二子玉川の一軒家レストランで、ランチ&テイクアウトを楽しみたい!
緊急事態宣言中のディナータイムの営業時間短縮に悩む飲食店が多いなか、ランチコースやテイクアウトを充実させることで常連の心をしっかりつかんでいる店もある。2018年に二子玉川にオープンした『naturam kazuya sugiura(ナチュラム カズヤ スギウラ)』もそのひとつだ。
東急大井町線・田園都市線の二子玉川駅から徒歩7分、商業施設「二子玉川ライズ」裏手の住宅街。遠くからも目立つ雰囲気のある洋館で、建物をびっしり覆うアイビーが目印だ。
木の床や木枠の窓、ストーブの炎がホッとする温かさを感じさせる空間。一軒家レストランならではの広さと天井の高さがあり、天井の一部は吹き抜けになっているため、換気のよさは抜群。
テーブルの間隔が離れているうえ、現在は1卓おきにしか座れないようにしているので、安心して食事が楽しめる。
目指しているのは、日本人としての強みを生かした、自分だけのフレンチ
シェフの杉浦和哉さんがフレンチの魅力に目覚めたのは、高校時代にアルバイトしていたレストラン。フランスでの修業経験のあるシェフの話に「フレンチには一生をかけて深く学ぶ価値がある!」と直感し、21歳で単身渡仏。運よくブルターニュ地方や南フランスのレストランで働くことができたが、同僚たちとの会話で自分がフレンチ以前に、日本の食文化や食材について何も知らないことを痛感したという。
帰国後、一からフレンチを学びなおすために『ルヴェソンヴェール東京』(本郷)に入店し、伊藤文影シェフに師事。同・中目黒店で3年間、シェフを務めた後、満を持して再び渡仏した。そこで目にしたのは、フランス料理界で成功をおさめている多くの日本人シェフの姿だった。「なぜ日本人が、フランス人シェフに伍して戦えるのか」を考え、「日本人としての強みを持っているからだ」と気づいた杉浦シェフは、「日本人が表現する、自分にしか作れないフランス料理」を追求したいと考えるようになる。
帰国後、現在の店の前身である『MARKT(マルクト)』のシェフに就任。2018年、自身の店『naturam kazuya sugiura』をオープンした。「多くの人にもっと気軽に本格的なフレンチを知ってもらいたい」との想いから、“入りやすい店作り”を重視していると語る。
▲「肩肘はらずに食べて欲しい」という想いから、あえてテーブルクロスはかけないスタイルにしている
「本格フレンチを、若い人にも気軽に楽しんでほしい」…その想いがこもったランチコース
“入りやすさ”の象徴ともいえるのが、ランチコースだ。同店のディナーコースはおまかせの8皿で構成されているが、ランチコースでは3皿と4皿から、手軽な価格でそのエッセンスが味わえる。メニューは日によって変わるが、取材当日の4皿コースは以下のとおり。
熱々のバゲットは、麦の若葉を敷いた紙袋でサーブされる。
【前菜】
「真鯖の赤酢〆マリネ/アボカド/ハーブのサラダ/ピンクグレープフルーツ」(写真上)。旬の脂ののった真サバをマリネしてから、皮に香ばしく焼き目をつけて焼きあげ、アボカドムース、ハーブのサラダを添えている。まるでアート作品のように色鮮やかで、胸がときめく一皿だ。
ピンク色のソースはグレープフルーツ果汁にビーツのピュレを加えたもの。トッピングに散らしたピンクグレープフルーツの粒のフルーティな酸味っも、脂ののった真サバのうまみを引き立てている。鮮やかな緑色のソースは、 “ハーブティーの女王”と呼ばれ芳醇な香りが特徴のベルベーヌというハーブを使った自家製オイル。
【メインの魚料理】
「金目鯛のポワレ/春菊のピュレ/桃のすけ蕪のローストとサラダ/ヴィネグレットヴィアンド」(写真上)。
桃のような色の果肉と甘味で人気が高まっている「桃のすけ蕪」のロースト(写真上)は、丸ごと低温で1時間ほどかけてじっくり焼いたことで濃縮された甘みが、ヴィネグレットヴィアンド(肉のだしを加えたヴィネグレットソース)によく合う。創造的でサステナブルな野菜料理を提供する世界のベストレストラン・ランキング「Top 100 Best Vegetables Restaurants」の 2020年版で選ばれている杉浦シェフの面目約如の一皿だ。
旬のアサリのだしをしのばせた春菊のピュレには、ほろ苦さと繊細なうまみがあり、金目鯛にぴったり。
【メインの肉料理】
「大山鶏もも肉のグリル/“ピペラード”パプリカとトマト/アロマポテト/椎茸/ケールのエキューム」(写真上)。
「エキューム」とは、フランス語で「泡」。ケールのピュレの泡仕立てにも、ケールの葉のローストにも、「ケールってこんなに甘みの強い野菜だったのか」と驚かされる。さらに肉厚で跳ね返すような噛みごたえのシイタケ、薄皮にたまらない香ばしさと心地よいほろ苦さがあるジャガイモなど、野菜の未知なる魅力に圧倒される一皿だ。
【デザート】
「苺のソルベ/フロマージュブランのムース/宮崎産ローゼルのスープ」(写真上)。
赤いスープと半透明の飴細工には、宮崎県産のハイビスカスの一種・ローゼルを使用。さっぱりした自然な甘みが、フルーツを引き立てている。
魚や肉、野菜の調理法には和食のような素材そのもので勝負する思いきりのよさが、ソースにはフレンチ特有の膨らみ、奥行きが感じられる。そのふたつが溶け合い、「無類のアート好き」という杉浦シェフの美的感覚が加わったのが、独自のイノベーティブ・フレンチなのだろう。
ランチコースのドリンクも、ペアリングできる!
レストランならではの楽しみが、ドリンクとのペアリング。同店ではランチコースでもスパークリングワイン2杯からペアリング可能で、ノンアルコールも選択できる。
ディナーコースでのペアリングでは、ワインやスパークリングワインとともに日本酒(写真上・左)も提供。日本酒好きな人には、料理に合わせて日本酒だけのペアリングも可能とのこと。
店の世界観ごと、自宅でも味わえる、スペシャルなテイクアウト!
『naturam kazuya sugiura』のテイクアウトの特徴は、単品売りをせず、自宅でもフルコースが楽しめる8品の「naturam フレンチセット」のみにしていること。店での盛り付けのまま自宅で味わえるよう、テイクアウト用の器もそのままテーブルに出せるクオリティのものを使用している。
「naturam フレンチセット」(写真上)。左側の器は「海老とアボカドのカクテル」「山形豚のリエットと有機野菜ピクルス」「パルマ産生ハムとミラノサラミ」、中央の器は「ヤリイカのピペラード(野菜の煮込み)」「ミートパイ」「牛頬肉の赤ワイン煮込み」、右の器は「鯖サンド」「クレームドショコラとベリー」。
杉浦シェフがテイクアウトを始めたのは、最初の緊急事態宣言発出に先立つ2020年の4月。ヨーロッパの仲間たちの情報から「大きく世界が変わる」ことを予感し、いち早く取り組んだ。また、「この状況は長く続く」と見て、ずっとテイクアウトを販売し続けた。そのおかげで現在は、テイクアウトに多くのリピーターがついているとのこと。
クリスマスや年末年始、成人式などのイベントに向けたスペシャルセットも、予約が殺到したそうだ。「お客様は、単に料理だけを味わいに来ているわけではありません。雰囲気や世界観も含めて味わって、元気になってもらいたい」(杉浦シェフ)。そこでテイクアウトでも、「自宅では作れない料理」を、「店のイメージとクオリティそのままに」味わってもらえることを重視しているのだ。
「レストランには、そこでしか味わえない料理と、そこでしか味わえない幸福感がある」。そのことを改めて、心の底から実感させてくれる店だ。
【メニュー】
<ランチコース>
前菜+メイン1皿+デザート+café 3,200円
前菜+メイン2皿+デザート+café 4,200円
<ドリンク>
スパークリングワイン (グラス)1,000円
<ペアリング(ランチタイム)>
スパークリングワイン 2glass 2,700円~
<テイクアウト>
naturam フレンチセット( 8品) お一人様4,000円 ※2名様より、要予約
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税抜込みです。
※店舗情報については変更することがございますので、店舗にご連絡ください。
naturam kazuya sugiura
- 電話番号
- 050-5486-3781
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- ランチ 11:30~15:00
(L.O.13:30)
ディナー 18:00~22:00
(L.O.20:00)
- 定休日
- 水曜日
第2火曜日、第4火曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。