非日常へと誘う扉は、恵比寿の住宅地に佇む白亜の邸宅にあった
東京砂漠を生き抜く大人には、時として心を癒すための安息が必要だ。もし都会の暮らしに疲れたり、ちょっぴり心がささくれてしまったら、紫色の扉が目印の白亜の邸宅を訪ねてほしい。
恵比寿駅ガーデンプレイス口から徒歩3分ほどの場所にあるとは思えない、おとぎの国のような世界が広がっているから。
チャーミングな紫色の扉を開けると目に飛び込んでくるのは、色とりどりの草花や果物が描かれ「welcome」という文字が記された白いプレート。
そして白を基調とした店内。随所にドライフラワーが飾られ、壁にはモネの絵画をディスプレイ。どこか南フランスのオーベルジュのような、都会の喧騒を忘れさせる静かな時間が流れている。
ここは2021年4月にアフタヌーンティー専門店としてオープンした『Atelier plein EBISU(アトリエ プラン エビス)』。『Bistro plein(プラン)OMOTESANDO』や『Bistro plein AZABU』などを運営する「pleinグループ」の新業態だ。
そしてこの場所は、藤木千夏シェフが腕を振るった『Restaurant Umi(レストラン・ウミ)』の跡地でもあり、その頃の名残も感じられる。
星野リゾート出身のシェフパティシエがおもてなし
この店で来る人を柔和な笑顔で出迎えてくれるのが、シェフパティシエの田村史奈さん。
製菓学校卒業後、株式会社星野リゾートへ新卒入社し、軽井沢ホテルブレストンコートにて8年間パティシエとしての技術研鑽を経て、同ホテルチーフパティシエに就任。日本洋菓子工業会主催の全国アシェットデセール・コンテストで3位入賞しその後、山梨のパティスリーを経験。次の職を探していた時、星野リゾート時代の同期だった「pleinグループ」代表の中尾太一氏に「アフタヌーンティー専門店のシェフパティシエをやらないか」と声をかけられた。
それまで大型ホテルでたくさんの人々にスイーツを提供してきた田村さんは、席数の少ないお店でスイーツを提供してみたいという想いもあった。また「アフタヌーンティーは言わばケーキ屋さんのショーケースを全部ちょっとずつ食べられるイメージ。作り手としてもさまざまなことが表現できるのが魅力に感じました」と同店のコンセプトに共感した。
そして決め手となったのは、この白亜の一軒家。「いつか自分のお店を開きたいと店のイメージを絵に描いて膨らませていたのですが、それがこの一軒家と同じ紫色の扉。この扉の前に立ってお客様をお見送りすることもしっくりきたんです」と運命的なものを感じたと話す。
ヴェリーヌやオペラなど、一つひとつ丁寧に手作りされたスイーツを盛り込んだアフタヌーンティー
同店で提供されるアフタヌーンティーは、ノンアルコールドリンクがフリーフローとなる通常のアフタヌーンティーと、下段に『Bistro plein』のシャルキュトリーを充実させたワインと楽しむアフタヌーンティーの2種用意されている。
スイーツはすべてお店で手作りし、セイボリーは『Bistro plein』のシェフが考案したものを使用。長野出身で実家が元々リンゴ農家だったという田村さんは「どうやって農作物ができていて、何と何を合わせたらおいしいか、ということを発信するのが生産者の方への感謝だと思っています」と話し、長野県産や前職で付き合いのあった山梨県産の旬食材を使うことにこだわっている。
上段は「ヴェリーヌ」「あふれるバターサンド」「カシスムース」「フランボワーズのギモーヴ」「マンディアン」「抹茶のフィナンシェ」がラインナップ。
立派なグラスに盛られたヴェリーヌは、下から苺のソース、チョコレートムース、抹茶のムースを重ね、スポンジのジェノワーズを入れている。器の側面には美しくスライスした苺を並べ、その中にバラの香りのジュレを入れ、最後に生の苺丸ごとと飴細工をトッピングしている。食べ飽きないように上の方はさっぱりと、下の方はしっかりとした味わいになるよう味のグラデーションを意識している。
ヴェリーヌ同様、冷たいうちに食べて欲しいというのが、あふれるバターサンド。バタークリームとクッキーの一体感を意識しており、クッキー生地に卵黄を多めに入れ、風味よくしっとりとした食感になるよう仕上げている。また重たいイメージのあるバターサンドには、村全体で柚子作りをしているという山梨県日出づる里の柚子をジャムにして混ぜ込み、軽さを表現。柚子の風味や酸味をしっかりと感じられるようなバターサンドになっている。
カシスムースは、はっきりとした味わいのカシスを生クリームの滑らかさと酸味のきいたヨーグルトで食べやすい味わいに仕上げ、飾りとしてブルーベリーをトッピング。
ギモーヴも、桜など春の淡いピンクをイメージしフランボワーズ味に仕立てている。
フィナンシェはジュワッとした口当たりを楽しめるよう、たっぷりの焦がしバターと、抹茶、ホワイトチョコレートを使って焼き上げて、ナッツをトッピング。
ひと口サイズのマンディアンは、コーヒーや赤ワインに合うようドライフルーツとチョコレートを取り入れている。
中段の「オペラ」もバタークリームが大好きだという田村さんの一押し。コーヒーとチョコレートという2つのガナッシュをサンドしたオペラは、小さくても満足感を得られるよう濃厚な味わいに。全体としてのバランスを意識し、生地の焼き加減やバタークリームの立て方など、作る際のタイミングも細かく配慮したという。
苺と生クリームの帽子をかぶっている可愛らしい「シュー・ア・ラ・クレーム」は、中にカスタードクリームを入れている。紫色のメレンゲでチョコレートのカスタードクリームをサンドし、苺をトッピングしているのは「ビテール」。シャンティークリームがトッピングされた「スフレチーズケーキ」には、出身地・長野県産のレモン汁とレモンの皮を入れて爽やかな味わいに。
砂糖がまぶされて甘そうなイメージの「パート・ド・フリュイ」にも、たっぷりのレモンを入れており、酸味がきいた口直しにもぴったりな一品になっている。
下段には「紅茶とプレーンの焼き立てスコーン」が2種。どちらも全粒粉のためカリカリとした食感が楽しい。苺ジャムとクロテッドクリームをたっぷりつけていただきたい。
パテは奥左側のピンク色のほうが「信濃地鶏のパテドカンパーニュ」で、手前右側が「黒豚のパテドカンパーニュ」。そしてバケットのように見えるのが「ポークリエットのシュー・サレ」で、生地のエクレア部分にはナツメグや黒胡椒、チーズを入れてワインに合うよう焼き上げている。
フリーフローとなるティーやハーブティーは、独自のブレンドに定評がある紅茶卸の『葉楽』のものを使用。早摘みの「ダージリンティー」や定番の「アールグレイ」はもちろん、カカオニブを配合したチョコレートの香りがする「グリュエ・ド・ショコラ」や、レモンを加えると青色から紫色へと変化するバタフライピーを使った「ピュアブルーマジックティー」など、彩り鮮やかなドリンクを取り揃えている。
アルコールもフリーフロー! ビストロ仕立てのシャルキュトリーをワインと楽しむアフタヌーンティーも
ワインと楽しむアフタヌーンティーでは、上段と中段の内容は同じものの、下段のスコーンの代わりに『Bistro plein』のシャルキュトリーが追加される。
「ポークリエットのシュー・サレ」「黒豚のパテドカンパーニュ」「信濃地鶏のパテドカンパーニュ」に加え、豚肉を使った「ブルーチーズのパテ」に、生ハムの「ハモンセラーノ」、イタリア産の「ブレザオラ」と呼ばれる牛肉の生ハム、イタリア産「ミラノサラミ」と盛りだくさんだ。
さらにスパークリングワイン、白ワイン、赤ワイン、ミモザ、ティフィンレモンソーダ、リンゴのスプリッツァー、エルダーフラワーのスパークリングなどアルコールもフリーフロー。「お菓子と相性の良い、甘過ぎずさっぱりとした味わいで、彩りが美しいことを条件にグループのソムリエ、石井啓章(さん)がセレクトしました」。チョコレートやフルーツに合うやわらかい印象のアルコールがアフタヌーンティーをより一層盛り上げる。
ちなみにアフタヌーンティーの前にはアミューズが、あとにはデザートとしてソルベも登場。アミューズの際にはちょっとしたサプライズもあるようなのでお楽しみに。
都会の真ん中にありながら、ゆったりとした時間が流れ、真摯に作られたスイーツとアルコールを心ゆくまで楽しめる『Atelier plein EBISU』。アフタヌーンティーをこれ以上なく楽しめる大人のための空間がここにある。
【メニュー】
Afternoon tea 5,000円
ワインと楽しむ Afternoon tea 7,000円
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格はすべて税込です。
Atelier plein EBISU(アトリエ プラン エビス)
- 電話番号
- 03-5795-2588
- 営業時間
- 11:30~17:30(第一部 11:30 or 12:00 スタート、第二部 15:00 or 15:30 スタート)
- 定休日
- 月曜・火曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。