舌の肥えた大人たちを魅了する西荻窪の名ビストロ
落ち着いた街並みの中に、舌の肥えた大人も納得のビストロやバルが点在する西荻窪エリア。そんな街で、「リーズナブルでおいしい本格フレンチを食べるならココ!」と支持されているのが『ビストロ グラン ソレーユ』だ。
JR中央線「西荻窪」駅から、商店が並ぶにぎやかなバス通りを抜けて5分。住宅街の和やかな風景の中にある、オレンジ色のドアが印象的。
テーブルクロスがピシッと掛けられたテーブルが外からも見え、さっそく上質な料理がいただけそうな予感が漂う。
店名の「グラン ソレーユ」は、フランス語で「大きな太陽」の意味。その名の通り、白い天井や壁には、太陽のように温かなカラーの家具やクロスが映える。壁に飾られた絵画はクラシカルで、落ち着いた大人の空間だ。
奥行きのあるフロアでは、段差を設けたり、床材を変えたりして、それぞれの席に異なる表情を持たせている。テラスのような開放感のある席もあれば、個室のように寛げる席もあり、その時々に合わせて、使い分けしたくなる。
ベテランと若手の絶妙なチームワーク
『ビストロ グラン ソレーユ』の魅力的な料理は、厨房の見事なチームワークから生まれることは、案外、常連客でも知らないかもしれない。
チームのリーダーは、この道30年以上のベテラン、木村裕二さん(写真上)。その経歴は華麗だ。
東京の有名ホテルでキャリアをスタートさせた後、21歳で渡仏。フランスでは4年間、星付きの有名レストランなどで本場のフランス料理、特にジビエ料理について学んだ。
帰国後も数々の有名ホテルで働き、その間にもイタリアにも渡り、1年間イタリア料理を学ぶ。『ホテル インターコンチネンタル 東京ベイ』では、立ち上げ時から参加し、2番手まで務めた後、国立の老舗レストラン『ル・ヴァン・ド・ヴェール』の総料理長に就任した。
2002年に三鷹で、最初に『ビストロ グラン ソレーユ』をオープン。その後、もう少し広い場所を求めて、現在の西荻窪に移転した。その熟達した技による料理には、たくさんのファンがいる。
木村さんの頼もしいパートナーが、副料理長の野口和俊さん(写真上)。子供の頃、家族と共に訪れたフランス料理店で食べた鹿肉のおいしさが忘れられず、学校卒業後、ジビエ料理が得意な店を食べ歩き、『ビストロ グラン ソレーユ』で働きたいと思ったのだとか。今は、料理の要となる魚や肉の“焼き”を担当している。
▲左から白井岳さん、野口和俊さん(スーシェフ)
ベテランの木村シェフを中心にして、サポートする若手2人、野口さんと白井岳さん。3人の一糸乱れぬチームワークで生み出すのは、ソースから盛り付けまで丁寧に作られた端正な料理だ。
そこに暮らしている人々のためのフレンチ
『ビストロ グラン ソレーユ』では、2,500円からのお手頃なコースから、得意のジビエを含んだフルコースまで様々なタイプのコースが用意されている。今回ご紹介するのは、同店の魅力を堪能できる7,000円のフルコースだ。
「その土地にあった料理を作ることを大切にしています。フランスのレシピそのままで作るのではなくて、日本人の口に合う、ここで暮らしているお客様に喜んでもらう料理を作るように心がけています」(木村さん)
最初に登場するのは、「パテ・ド・カンパーニュ 生ハム巻き 金柑とピクルス添え“葉月”」(写真上)。
鶏や豚、牛といった様々な種類の肉を合わせたパテは、脂身の代わりに豚足を入れることで、しつこくないコクが実現。ピンクのソースは、甘酸っぱいビーツとヨーグルトのソース。
ポイントは自家製の金柑の甘露煮。金柑のほろ苦い甘酸っぱさとこっくりした甘みが、マーマレードのようで、肉のパテに合う上質なソースとなっている。
スペシャリテは絵画のように美しい前菜
印象派の絵画のようなビジュアルに、思わずときめく前菜「海老、穴子、野菜のテリーヌ バルサミコヴィネガーソース“マーブル仕立て”」(写真上)。
一度作るのを止めたら、ファンからのリクエストが相次ぎ、復活したという人気メニューだ。
シャキシャキ食感の野菜とコンソメで煮た穴子、軽くボイルした海老を、穴子を煮たコンソメのジュレでつないでいる。コンソメジュレのうまみの加減が絶妙で、野菜や魚介のそれぞれの風味が生きて、花畑のように素材のおいしさが開花する。
添えられたバルサミコのソースも大人気。バルサミコを煮詰めただけのシンプルなものだが、尖った酸味の全くないまろやかなコクは、パンにつけてもおいしい。
「グリーンピースの冷製スープ“サンジェルマン”」(写真上)。
上がグリーンピースの冷製スープ、下がコンソメのジュレの2層になっている。グリーンピースの風味のあとにふわっと広がるコンソメがなんとも上品。
同店では、スープのベースになるコンソメ、ソースのベースになるフォンドヴォー(牛骨のだし)、フュメドポワソン(魚のだし)などをすべて自家製している。コンソメなら4日間、フォンドヴォーは3日間、 だしをとるところから始まる気が遠くなりそうな作業。そんな時間と手間の積み重ねで、最後の一滴まで余すことなく食べたくなる絶品ソースやスープが作られる。
本日の魚料理は「平鱸(ヒラスズキ)のロースト“鱗仕立て”」(写真上)。ローストしたスズキに、付け合わせの野菜をウロコに見立てて並べた一皿。
こちらもソースが絶品。フュメドポワソンにさらにオマール海老のだしをプラスして、2つのうまみを凝縮。皮目がパリッ、身がふっくらとローストされた淡泊なスズキの味わいにリッチなコクをプラスしている。
メインの肉料理は、鮮度と火入れにこだわり
ボリューミーなメイン「仔羊背肉のペルシャード風 色彩豊かな小野菜添え エシャロットソース」(写真上)。
ペルシャードとは、パセリとニンニク、パン粉を混ぜたものだが、同店では、ニンニクをジャム状にして肉に塗り、その上から細かくしたパセリとパン粉をのせて焼いている。色とりどりの野菜と相まって、庭園のように鮮やかな一皿だ。
ソースは、エシャロット、白ワイン、エストラゴンにつけ込んだビネガー、フォンドヴォー、羊のだしで作ったソース。ほんのり酸味があるので、お肉をさっぱり食べられる。
完璧な火入れで美しいロゼ色をした肉は、さくっとかみ切れるやわらかさで、羊特有の臭みはまったくない。
「脂身にしっかり火入れをすると脂が抜けて、歯切れが良くなるんです。脂身への火入れが甘いと臭みにつながります。ジビエ料理でも大切にしていることです」と野口さん。
同店では、素材の鮮度に何よりもこだわっており、人気のジビエも同じく、新鮮さにこだわっている。
「肉を寝かすところもありますが、それでは、ジビエ特有の野性味が強くなります。新鮮なものを使うことで、ジビエに馴染みのない人でも食べやすくなりますし、内臓までしっかりソースや料理でお出しできます」(木村さん)
コースのフィナーレは爽やかに
コースの最後に登場するデザート「タルトシトロン、福島県産桃、パッションフルーツのアイスクリーム“夏の納涼”」(写真上)。
7品のコースは前菜もメインもしっかりボリュームがあるため、デザートは重くならないスイーツをそろえている。いずれも酸味を効かし、さっぱりした味わいでコースのフィナーレを締めくくってくれる。
しっかりしたソースの料理には、やはりワインを合わせたくなる。同店では、フランス産ワインのみ、なんと120種類ほど取りそろえている。品種もフランス国内の産地も多種多様。好みや料理にあったものを選んで、料理とのマリアージュを楽しみたい。
手間を惜しまない料理の数々が、訪れるファンの心を豊かにする
どの皿も端正なビジュアルどおり、細部にまでしっかり仕事を施したものばかりで、料理とソースのバランスも絶妙。
「そろそろ後進に道を譲らないと」と木村さんが語るが、まだまだベテランシェフと若手シェフとのタッグから生まれる料理を堪能したいと、多くのファンも願っているだろう。
今回はご紹介できなかったが、自慢のジビエ料理は、遠方からわざわざ食べに訪れる人もいるほどの評価も高い。食べやすいと評判のジビエもぜひ試してみたい。
【メニュー】
<ディナー>
・Aコース(サービスディナー・ご予約のみ) 4,300円
(アミューズ・オードヴル・魚料理 又は 肉料理・本日のデザート・コーヒー ・小菓子)
・Bコース 5,500円
(アミューズ・オードヴル盛り合わせ・本日のスープ・魚料理 又は 肉料理・本日のデザート・コーヒー・小菓子)
・Cコース 7,000円
(アミューズ・オードヴル ・本日のスープ・魚料理・お口直しのグラニテ・肉料理 ・本日のデザート・コーヒー・小菓子)
・スペシャルフルコース 10,000円
(アミューズ・オードヴル・スープ・魚料理・お口直しのグラニテ・肉料理・デザート・コーヒー・小菓子)
<ランチ>
・Aランチコース(サービスランチ) 2,200円
(オードヴル・スープ・メイン・デザート・コーヒー)
・Bランチコース 3,300円
(アミューズ・オードヴル・スープ・メイン・デザート・コーヒー)
・Cランチコース 5,000円
(シェフおまかせフルコース)
・スペシャルフルコース 7,000円
(厳選素材を用いたフルコース)
<ドリンク>
・グラスワイン 700円~
・ボトル 3,000円~
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税別、テーブルチャージ代別になります。
ビストロ グラン ソレーユ (Bistrot Grand Soleil)
- 電話番号
- 050-5487-4342
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- ランチ 11:00~15:00
(L.O.14:00)
ディナー 17:00~20:00
- 定休日
- 水曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。