毎日でも通いたい! 本格フレンチとほっこり焼き菓子の店
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「ステイホーム」のかけ声の下、注目されたのが“ご近所グルメ”。わざわざ遠方に出向かなくても、近隣にあるおいしい料理が身も心も満足させてくれる。そんな身近なビストロとして、2020年4月、三鷹にオープンしたのがフランス料理と焼き菓子の店『KUVAL(クバル)』だ。
シェフとパティシエールの夫婦二人が営む小さなビストロは、上質な料理と焼き菓子で早くも界隈に住む人たちの注目を集めている。
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JR中央線「三鷹」駅北口から徒歩9分。バスが行き交う通り沿いにある小さな構えの店が『KUVAL』だ。大きなガラス窓が開放的で、ふらりとのぞき込みたくなる。
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店の真ん中で、どっしりと存在感を放つのが、古材を使用した粗い木目を生かしたカウンター。窓際と奥の個室にテーブル席も用意されている。
シンプルな内装に木製の家具や棚がナチュラルな風合いで、新しいのにどこか懐かしい、ほっと落ち着く空間だ。
本場フランス修業の経験を持つ実力派の二人
フランス料理と焼き菓子の2大看板を掲げる『KUVAL』を切り盛りするのは、シェフの久原(くばる)将太さんとパティシエールの春香さん夫婦。二人とも都内の一流店でその実力を認められて、腕をふるってきた実力派。
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久原さん(写真上)は、都内の有名フランス料理店で修業した後、渡仏。フランスでは、プロヴァンス地方の風光明媚な場所として知られる小さな村、ボニューのオーベルジュで修業をした。
「フランスにしかない食材を見てみたいという想いが強かったです。本場の味を経験することで、そこからお客様に喜んでもらえる味にカスタマイズできると思うんです」(久原さん)
帰国後は、ジビエ料理で名高く、『ミシュランガイド東京』で一つ星を獲得している青山のフレンチ『LATURE(ラチュレ)』や、肉料理に定評のある目黒『Cellar Fete(セラフェ)』で活躍。奥様との結婚をきっかけに独立。長年暮らしてきた中央線沿線で店を開こうと、三鷹で開業した。
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パティシエールの春香さん(写真上)は、専門学校時代にフランス南西部にある町、ベルジュラックで研修を積んだ本格派。横浜にある大手洋菓子店に勤めた後、デザインの勉強をしようとスクールで学び、デザイン会社でも働いたという異色のキャリアを持つ。
「パティシエをずっとやっていくうえで、パッケージデザインとかお菓子の見せ方とかも学ぶ必要があると思ったんです」(春香さん)
その後、さらに経験を広げようと、広尾にあるモダンイタリアン『PONTE DEL PIATTO(ポンテ デル ピアット)』に入店し、アシェットデセール(皿盛りデザート)を担当。『KUVAL』では、手作りの焼き菓子と共に、得意のアシェットデセールも披露してくれる。
ベースとなる食材選びに徹底的にこだわり、旬のおいしさを届ける
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店名のロゴも春香さんのデザイン。グラスに見立てた「v」に、粒々が注がれるような配置が印象的。これは、シャンパンの泡のほか、塩や砂糖、小麦粉をイメージしたもので、料理の味や菓子の基本となる素材を大切にしたいという想いが込められている。
現在、メニューはアラカルトがメイン。ご近所さんが足繁く通っても飽きないように、毎日少しずつ内容を変えている。さっそく、ある日のメニューを紹介しよう。
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前菜「ジェットファームのアスパラのサラダ モッツァレラ」(写真上)は、『KUVAL』の食材へのこだわりがギュッと詰まった一皿。
『ジェットファーム』とは、北海道のアスパラガス専門農家。直送で届くアスパラガスをリボン状に薄くスライスし、塩とオリーブオイルで軽くマリネしたものを生でいただくのだが、シャキシャキの食感とみずみずしい甘さに驚かされる。
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モッツァレラチーズは、北海道で暮らすイタリア人のチーズ職人が作ったもので、卵は日野市の『由木農場』から取り寄せている。
シンプルな組み合わせに合わせるのが『ラチュレ』直伝のドレッシング。酸味がまろやかなドレッシングは、素材の甘さやミルキーさ、コクといった持ち味を存分に引き出している。心ゆくまで、食材のおいしさを堪能できる一品だ。
自家製コンソメの澄み切ったコクに技術の高さを感じる一品
魚料理で好評だという温かい前菜「甘鯛のパリパリ焼き、自家製コンソメスープ」(写真下)。
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▲写真は1人前。メニューのメイン、前菜は2人前。オーダーすると1人前でサーブされる
甘鯛のウロコを少し水に湿らせてから多めの油で焼くことで、身はふっくら、ウロコがパリパリに。この甘鯛に、牛から取った黄金色に澄んだコンソメスープを合わせている。
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コンソメは手間や時間がかかるうえ、濁りのない澄んだ色と味を実現するには技術も必要。同店では、肉のスペシャリストとして名高い『セラフェ』の齊田武シェフから教わったレシピを使用。料理で余った牛の部位を使って、効率よく取るのだそう。
「せっかくのおいしい食材ですから、余すところなく使いたいと思います。魚も、骨などからだしをひくんですよ」(久原さん)
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ウロコは気持ちよいくらいにサックサク! 牛ならではのコクのあるコンソメスープは、品良くふんわりした甘鯛の身にぴったりと合う。
噛むたびに肉汁がじんわり広がる、絶妙な火入れにうっとり
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この日のメインは「仔羊のロースト」(写真上)。
ラムのローストに赤ワインとフォンドヴォーのクラシックなソース、彩り豊かな旬の野菜が付け合わせされたボリューミーな一皿。
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肉のローストはシンプルな料理ゆえ、火入れが重要。
表面を強火でカリッと焼き付けて、皮の周辺部分は少し噛みごたえを残し、中心部分はやわらかく仕上げていく。火から降ろしたら、焼いた時間と同じ時間休ませ、中の肉汁を落ち着かせることで味わいがジューシーになる。
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味の決め手になるのが塩。肉の下味には全体に味が馴染みやすい粒子の細かい国産塩を。仕上げには、結晶粒の大きいイギリス産の塩をそれぞれ使い分けている。
「塩の持つミネラル分などが、野菜を茹でたり、肉をマリネしたりするときに味わいを深めてくれます。塩などの調味料選びは大事にしていますね」(久原さん)
まるでパフェのような満足感! いくつもの味わいや食感が層になったデザート
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旬を迎えたブドウの味わいを生かしたデザート「クレームダンジュ ぶどう ディル」(写真上)。
クレームダンジュとは、フランスのアンジュ地方のチーズケーキ。ヨーグルトとクリームチーズなど数種類のチーズをブレンドしたものにメレンゲを加え、フワフワの食べ心地がたまらない。
ブドウは藤稔(ふじみのり)と巨峰、クイーンニーナの3種類。ディルのグラニテを散らし、ハーブの爽快感のある香りで、甘いだけではない大人のデザートに仕上げている。
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器の底にブルーベリーのソースを敷き、クレームダンジュとブドウ、ブドウのソルベ、ディルのグラニテを重ね、さらにその間にクッキークランブルやシフォンケーキのクラムも忍ばせる。スプーンでひとすくいするごとに、様々な味わいや食感が顔をだし、まるでパフェを食べているかのよう。
「ちょっとだけ違うニュアンスのものを組み合わせる、例えば、スパイスや辛味、塩味とかを甘さの中に忍ばせるのが好きですね。このデザートはシャンパンにも合うんですよ」(春香さん)
甘いだけじゃない、重なり合う味の深みが春香さんの作るデザートの魅力の一つだ。
素材の風味を生かした、甘さ控えめの焼き菓子も人気
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『KUVAL』のもう一つの看板、焼き菓子。店に入ってすぐの棚には、常時12~13種類の焼き菓子が並べられている。焼き菓子の購入だけで訪れる人も多いのだとか。
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なかでも、クルミ入りヌガーをたっぷり使った「エンガディナー」(写真上・右)は人気商品。外側カリっと、内側しっとりの「朝焼きフィナンシェ」や、バニラが香る「シフォンケーキ」も好評だ。クッキーは1枚から買うことができるため、毎日のおやつに気軽に利用できる。
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こだわりは、料理と同じく砂糖や小麦粉などの基本となる素材。小麦粉は北海道産やフランス産を、砂糖はミネラル分の強いキビ砂糖をメインに使用。菓子の味わいに応じて、キャラメル感のある種子島産のキビ砂糖など産地の異なるものを使い分けている。
甘さ控えめなお菓子は、バターやドライフルーツ、スパイスなどの味わいが奥深い。
ワイン大好きシェフが厳選したワインも楽しみ
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『KUVAL』では、ワインにも注目したい。ウォークインタイプのセラーには、海外の自然派から国産のものまで、ワイン好きな久原シェフが厳選したワインが、天井までぎっしりと並んでいる。
「プロヴァンスにいた頃は、毎日のようにロゼを飲んでいたので、ロゼワインは充実しています。地域ですとアルザスが好きですし、ブドウの種類だとガメイが好きですね」とワインについて熱っぽく語る久原シェフ。
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自分が好きなワインだけでなく、飲み口がキレイな自然派ワインなど、産地やブランドにとらわれず自分たちの料理やお菓子に合うワインをラインナップしている。
「お客様に教えてもらって、ワインを仕入れることもあるんですよ」と久原シェフ。新しいワインとの出逢いも楽しめそうだ。
“手の届くご褒美フレンチ”で日常を豊かに
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2020年6月のイートインオープン後は、アラカルト中心の営業を続けてきたが、同年9月よりディナータイムのフルコースや週末のランチコースもスタート。オープン時期がコロナ過による自粛時期と重なってしまったが、徐々に二人が考えていた形を実現しつつある。
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「『大きな仕事を終えたから、今日は自分へのご褒美に来ました』とおっしゃるお客様もいらっしゃるんですよ」と嬉しそうな笑顔の春香さん。
ハイレベルな技術と素材への想いにあふれた料理は、身も心も癒やしてくれる最高のご褒美。寄り道する価値あり。ぜひ出掛けてみてはいかがだろう。
【メニュー】
・ジェットファームのアスパラのサラダ モッツァレラ 1,350円
・甘鯛のパリパリ焼き、自家製コンソメスープ 1,700円
・ラムのロースト 3,000円(約2人前)
・クレームダンジュ ぶどう ディル 1,100円
・グラスワイン 650円~
・ボトル 3,000円~
・エンガディナー 300円
・バターピーナッツのディアマン 35円/1枚
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税別です
撮影:小野千明
KUVAL(クバル)
- 電話番号
- 0422-27-7753
- 営業時間
- ランチ11:30~15:00(LO13:30)、ディナー18:00~23:00(LO22:00) ※水・木のランチテイクアウトのみ。金~日は3,800円コース(前日まで要予約)、ディナーは6,500円コース(前日まで要予約)とアラカルト
- 定休日
- 月曜日、不定休(SNSにて告知)
- 公式サイト
- https://www.kuval.store/
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