スイーツマニアの夢、デセールだけのコースが味わえる店
銀座コリドー街の裏に位置する、有楽町駅から新橋駅へと続く高架下に2020年開業した新商業施設「日比谷OKUROJI(オクロジ)」。築100年を超える赤れんがのアーチを生かした空間に個性的でハイセンスなお店が集まり、大人が楽しめる新たなトレンドスポットとなっている。
中でも注目度が高いのが、2020年11月1日オープンした『Patisserie PAROLA(パティスリー・パロラ)』(写真上)。フランス人シェフパティシエ、アレクシ・パロラさんが目の前で仕上げる3種のスペシャルデセールとペアリングドリンクが楽しめる「デセールコース」が今、スイーツマニアの間で話題を集めているのだ。
大理石のカウンターに10席。デセールの最後の仕上げはカウンターで行われるので、すべての席がシェフズ・テーブルだ。
目の前で仕上げるスタイルは、鉄板焼きカルチャーとの融合
『Patisserie PAROLA』シェフパティシエのアレクシ・パロラさんは、フランスのブルターニュ地方出身。生家がチーズ農場を営んでいて、新鮮な乳製品で作る自家製スイーツに親しんでいたことから製菓に興味を抱くようになり、パティシエの道へ。人気ブランド「ストウブ」のレストラン『Le Theatre(ル・テアトル)』シェフパティシエを経て、ベルリン、スコットランドなどで料理と製菓を研鑽。料理人仲間に誘われて2016年に来日し、日本の食品、とくにフルーツに魅了され、「自分の理想とするデセールを日本のフルーツで作りたい」という想いを抱くようになる。
そんなパロラさんが出逢ったのが、高級鉄板焼きチェーン店を運営する「株式会社テン・スターズ・ダイニング」代表の吉田雅己さん。コース料理の差別化のためにデセール(デザート)のクオリティを高めたいと考えていた吉田さんは、パロラさんを同社の統括パティシエとして迎え入れる。パロラさんが手がけた、同社の旗艦店である『TEPPANYAKI 10』(銀座/渋谷)のワゴンサービスのデセールが評判を呼び、自身の名を冠した初のカフェ『Patisserie PAROLA』をオープンすることになった。
お客様と対面し、一緒に料理を作りあげていくのはまさに、鉄板焼きスタイル。日本で出逢った鉄板焼きというフードカルチャーと宝石のようなフルーツ、自身のルーツである乳製品を使ったデセールを融合させたスタイルが、「PAROLAのプレート・デセール・コース」なのだ。
【第1のデセール】 瞬間凍結したフルーツが口の中で華やかに弾ける「スパークリングゼリー」
最初のデセールは、液体窒素で瞬間凍結させたフルーツが入ったグラスへ、スパークリングワインを注いでいただく「スパークリングゼリー」(写真上)。
グラスの底に、やっと形になるほどのゆるさのハイビスカスゼリーを入れ、洋梨、ブルーベリー、スライスしたレッドグローブ(ブドウ)を入れていく(写真上・左)。その横で、マイナス200℃の液体窒素を入れたボウルにフランボワーズを入れる(同・右)。目の前で沸騰しているように沸き立つフランボワーズに、目が釘付けになる。
凍結したフランボワーズをグラスに入れ、上からペアリング用のスパークリングワインを注いで完成だ(写真上)。
凍結したフランボワーズは、ソルベのような食感。フランボワーズの酸味と冷たさ、スパークリングワインの泡とアルコール、さまざまな刺激が口の中で弾ける。それをやわらげるのが、フルーツの甘さと、とろけるようなやわらかさのハイビスカスゼリー。大人の贅沢なフルーツポンチといった趣きだ。
【第2のデセール】 レモンを割ると、中からレモンのフレーバーがあふれ出す! 「レモンのスペシャリテ」
続いては、「レモンのスペシャリテ」(写真上)。レモンそのものに見えるが、表面はホワイトチョコレート。一つひとつ手作りで造形しているため、1日にほんの少ししか作れないそう。
ナイフで軽く押しただけでパリン! と小気味よく割れる。皮と果肉の間に見える綿のようなものは、レモンのムース。たちまちミントのジュレ、レモンの果肉があふれ出す(写真上)。外側のホワイトチョコレートは卵の殻ほどの繊細な薄さ。これほど薄い殻に、こうした繊細なフィリングをどうやって閉じ込めたのか…、その技に感動。
とろとろのフィリングをスプーンで口に流し込むと、目が覚めるように鮮烈なレモンの香りと酸味! フレンチのデセールは、酸味も甘みもはっきり際立たせているのが特徴だが、こちらはレモン好きの人にはたまらないだろう。ペアリングのドリンクは、濃い甘みとともにほのかな酸味を感じる、白ワイン。爽やかな酸味が弾けるデセールと、まろやかな甘みが広がるワインを交互に味わうと、さらにおいしさが響き合って増幅。デセールもワインも止まらなくなる。
ノンアルコールのドリンクは、レモングラスとモリンガ(ワサビノキ科の植物)、生姜、ハチミツをブレンドした冷たいオリジナルハーブティー。こちらも相性は抜群だ。
【第3のデセール】 旬のフルーツと、香り高いグラスフェッドミルクの生クリームの「パフェ」!
最後のデセールは、旬のフルーツを使ったパフェ(写真上)。
グラスの底にルバーブのコンポートを敷き、いちごソース、ジェノワーズ(イタリア風のスポンジ生地)、ピスタチオババロア、ピスタチオを重ねて土台を作る(写真上・左)。その上に岩手県『しあわせ牧場』の「グラスフェッドミルク」(大自然のなかで牧草だけを食べさせて育った牛からとれるミルク)の生クリームをたっぷり重ねる(同・右)。こちらの生クリームは、チーズ農家育ちで乳製品に強いこだわりを持つパロラさんが、子供の頃に飲んだミルクの味わいを日本で求めて探し当てたこもの。季節によって食べる草の成分が異なるため乳脂肪分も変化し、乳脂肪分40%以上になることもあるのだとか。
旬の最上のものを求めて頻繁に品種を変えるイチゴ、グラスフェットミルクの生クリームを使用した自家製イチゴアイス、自家製バニラアイス、ベイリーズ(アイリッシュウイスキーをベースとしたクリーム系リキュール)を加えたエスプレッソのアイスクリームを重ねていく。味のアクセントとなるよう、イチゴアイスクリームにはあえて鮮烈な酸味を残し、エスプレッソアイスクリームはコーヒーとウイスキーの濃厚な香りを強調している。
最後に、アーモンドのチュイール、ピスタチオのマカロン、香り付けにバジルの葉の砂糖漬けとバジルの葉のパウダーをトッピングして完成。
ひと口食べるごとに異なる食感、味わいの劇的な変化があり、パンチが強いのに不思議なバランスで調和している。だが圧倒的に強い印象を残すのは、生クリームと、自家製アイスクリーム。コクがあるのに軽く、甘やかなミルクの香りが口の中にずっと残る。
そしてコーヒーか紅茶か花茶でコースは終了。目の前で華麗なショーを見せられたような興奮がなかなか覚めやらず、自宅では絶対に食べられない、外食の喜びの真髄を感じる。パロラさんは「対面でしか作れないデセールを、もっと進化させていきたい。お客さま一人ひとりに合わせて、その人のためだけのデセールを作っていきたい」と語る。
ペアリングは、アルコールとノンアルコールの組み合わせが自由
デセールとのペアリングドリンクが楽しめることも、このコースの特徴。ペアリングは、アルコールとノンアルコールを自由に組み合わせることができる。ノンアルコールのペアリングができる店も増えているが、組み合わせが自由というのは稀少だ。
ペアリングのドリンク(写真上)。左から、1品目のスパークリングワインとノンアルコールスパークリングワイン、2品目のワイン。
隠し玉は、グラスフェッドミルクとボルディエバターで作るカヌレ
華麗なマジックのようなデセールに目を奪われてしまうが、見逃せないのが、店内で焼き上げているカヌレ。パロラさんの熱意が実り、故郷であるブルターニュ地方の老舗バターブランド「ボルディエ」との日本初のコラボレーションを実現させた逸品だ。
ボルディエバターは、ノルマンディー地方のミネラル豊富な牧草を食べて育った乳牛の新鮮なミルクのみを使用しており、なめらかな口あたりと芳醇な香りが特徴。こちらの「ボリディエバター」と、しあわせ牧場の「グラスフェッドミルク」をふんだんに使って、毎朝店内で焼き上げている。
焼きたてと、焼いた翌日に食べてみたが、翌日のほうがより強くバターの風味を感じる。カヌレの中でバターの香りが開花したような変化で、「どうしてもこのバターでなければ」というパロラさんの気持ちが伝わった。
【メニュー】
PAROLAのプレート・デセール・コース 3,800円
※3種類のデセール(スパークリングゼリー、レモンのスペシャリテ、フルーツデセール)と3種類のペアリングドリンクのコース
カヌレセット 500円
カヌレ 300円(テイクアウト)
撮影: 佐々木雅久
Pâtisserie PAROLA(パティスリー・パロラ)
- 電話番号
- 03-6807-5622
- 営業時間
- 12:00~20:00(L.O.19:00)
- 定休日
- 無休 ※不定休あり、HPで要確認
- 公式サイト
- https://parola.tokyo/
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。