象的。
少し駅から遠くても愛され続けるフランス料理店『ボンシュマン』は、開店19年目に突入した。
【メニュー】
▼コース
平日限定 日替わりシェフおまかせディナーコース 6,000円
土・日 日替わりシェフおまかせディナーコース 7,200円
ル シュ マンコース 9,000円
ランチ(日替わりコース) 3,000円
▼ワイン
グラスワイン白 1,200円
グラスワイン赤 1,500円
ボトルワイン 4,500円〜
▼テイクアウト
自家製ハムのサンドイッチ 1,000円
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税抜です。別途サービス料10%
ボンシュマン
- 電話番号
- 050-5487-0953
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 土・日・祝
ディナー 18:30~23:00
(L.O.20:30)
月・火・木~日・祝日
ランチ 11:30~15:00
(L.O.12:30)
月・火・木・金
ディナー 18:00~23:00
(L.O.20:30)
- 定休日
- 水曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。