麻布十番に店を構える、アットホームなイタリアン『トラットリア トロンコ』
高級店が多い麻布十番にありながら、訪れるたびに「ただいま」と言いたくなるアットホームな店がある。麻布十番駅から徒歩30秒のところにあるイタリアン『トラットリア トロンコ』だ。
2020年7月1日のオープンからわずか2か月の間に評判が評判を呼び、予約で満席になることもしばしば。シェフの村田励さん(写真上・左)、ソムリエの田谷智さん(写真上・右)ともども気さくな人柄なので、ついついみんな時を忘れて長居してしまうのだろう。
友だちの家に遊びにきたかと錯覚させられるような居心地のよさ
国内のリストランテやトラットリアで基礎を築いた後、イタリアに渡り、ミシュラン2つ星の『Ristorante Piccolo lago』、同1つ星の『Ristorante Andreina』で研鑽を積んだ村田さん。帰国後、南麻布のイタリアン『アッピア』、乃木坂『パーネ アモーレ』(現在は閉店)を経て、2年間個人で出張シェフとして活動した後、満を持して『トラットリア トロンコ』をオープンすることとなった。
独立に際してパートナーに選んだのは、『アッピア』の先輩だった田谷さん。豊富な知識を武器にサービスのプロとして支えてくれるだけでなく、笑いのツボも同じなのか、ふたりの間には常にやさしい空気が流れているのが印象的。きっと訪れる人みんなが癒されるに違いない。
半地下にキッチンとカウンター、その上階にテーブル席という店の構造も、アットホームに感じさせてくれる要素のひとつ。ロフト付きの部屋に住む友だちの家に遊びにきたような感覚に陥り、「ここに住んだら楽しいだろうなあ」なんて夢想させられるくらい。だから、とことんまでリラックスして食事を楽しめるのだ。
熟成させた肉のうまみとトマトのフレッシュ感をひと口で楽しめるブルスケッタ
料理は、前菜からメイン、パスタまで、ボリューミー! にもかかわらず価格はリーズナブル!
その中からまず一品目にオーダーしたいのは、「えこめ牛いちぼのマリネ ~トマトとセロリーフのグリル ブルスケッタ仕立て~」(写真上)だ。
砂糖と塩、スパイスでマリネした肉を2~3日間冷蔵庫で寝かせたら、よく洗った後、今度は冷凍庫で凍らせてルイベに。その熟成肉とフレッシュなトマト、セロリーフをバゲットに重ね、最後に、カラスミのような見た目の、自家製の卵黄のマリネを削りかけたら完成だ。
使っている肉は熊本県産の「えこめ牛」。米を食べさせて育てているため、やわらかな肉質で、とくに赤身がおいしい。トマトは、三重県多気町の『ポモナファーム』で育ったブランドトマト「POMATO(ポマト)」のうちの一種。
熟成肉のうまみ、トマトの酸味や甘み、セロリーフの爽やかさが一体となったブルスケッタは、ひと口でぺろりと平らげられるサイズだが、口の中にいつまでも余韻を残してくれる。
種類豊富な魚介を色鮮やかな野菜やフルーツとともに楽しむマリネ
こちらの前菜は、「魚介のマリネ オレンジとウイキョウ」(写真下)。
ヤリイカ、タコ、アサリ、ムール貝、そして刺身でも楽しめるほど新鮮なホタテとエビは、白ワインとともにさっと火を入れて、ルッコラ、ウイキョウ、オレンジとともに盛り付け。最後にディルをさっと散らした、涼やかな見た目の一皿だ。
粒マスタードと白ワインビネガー、アンチョビのドレッシングによって全体がまとまっているだけでなく、香りもよく、塩気がちょうどいい。キリリと冷えた白ワインをきゅっと流し込みたくなるおいしさだ。
果肉の心地よい甘みと酸味をまとった麺がやみつきに!
続いてはパスタを2品ご紹介。
イタリアで腕を磨いていた3年間、パスタをはじめとするプリモのセクションを担当することが多かったという村田さんは、今でもパスタ作りが大好き。毎日、お店で麺を手打ちしているが、とりわけ時間がかかるのが、一本一本手でこねて作る太麺パスタ「ピーチ」(写真上)。
人気メニューゆえすぐに完売して結果的に毎日仕込みに追われるが、「最近は田谷さんも覚えて一緒に作っているんです」と余裕の表情。心底、麺を打つことが楽しくて仕方ないのだろう。
そのピーチを使った「ピーチ フレッシュトマトソース ~シエナ名物、うどんのような手打ちパスタ~」(写真上)は、同店のパスタの中でも一番人気。たっぷりのPOMATOを、オリーブオイルと塩、ニンニク、唐辛子とともに熱してソースを作り、そこに茹で立ての麺を投入。しっかり絡めた後、お皿に盛りつけた完成品は果肉感たっぷり。トマトの酸味と甘みがきわめて心地よく、熱々のうちにあっという間に平らげてしまうこと間違いなしだ。
同店では現在、週に2~3回はPOMATOを入荷しているというが、一皿にこれだけたっぷりの果肉を使っているのだから納得。「イタリア時代にピーチに出逢って感動して以降、自分の店を持ったら絶対にこれでスペシャリテを作りたいと思っていたけど、日本のトマトはクオリティが高いから想像以上においしいものに仕上がりました」と村田さん自身もご満悦。POMATOを紹介してくれた料理人仲間にも感謝しきりだという。
滋味豊富な有精卵をたっぷり使った濃厚カルボナーラ
POMATOを育てている生産者さんの紹介で出逢ったのが、同じく三重県多気町で育てられている『コケコッコー共和国』の有精卵だ。平飼い鶏舎でのびのびと育てられた鶏が生んだ有精卵は、ハリのある美しい黄身が特徴的。
同店では手打ちパスタやティラミスにも使っているが、卵のおいしさを存分に味わいたいなら、ぜひ食べてほしいのが「パッパルデッレ カルボナーラ ~コケコッコー共和国の平飼い卵とグアンチャーレ~」(写真上)だ。
豚の頬肉の塩漬け「グアンチャーレ」とハードタイプのチーズ「グラナ・パダーノ」、茹で汁に、全卵1個+卵黄2個を加えて作るカルボナーラは濃厚そのもの。
幅広いリボン状のパスタ「パッパルデッレ」の隅々にまで卵が絡み、口の中にコクを広げていってくれる。
前菜4種+手打ちパスタ2種+メイン+デザート+コーヒーまたは紅茶のコースもおすすめ
フレッシュトマトソースのピーチ、カルボナーラ以外にも魅力的なパスタはたくさんだから、1つだけに絞るのはなかなか難しそう。そんなときは、前菜4種、手打ちパスタ2種、メイン、デザート、コーヒーまたは紅茶が付いて6,000円のコースを利用するのも一手。友だち同士の気楽な食事や休日のデートで、お腹も心もたっぷりと満たされてみては?
ただし、あまりの居心地のよさに店を後にするのが億劫になること必至なのでお気を付けを。名残惜しい気持ちを「また来るね」の言葉に変換すれば、次に来店する楽しみを胸に、より充実した毎日を過ごせるはず。
【メニュー】
・えこめ牛いちぼのマリネ ~トマトとセロリーフのグリル ブルスケッタ仕立て~ 600円
・魚介のマリネ オレンジとウイキョウ 1,600円
・ピーチ フレッシュトマトソース ~シエナ名物、うどんのような手打ちパスタ~ 1,800円
・パッパルデッレ カルボナーラ ~コケコッコー共和国の平飼い卵とグアンチャーレ~ 1,800円
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税別です
撮影:佐々木雅久
トラットリア トロンコ(Trattoria Tronco)
- 電話番号
- 03-5545-5741
- 営業時間
- ランチ12:00~15:00(L.O.14:00)ディナー18:00~23:30(L.O.22:30)
- 定休日
- 月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。