そのおいしさにパンマニアも虜に!「デニッシュ専門店」が代官山にオープン
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パリパリと幾重にも重なった層、トッピングされたフルーツやクリームの華やかなビジュアル。スイーツでもなくパンとも違うデニッシュ。ベーカリーを訪れたら、ついつい手に取ってしまう人も多いのではないだろうか。
デニッシュの専門店『レカー』が、代官山にオープンした。レカーとは、デンマーク語で“おいしい”という意味。パティシエ出身のシェフが作るデニッシュは、新しいおいしさの誕生を予感させ、早くもパンマニアの注目を集めている。
代官山の小道に静かに溶け込む、隠れ家のような佇まい
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代官山から渋谷に向かう八幡通りは、一歩路地に入ると、思わず立ち寄りたくなる個性あふれるショップが点在。『レカー』もそんなショップの一軒だ。
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軒先に下がるロゴをかたどった鉄製のサインプレートが印象的で、まるでヨーロッパの街角にあるベーカリーのよう。
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扉を開けると、正面にデニッシュがズラリと並ぶショーケースがあり、横には、一人掛けの小さなアンティークベンチが置かれている。
ブルーグレーと黒を基調に、ゴールドをアクセントにした内装は、シンプルでシック。ケースの中で色とりどりに並ぶデニッシュに、「さあ、今日はどれを食べようか?」とワクワクした気持ちがこみ上げてくる。
パティシエからベーカリー職人へ
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「小麦や卵、バターといったシンプルな素材が、パンやお菓子に形を変えていく。それが面白いと思いました」と語るのは、オーナーシェフの小出貴大さん。
小出さんは、岐阜の有名洋菓子店でパティシエとしてキャリアをスタートさせ、さらに技術を高めるために上京。東京・久が原にある『ラ・スプランドゥール』で菓子作りを学んだ。
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パティシエとして色んな経験を積みたいと考えていた小出さん。イタリア料理レストランにドルチェ担当として入店し、菓子だけでなく、料理のソースや自家製パン作りに携わるようになる。
以前からケーキだけではなく幅広い技術と知識を身に付けたいと考えていた小出さんは、「本格的にパンについて学びたい」と、食パン専門店として名高い『セントル ザ・ベーカリー』に入店。その後、より幅広く小麦粉と製法を学ぼうと『ブレッドワークス』に移り、さらに多彩なパン作りを学んだ。
こだわりは北海道産小麦とバター
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「デニッシュの専門店を作るアイデアは、昔から考えていました。デニッシュが好きでしたし、パティシエとしての技術も生かせると思ったからです」(小出さん)
念願の『レカー』オープンに、小出さんは2つの想いを込めた。
ひとつは、北海道産小麦と北海道産バターにこだわること。
「『セントル ザ・ベーカリー』で、北海道産小麦「ゆめちから」を使っていたのですが、その独特な甘さと風味にすっかり魅せられました」(小出さん)
この「ゆめちから」の風味を引き立てようと、バターも北海道産にこだわっている。ミルキーでクセのないバターは、繊細な国産小麦の風味を損なうことがなく、優しいコクを添えてくれる。
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もうひとつが、ギフトにもなるデニッシュを作ることだ。
「日常的に楽しむパンというより、パティスリーのお菓子のように少し特別感のある、プレゼントしても喜ばれるようなデニッシュを作りたいと考えました」(小出さん)
『レカー』のデニッシュは、一部を除き、しっかりクリームごと焼き込んでいる。火を通すことで、常温で持ち運びができるようにとの考えからだ。
「デニッシュという一つのジャンルに絞って追求することで、パンでもケーキでもない新しいジャンルに昇華できるんじゃないか。そう考えたのも専門店にした理由です」(小出さん)
ザックザク食感と、とろ~りクリームのコントラストがたまらない
さっそく人気のあるデニッシュをいくつかご紹介しよう。
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同店のスペシャリテ「ヴァームデニッシュ」(写真上)。
デニッシュ生地を丸い型で成形し、層の中に空洞を作り、卵と牛乳、香り高い有機バニラビーンズを使ったカスタードクリームをたっぷりと詰めている。
「ヴァーム」とは温かいという意味のデンマーク語。寒い時季には、生地部分を軽くリベイクし、ひんやりしたクリームをその場で詰めて販売している。
「以前から、ザクザクのデニッシュにシンプルなクレームパティシエール(カスタードクリーム)を“詰めたて”で食べたら、おいしいだろうなと考えていました」(小出さん)
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まずは、こんがり焼き目のついた見事な層に注目してほしい。見た目だけでも、ザクザク、パリパリという音が聞こえるようだ。
ガブリと頬張ると、ホロホロと層が崩れ落ち、とろりとしたクリームで口がいっぱいに満たされる。
有機バニラビーンズの芳醇な香り、そして生地を噛みしめるとじんわりあふれる、小麦の優しい甘さとミルキーなバターの香りがたまらない。
愛らしい形がシュークリームのようにも見えるが、滑らかなクリームの口溶けとザクザク生地とのコントラストが際立ち、シュークリームとは全く異なる楽しさがある。
華やかなビジュアルに思わず目が釘付け
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鮮やかなビジュアルに思わず目を奪われる季節のフルーツデニッシュ。ご紹介するのは「国産ヴァレンシアオレンジ」(写真上)だ。
粒がギュッとしまり、味も濃厚な和歌山県産のオレンジを、粒感が残るよう軽めにコンポート。クリームの風味付けにもオレンジのリキュール「グランマルニエ」を忍ばせている。
ザクザク、ジュワ~ッ。強めに焼き込んでいる生地は、フルーツのみずみずしさにダレることはなく、香ばしい食感とオレンジのあふれるジューシーさが、互いの魅力を最大限に引き立てあう。
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フルーツデニッシュを作る際に心掛けていることは、果肉だけでなく皮まで余すことなくフルーツを使い切ること。フルーツの持つ香りや風味を最大限楽しんでもらうためだ。
生地もフルーツの繊細な甘さや風味を活かすために、層の数を多めにし、もろく仕上げている。ジューシーなフルーツと、香ばしい生地、フルーツを引き立てるためにバニラを使わないミルキーなクリーム。それぞれのバランスが絶妙で、小出さんの技量が光る逸品だ。
生地にもおいしさの秘密がある、惣菜系デニッシュ
イタリア料理店での経験もある小出さん。手作りのソースを使った惣菜系デニッシュも逸品揃い。
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「グリーンオリーブと黒胡椒」(写真上)は、デニッシュ生地と相性抜群の自家製ベシャメルソースに、スライスしたオリーブをトッピング。仕上げに粗挽きの黒コショウをたっぷりと振っている。
オリーブ特有の香りとピリッとした味わいが、ワインにも合いそうなデニッシュだ。
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惣菜系の生地は、具材の主張に負けないよう、生地の水分量や層の数を変えて、強めのザックリ感を重視。
「デニッシュを食べようと家に持って帰ったら、生地がやわらかくなってしまうのを残念に思っていました。ですから、できるだけ長い時間、ザクザクの食感が維持できるように工夫しています」(小出さん)
そのために、生地の水分量を極力減らし、さらにコンベクションオーブンの熱風で水分を飛ばしている。手土産で持参しても、ザクザク、しっとりのコントラストを楽しむことができる。
シェフの一押しは、アーモンドクリームたっぷりの一品
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極上のデニッシュがずらりと揃う『レカー』の中で、小出さんが特におすすめというのが「デニッシュ・オ・ザマンド」(写真上)。
一見、焼き菓子のように見えるが、器型に焼いたデニッシュに、カスタードクリームとアーモンドクリームを合わせた濃厚クリームを詰めて焼き上げている。上にトッピングしているのは、デニッシュ生地のクランブル。
『レカー』のデニッシュはザクザク感が特徴のひとつだが、クリームをたっぷり詰めて焼くことで、外はザクザク、中はしっとりというコントラストがより際立つ。アーモンドクリームのリッチな味わいも魅力的だ。
素材のおいしさを引き出すため、砂糖は極力控えめに
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『レカー』のデニッシュを食べると、それぞれの素材のおいしさの個性が際立ち、「デニッシュってこんなに豊かでおいしいんだ!」と改めて、気付かされる。
「砂糖は一般的なデニッシュ生地に比べて、かなり少ないです。小麦やバターの風味、フルーツの甘さ、惣菜の具材のおいしさを感じてほしいからです。どれかひとつが強すぎないように、バランスを考えています」(小出さん)
まだまだ新しいおいしさが生まれる予感
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「自分が作りたいものではなく、お客様に喜んでもらえるものを作るのが本質だと思います。『こんなデニッシュが食べたい』というお客様のリクエストから生まれた商品もあるんですよ。日々、トライアンドエラーを繰り返しています」と小出さん。
常連客でも気付いていないかもしれないが、生地のザクザク感を夏と冬では変えているのだそう。これも常に食べる人のことを考えている小出さんならでは。
現在は新たに「デニッシュ食パン」を試作中で、オンラインショップでの販売も計画中。種類が一番そろっているのは、開店10時~昼の13時頃だとか。
デニッシュが好きな人はもちろん、“新しいおいしさ”に出逢いたい人も、ぜひ訪れてみてほしい。
【メニュー】
ヴァームデニッシュ 380円
国産ヴァランシアオレンジ 490円
デニッシュ・オ・ザマンド 390円
グリーンオリーブと黒胡椒 390円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜です。
※予約は店舗InstagramのDMまたは公式LINEアカウントに前日までに連絡してください。
Laekker(レカー)
- 営業時間
- 10:00~18:00(なくなり次第閉店)
- 定休日
- 水曜(その他不定休)
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
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