大注目! イタリア郷土のスイーツ専門店が新富町にオープン
ビルが並ぶ街並みの中でひときわ目立つ、真っ白い小さな店。イタリア郷土のお菓子専門店として、2021年1月にオープンした『Litus(リートゥス)』だ。
日本では、なかなかお目にかかれないスイーツ専門店とあって、オープン以来、早くもスイーツ好きの注目を集めている。
真っ白い空間は、まるで南イタリアの小さなケーキショップ
東京地下鉄メトロ有楽町線「新富町」駅を降り、ビルの間の道を抜けていくと、ショップが目の前に現れる。イタリア・シチリア島の形をした看板が目印だ。
店名の『リートゥス』は、ラテン語で“渚”という意味。真っ白な壁と、ブルーとイエローのカラフルなタイルの看板、しっくいに小石を埋め込んだカウンター。店内に一歩足を踏み入れると、バカンスに南イタリアのケーキショップを訪ねたかのような気分になる。
カウンターの上に並べられたガラスの器やタイルの上には、コロンとした形が愛らしいお菓子がズラリ。
ケーキショップでよく見かける冷凍のショーケースはない。作り置きせずに、オーダーを受けてから最後の仕上げをするのが『リートゥス』のスタイル。フレッシュなおいしさをいつでも楽しめる。
名店で修業し、ベストパティシエ賞受賞歴もある実力派パティシエール
オーナーを務める塩月紗織さんは、フランス料理店『ミクニ マルノウチ』パティシエ部門でキャリアをスタート。その後、イタリア料理店でデザートを任されるようになる。
「当時は、イタリアのスイーツと言えば、ティラミスやパンナコッタぐらいで、それ以外のお菓子は、ほとんど知られていませんでした。本場を見てみようと思って、イタリアに行くことを決めたんです」と塩月さん。
シチリアや、ロンバルディア、トレンティーノでそれぞれの地方の郷土菓子を研鑽。7年間、お菓子作りを学びつつ、ミシュラン星付きレストランなどで活躍。イタリアのグルメ専門誌が選ぶベスト・パティシエ賞を受賞するほど、本場でもその実力を認められた。
帰国後は、『スターバックス コーヒー』とコラボレーションしているイタリアンベーカリー『プリンチ』に入り、惣菜やスイーツのレシピ開発などを担当した。
「日本にはまだ紹介されていない、素朴なイタリアのお菓子がたくさんあります。そういったお菓子をたくさんの人たちに届けたいと思い、お店を作りました。」と『リートゥス』オープンに込めた想いを、塩月さんは語ってくれる。
シンプルで素朴なおいしさがイタリア菓子の魅力
イタリア郷土菓子の魅力を尋ねると、「素朴さと無骨さでしょうか。フランス菓子のような華やかさはないんですけど、素材の良さが際立つお菓子が多いと思います」と塩月さん。
『リートゥス』では、塩月さんが修業した南イタリアと北イタリアのお菓子を中心に、定番と季節限定のお菓子、焼き菓子などが10種類以上並ぶ。
まあるい素朴な形に、クリームのふんわりした甘さ。ひと口食べれば、じんわり幸せな気分になる。そんな魅力の詰まったお菓子を紹介しよう。
ザックザク食感とふんわりクリームのコントラストがたまらない!
お店を開くなら、このお菓子は外せないと思ったという、シチリアを代表する郷土菓子「カンノーリ」(写真上)。
ラテン語の“小さな筒(カンナ)”が語源と言われているとおり、筒状の型に小麦粉ベースの生地を巻き付けて、油で揚げ、筒の中にクリームを詰めたお菓子だ。
『リートゥス』の「カンノーリ」は、まず皮に注目。シェフこだわりの台形の型で作るため、通常のカンノーリよりサイズが大きめ。ゴツゴツとワイルドな気泡がいっぱいの皮は、クリスピー感が抜群だ。この食感にこだわるため、生地に卵は使っていないのだとか。
クリームは、イタリア産リコッタチーズを使用。リコッタチーズは、低脂肪でさっぱりした味わいのものが多いが、コクにこだわって厳選。コクがありながらも、ほのかな酸味のあるクリームは、後味がスッキリ!
トッピングは、シチリア産の中でも最高級と言われる、ブロンテ産ピスタチオを使用。シンプルでありながら、上質な材料へのこだわりが、忘れられないおいしさとなっている。
オーダー後に、クリームを詰めてくれるので、ザックザクとした豪快な食感をキープ。ミルキーでコクのあるクリームとのコントラストがたまらないおいしさだ。
香ばしい揚げ生地と甘いクリームに夢中!イタリア版揚げドーナツ
塩月さんも大好きだという「ボンボローニ」(写真上)。小麦粉や卵、牛乳で作った生地をイーストで膨らませて揚げ、クリームを詰めた、いわばイタリア版揚げドーナツ。地域によって、ボンボローネとも呼ばれている。バールなどで朝食代わりに食べられる、イタリア人が大好きな菓子パンのひとつだ。同店では、大小2つのサイズを用意している。
こちらも、オーダー後にクリームを詰めてくれる。クリームは、カスタードとリコッタチーズの2種類。このほか、季節ごとにチョコレートやあんずジャムといったフィリングも登場する。
カスタードクリームは、「特別なことはしていないんですよ」と塩月さんは語るが、「おいしすぎる!」と訪れた人に大好評。コンスターチを使い、手早く炊き上げるようにしているというクリームは、なめらかさが秀逸で、スルリと軽い。シンプルなお菓子だからこそ、シェフの技術が光る。
▲クリームを詰めた「ボンボローニ」
ふかふかした生地は、きめが細かく、ふんわりした口どけ。軽やかな風味のひまわり油を使っているため、揚げ菓子のしつこさもない。
口の周りが砂糖だらけになるのを気にせずかぶりつこう。香ばしい揚げ生地と、なめらかなクリームのハーモニーを味わえば、なんともいえない口福感に満たされる。
ナッツの香ばしさとあんずジャムの甘酸っぱさにハマる
イタリア時代に覚えた大事なレシピで作った「トルタクレモナ」(写真上)。タルト生地の底にあんずジャムをたっぷり敷き、アーモンドとヘーゼルナッツのパウダーをミックスしたフィリングを詰め、上から再びジャムを塗り、タルト生地を格子状で覆っている。
サクッと軽快な歯ごたえのタルト生地に、ちょっとホクホクした、しっとり感のあるフィリングがたっぷり。素朴な味わいの中に、あんずジャムの甘酸っぱさが絶妙にきいている。発売以来、人気で、これをお目当てに訪れる人がいるのも納得のおいしさだ。
ミモザの花をイメージしたカラフルなデザート
『リートゥス』には、定番にプラスして、季節限定のメニューもある。「ミモザ」(写真上)もそのひとつ。イタリアでは、毎年3月8日の国際女性デーの日に男性から女性にミモザの花束を贈るのが習慣になっている。そのミモザにちなんだケーキだ。四角く刻んだスポンジ生地をミモザの花に見立てている。
スポンジ生地にマスカルポーネクリームをはさんだ伝統的な形から、初夏らしく、涼しげなカップスタイルにアレンジ。
マスカルポーネクリームの間に挟まれているのは、レモンクリーム。コクのある甘さのマスカルポーネと、酸味をしっかりきかせたレモンクリームのコントラストで、さわやかなお菓子に仕上がっている。
手土産にもぴったり! 焼き菓子いろいろ
カウンター横の棚には、ポレンタ粉(トウモロコシの粉)やドライフルーツを使ったクッキーなど、日本ではあまり知られていない焼き菓子が並ぶ。ドライフルーツを使ったクッキーは、ワインのお供にと買っていく人もいるそうだ。
『リートゥス』では、いろんな種類の焼き菓子を箱詰めにしたギフトボックスの対応も可能。めずらしいイタリア伝統菓子は、喜ばれること間違いなしだ。
イタリアのエッセンスと日本の上質素材から生まれる魅惑のイタリア菓子
南イタリアの郷土菓子は、バターの代わりにラードを使い、特産のアーモンドやピスタチオをたっぷり使ったものが多く、他方、北イタリアのお菓子はバターたっぷりで、パネットーネに代表されるような発酵菓子もたくさん種類があるという。
南北に長いイタリアは、個性的なお菓子のバリエーションも豊富。現在、新たな発酵菓子をもっと紹介したいと、試作の真っ最中だとか。
「イタリアで食べたものを、そのまま日本でやろうとすると、なかなか難しいですね。日本には、いい生産者の方もたくさんいらっしゃいます。日本のものも使って、自分がイタリアで学んだエッセンスと合わせて、お菓子を作っていきたいなと思っています」(塩月さん)
これからの季節、イタリアのバールのように、エスプレッソとお菓子をサクッと楽しめるように、店先にハイテーブルを置くことを計画中。
まだまだ知らない魅惑のイタリア菓子に出逢える予感がいっぱいの『リートゥス』。新しいイタリア菓子を食べに出掛けてみてはいかが?
【メニュー】
カンノーリ 800円
ボンボローニ 530円大/300円小
トルテクレモナ 700円
ミモザ 600円
焼き菓子各種 390円/1個~
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。価格は税込みです
Litus(リートゥス)
- 電話番号
- 03-6275-2797
- 営業時間
- 11:00~18:00
- 定休日
- 水曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。