神楽坂の裏通り、住宅街の中にある本場さながらのトラットリア
東京メトロ東西線「神楽坂」駅の程近く。表通りから横道に入り、住宅街の中を歩いて行くと、ひょっこりと“イタリア”が現れる。2014年にオープンした『トラットリア・ラ・タルタルギーナ』だ。
「TRATTORIA」の大きな看板や太陽の絵柄のタイル。店の外にはイエローのクロスが掛けられたテーブルが並び、ワインや料理を楽しむ人たちで賑わっている。その光景は、さながらイタリアの街角そのもの。
1階(写真上・左)はカウンター席と奥にテーブル席、そして地階(同・右)にもテーブル席が並ぶ。内装には、ナポリ職人にオーダーメイドしたというランプシェードやイタリアで購入した絵画、手描きのタイル絵など、イタリアから直接取り寄せたものがふんだんに使われている。
料理だけでなく、イタリアの陽気なトラットリアを訪れているかのように楽しんでもらいたいというオーナーの想いが隅々にまで感じられる。
南イタリアに惚れ込んだ実力派シェフ
このイタリア情緒いっぱいの店を営むのは、オーナーシェフ濱崎泰輔さん(写真上)。
イタリア料理の楽しさに惹かれて、20代で和食からイタリア料理へと転向。都内のイタリア料理店を経て、当時まだ珍しかったイタリア、プーリア州料理の第一人者、江部敏史シェフ(現在、南青山『リストランテ コルテジーア』シェフ)の下で研鑽を積んだ。その後、本場でしかできないことを学ぼうとイタリア・プーリア州に渡り、1年間みっちり、現地のレストランで学んだ。
帰国後は、銀座の『イゾラブル』の料理長を務めるなど活躍。2014年に独立し、『トラットリア・ラ・タルタルギーナ』をオープン。ちなみに、住宅街ど真ん中の立地は、濱崎さんの実家を改装しての由縁だそうだ。
自然の恵みを楽しむ、本場イタリアのスタイルを再現
プーリア州修業を終えた後も、長年日本とイタリアを往き来しながらシチリアやカラブリア州などの南イタリア料理を学んできた濱崎シェフ。
「豊かな自然の恵みそのままを楽しむのがイタリア料理のスタイル。プーリア州は小麦とオリーブオイルの生産量がイタリアでもNo.1なんですよ。いわば、イタリア料理の食糧庫。その地で習ってきたことを、できるだけ再現して届けようと思っています」(濱崎シェフ)
日本在住のイタリア人も太鼓判を押す味わいを、さっそく紹介しよう。
イタリア陶器にたっぷり盛られた、鮮やかな前菜からスタート
まずは肉や魚、野菜がバランスよく盛られた「本日の前菜盛り合わせ」(写真上・1人前)。
この日は全6種類。上から反時計回りに「パルマ産生ハム」、「白ナスのグリルマリネ」、「シイラのカルパッチョ」、「カボチャの冷前菜」「野菜のフリット2種」そして、中央が「ブッラータチーズのカプレーゼ」。
「カボチャの冷前菜」(写真上・左)は、ペーストにしたカボチャにレーズンとマスカルポーネチーズを混ぜたもので、「野菜のフリット」(同・右)は、レンコンとサツマイモにナポリ風の衣(小麦粉と水に酵母を混ぜて発酵させた衣)を付けて揚げている。
フレッシュチーズに寄り添うミニトマトの酸味がここちよい、「ブッラータチーズのカプレーゼ」(写真上・中央)。ブッラータチーズとは、モッツァレラチーズの中に生クリームを包んだ、プーリア州の名産チーズ。カットすると流れ出す、生クリームの濃厚でミルキーな味わいにうっとり…。
いずれも素朴なほどにシンプルで優しい味付け。魚や野菜、それぞれが持つシャキシャキやホクホクといった食感を際立たせ、滋味豊かなうまみに思わず顔がほころぶ。
自慢のパスタには、トッピングにもソースにもウニがたっぷり!
ひとくち食べれば、「うまい!」の声が自然に上がる「スパゲティ 生ウニのバーリ風」(写真上)。バーリとは、プーリア州の首都の名前で、魚介料理が有名だ。
存在感抜群のパスタは、カリスマ製麺所として有名な『浅草開化楼』の「低加水パスタフレスカ」。モチモチ感と歯切れの良さ、噛みしめるとにじみ出る小麦の甘さは、他のパスタではなかなか味わえない。
そんなパスタに、上質な国産ウニを惜しげもなくたっぷりトッピング。トマトソースにもウニを混ぜ込んでいるので、トマトの爽やかさとウニの濃厚な味わいを存分に味わえる贅沢なパスタだ。
ふわふわサクサク! 鮮魚のフリットは甘酸っぱい野菜ソースがアクセント
魚料理なら、北海道天塩町から直送される鮮魚の料理を楽しみたい。この日のおすすめは「鱈のフリット」(写真上)。
前菜でも紹介したナポリ風の衣を付けて揚げている。タラは身がふんわりやわらかく、品の良い甘みが魅力。天ぷらよりも軽いサックサク食感の衣が、風味をより際立たせてくれる。
衣の表面にふりかけられているのは、サルデーニャ島のカラスミ。下に敷いてあるのは、甘酸っぱい野菜ソースのアグロドルチェ。ニンジンとタマネギを飴色になるまで炒め、塩やビネガーで味付けしている。野菜の甘さがソース代わりになり、淡泊なタラの身との相性は抜群。
この料理目当てで訪れるお客も多数! プーリア名物の肉料理「ボンベッテ」は必食
『タルタルギーナ』を初めて訪れた人のほとんどが頼むという「オリヴィアポークとモッツァレラチーズのボンベッテ」(写真上)。プーリア州の伝統料理で、豚の薄切り肉でモッツァレラチーズを巻き、パン粉を付けてオーブンで焼く。
「オリヴィアポーク」とは、オリーブを使った飼料で育てられたブランド豚。豚肉なのに脂のサシが入っていて、肉質がやわらかく脂身が甘いのが特徴。
アッツアツの肉を切ると、中から溶けたモッツァレラチーズがとろ~り。目の細かいパン粉がカリカリと香ばしく、ミルキーなチーズと肉のうまみはまさに黄金の組み合わせ。この料理目当てに、遠方から訪れるお客がいるのも納得のおいしさだ。
本場仕込み! ディナータイム限定のナポリピッツァも人気
『タルタルギーナ』では、特注した高温の電気窯で焼くピッツァ(写真上)も大人気。
元々、イタリア修業で本場のナポリピッツァも学びたいと考えていた濱崎シェフ。修業先のプーリア料理のレストランの上階がナポリピッツァの店であると知り、すぐに頼み込み、ナポリ出身の店主から本場のレシピを学んだ。
当時の教えを忠実に守り、生地の材料は小麦粉、水、酵母、塩のみ。高温で焼き上げ、表面はパリッと中はモッチリ、本場さながらのナポリピッツァが味わえる。
ピッツァがいただけるのはディナータイムのみ。人気メニューなので、予約の際には一言添えるのがいいだろう。
注目度上昇中の「プーリアワイン」も楽しみたい
ワインは、北イタリアの代表的な銘柄も置いているが、やはり料理に合わせて、南イタリアのワインを楽しみたい。
近頃、評価が上昇しているプーリアワインの赤や白、シチリアワインのロゼなどもそろっている。濱崎シェフ自らが訪れたサルデーニャ島のワイナリーのワインもあり、それぞれグラスで楽しむこともできる。
豊かなイタリアの食卓を味わいに出掛けよう
「いい生産者と知り合うのも私たちの大切な仕事です」ときっぱりと語る濱崎シェフ。良い素材を手に入れるために、日本のみならずイタリアにまで生産者に会いに行くという。
「上質な食材を、質の良いオリーブオイルと塩で仕上げるのがイタリアで習ってきた調理方法。その食材のおいしさで記憶に残る料理になればいいと思います」(濱崎シェフ)
濱崎シェフが心に刻んだ豊かなイタリアの食卓が、『タルタルギーナ』の料理の原点。そのままの“イタリア”を味わいに、ぜひ出掛けてみよう。
【メニュー】
・本日の前菜盛り合わせ 1,300円
(※内容により値段が変わることがあります)
・スパゲティ 生ウニのバーリ風 2,300円
・北海道天塩町直送 鱈のフリット 2,900円
・プーリア名物 オリヴィアポークとモッツァレラチーズのボンベッテ 2.900円
・グラスワイン(スパーリング2種、赤、白は3種類、ロゼは1種類)700円~
・ボトルワイン 4,200円~
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です
トラットリア ラ タルタルギーナ
- 電話番号
- 050-5486-7175
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 月~金
ディナー 17:30~24:00
(L.O.23:30)
土
ランチ 12:00~15:00
(L.O.14:00)
ディナー 17:30~24:00
(L.O.23:30)
日・祝日
ランチ 12:00~15:00
(L.O.14:00)
ディナー 17:30~22:30
(L.O.22:00)
- 定休日
- 無
※平日のランチはお休み(ディナーより営業いたします)
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。