オシャレな空間でジビエを気軽に楽しむ
ジビエでフランス料理というと、かしこまったレストランでいただくイメージだが、カフェのようなオシャレな内装で気軽に楽しめるビストロが、2020年12月、目黒にオープンした。
鹿肉専門のビストロ『鹿とパンとワイン Bistro STAGMAN(以下ビストロ スタッグマン)』だ。ジビエの中でも食べやすいと評判の鹿肉をメインとし、ワインにもぴったり合う自家製パンが食べ放題とあって、早くも話題を集めている。
JR山手線・目黒駅から権之助坂を下って10分ほど。別名「インテリアストリート」と呼ばれる目黒通りに面したビルの2階に店がある。通りからも見える大きな鹿のロゴマークが目印だ。
店内の壁や天井一面に塗られた印象的なブルーは、藍染めの色。デニムのブルーにも似たファッショナブルなカラーと、木目の茶色の組み合わせが、スタイリッシュな雰囲気の中にも温かみを感じさせてくれる。
鹿肉のおいしさに魅せられた実力派シェフ
シェフを務める子安 毅(たけし)さんは、都内のカフェ数店舗で料理人のみならずパティシエとしても長年活躍してきた実力派。武蔵小山の人気オステリア『レオンビアンコ』でシェフとして腕を振るった後、以前からあたためていたアイデアを実現すべく、『ビストロ スタッグマン』をオープンした。
もともとフレンチのシェフから料理を学んだ子安シェフ。いつかはフレンチの店がやりたいという想いが強かったという。どんなレストランを開こうかと考えるうちに行き着いたのが、鹿肉の魅力を伝えるビストロを作ることだった。
「カフェやイタリアンで鹿肉を扱うことがあり、料理をしていくうちに、すっかり魅了されました。鹿肉は、害獣扱いで廃棄されることも多いんですよ。馴染みがないという人にも、そのおいしさを伝えていきたいですね」と、子安シェフは鹿肉への熱い想いを話してくれる。
肉好きならたまらない!濃い旨みがつまった鹿肉
鹿肉の魅力を尋ねてみると、おいしさだけではなさそうだ。
「あっさりしているけれど、うまみが強いんです。脂肪分もほとんどない赤身肉で、野山を駆けて育つため、鹿肉自身にも自然の恵みが詰まっていて、ヘルシーなお肉なんです」
臭みがなく、味のいいジビエ肉は、捕獲する猟師の腕前と、下処理の過程で決まる。同店では、こだわりの鹿肉は北海道産のエゾシカを中心に使用しており、信頼のおける業者から一頭買いで仕入れている。
ギュッと詰まった鹿肉の濃いうまみがたまらない
メニューはアラカルトが主体。旬の食材を使った黒板メニューもあるが、注目は何といっても、ズラリと並んだ鹿肉料理。前菜やメインから〆まで豊富にラインナップしている。
そのうちのひとつ、アーモンドと削ったコンテチーズをまぶした鹿肉のリエットが人気の「STAGMAN’S(スタッグマンズ) リエット」。煮込みや加工に向いているウデ肉や、肉をカットしたときに出る端材などをホロッとなるまで煮込んでペースト状にしている。
よりおいしく仕上げるため、こちらのリエットで使用する鹿肉は調理前に必ず酒や香味野菜などで肉をマリネしているのだとか。
また鹿肉は脂肪分が少ないため、豚の脂身も加え、口当たりをなめらかに。味付けは塩コショウのみとシンプル。ときおりプチっとはじけるスパイシーな粒黒コショウが、鹿肉の濃いうまみを引き立てている。
豚肉のリエットより肉肉しい味わいに誘われ、赤ワインに伸びる手が止まらなくなる一品だ。
鹿肉の部位を食べ比べ! ボリューミーな肉の盛り合わせは必食
初めて訪れた人が必ずオーダーするという「STAGMAN’S declinaison(スタッグマンズ デクリネゾン) 鹿肉の盛り合わせ」。お皿の上には、ロース肉、フィレ肉、ランプ肉のローストと、シェフお手製のシャルキュトリー類(写真奥)がふんだんに! 異なる部位を食べ比べられる、専門店ならではのごきげんな一皿だ。
「鹿肉を一番おいしく食べる調理は、ローストだと思います」(子安シェフ)。部位それぞれに合わせて火入れされた肉は、いずれも身質がきめ細やかで、ナイフがスッと入るやわらかさだ。
鹿肉の中ではめずらしく脂身がのった骨付きロース肉、鹿肉で一番おいしいとされる繊細なフィレ肉、香りが強くうまみも濃いランプ肉。色味から牛の赤身肉を思わせるが、いずれもやわらかく味わいも上品だ。それぞれの異なるおいしさに、鹿肉の魅力の奥深さを感じる。
自家製シャルキュトリーはパテとソーセージの2種類。パテは、鶏レバーやフォアグラでしっとり加減とうまみをさらにプラス。ミンチにした肉と大きめにカットした肉を混ぜることで、しっとりとした中にゴロゴロとした食感に。添えてあるリンゴとポートワインを煮詰めた甘いソースとの相性も抜群だ。
ソーセージには、なんと山椒をしのばせている。爽やかな辛味が、肉肉しいプレートの中で口をリフレッシュさせてくれる。
やみつきになるおいしさ! ピリッとスパイシーな鹿肉カレー
こちらは、食事の〆にもぴったりな「鹿肉のドライカレー」(写真上)。ボリューム満点な料理でお腹がいっぱいならハーフサイズも用意してもらえる。
バラ肉やウデ肉、モモ肉などさまざまな部位を手切りでミンチした肉の食感がなんとも小気味いい。肉のボリュームたっぷりで、まるで煮込んだ肉料理を食べているよう。カルダモンなどのスパイスを強めにきかせたカレーは、香り高くピリッとスパイシーで、肉のうまみと相まって、クセになるおいしさだ。
甘い香りと濃厚なチョコレートの味わいにうっとり
パティシエとしても活躍した子安シェフのセンス高いデザートも見逃せない。
「カカオまみれのテリーヌ=ド=ショコラ」(写真上)は、フワッと芳醇な甘い香りにうっとり。テリーヌ=ド=ショコラは、チョコレートと卵、バター、生クリームなどをシンプルに合わせたチョコレートケーキ。チョコレートをストレートに味わえるのが魅力だ。
『ビストロ スタッグマン』では、ナッツの香りがするチョコレートをベースにしたケーキに、バニラのような香りのトンカ豆で香り付けしたチョレコートを削って、たっぷりまぶしている。さらに、香ばしさと苦味のあるカカオニブもトッピング。ワインにも合う、華やかな香りをまとった大人のデザートだ。
小麦香るパンは鹿肉料理のベストパートナー
『ビストロ スタッグマン』の料理に欠かせないのが、自家製パンだ。用意されているのは、パン=ド=ミ、リュスティック、パン=ド=カンパーニュ(写真左から順)の3種類。チャージ料300円を払えば、食べ放題なのがうれしい。
また、毎日焼いているパンは、パンのみの購入も可能。店で食べて、気に入って買っていく人も多いという。
修業時代から作り続けていたというパンは、食事に合う本格的なハード系。小麦の香りにこだわり、粉は全粒粉をブレンドしたものを使用。生地の水分量を多めにし、オーバーナイト製法と呼ばれる方法で、一晩じっくり発酵させている。
焼き上がったパンは、皮が薄くカリッと香ばしい。内側のふんわりもっちりした食べ心地がたまらない。フワッと小麦が香る素朴なパンは、滋味深い味わいの鹿肉にぴったり。小麦の味わいも豊かでワインと合わせて、“パン飲み”でも楽しめそうだ。
鹿肉の味わいを引き立てる赤ワインをラインナップ
ワインは、フランス産をメインに、産地の特徴や生産者の想いが伝わるようなものを選んで、そろえている。圧倒的に人気なのが、赤ワインなのだとか。
「鹿肉には、多少タンニンの渋みを感じつつ、果実感があり、後味がすっきりしたものが合いますね」と子安シェフ。グラスワインは白、赤合わせて10種類。多彩な料理に合わせて楽しみたい。
レストランクオリティの料理を身近に
「店のコンセプトは“身近なレストラン”。鹿肉をもっと身近に感じてもらいたいですし、レストランクオリティの料理を気取らずに楽しんでいただければと思います」と店への想いを語る子安シェフ。将来は、北海道だけでなく、日本全国あちこちの鹿肉の食べ比べなどもしていきたいという。
鹿肉以外にも野菜たっぷりのメニューやシェフがアイデアを凝らした料理も充実。自家製パンを使ったサンドイッチや鹿肉ローストの盛り合わせなど、『ビストロ スタッグマン』ならではのテイクアウトも大好評だとか。
ぜひ鹿肉専門店でジビエの新たな楽しみを発見してみてはいかがだろう。
【メニュー】
STAGMAN’S リエット 620円
STAGMAN’S declinaison 鹿肉の盛り合わせ 2,730円
鹿肉のドライカレー 1,620円
カカオまみれのテリーヌ=ド=ショコラ 770円
リュスティック 130円
パン=ド=カンパーニュ 380円
パン=ド=ミ 690円
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込みです。
※店舗情報については、社会情勢上、変更になる可能性がございますので、ご確認ください。
鹿とパンとワイン Bistro STAGMAN(ビストロ スタッグマン)
- 電話番号
- 03-6303-0609
- 営業時間
- 平日、土日祝日11:30~14:30(L.O.13:45)、17:30~22:30(L.O.21:30) ※営業時間に関しては、変更される可能性もあります。店舗にお問い合わせください。
- 定休日
- 月曜、他不定休
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。