沖縄発のカレー店が新橋に進出、早くも話題沸騰
2021年2月に沖縄にオープンし、独特なスタイルで早々に人気を集めているカレー専門店『curry cafe喜多川 Okinawa』。その2号店が、早くも東京・新橋に進出した。それが、2021年5月13日にオープンした新橋駅南口エリアに『TOKYO SPICE 新橋本店』(以下『東京スパイス』)だ。
JR新橋駅南口エリアの柳通りに置かれた、情報量の少ないミステリアスな看板。矢印方向の路地に入ると、地下に続く間口の狭い入口がある。中の様子がわからず少し入りにくい雰囲気だが、階段を降りると…。
そこは壁も床も天上もコンクリート打ちっぱなしの空間で、ミスマッチな天然木の椅子とテーブルが置かれたカフェ風のスタイリッシュな雰囲気が漂う。入口右手には、バーのようなカウンター席もある。庶民的なカレー店の多い新橋には珍しい。
店長の北川洋さんは、元ウェブデザイナーという異色の経歴。知り合いがカレー店を開く時に、ホームページや販促用のPOPのデザインを依頼され、オープン時に店を手伝ううちにどんどん深入りしていったという。
「工夫するのが好きなので、自分が『こうしたらもっとおいしくなるはず』と思ってアレンジをしていたら、その創作カレーがなぜか評判が良くて(笑)。面白くてどんどんハマっていき、気が付いたらこっちが本職になっていました。ウェブデザインの仕事をしていた時もそうでしたが、人が気づいていない組み合わせを考えるのが根っから好きなんです」(北川さん)。
フードメニューはカレー3種類+サラダ1種類と、超シンプル
沖縄の本店では7種類のカレーを提供しているが、『東京スパイス』新橋店ではその中から3種類を厳選して提供している。
炒めた豚バラ肉とキャベツ、卵を具材にした「ポークスパイス」、ベーコン、キャベツ、卵の「ベーコンスパイス」、キャベツをほうれん草に変更でき、トマトと卵の「トマトスパイス」。それぞれ、「プレーン」「梅」「チョコレート」「生クリーム」で味変可能。スープのサイズとライスのサイズはそれぞれ4種類から選べる。
カレー以外のメニューはコールスローサラダ1種類のみと、かなりストイックな印象を受ける。
辛さは「0」から「5」まで。「5」は「1」の80倍の辛さ!
辛さのレベルは「0」から「5」まであり、4以上はプラス100円。北川さんによると、0が普通の「中辛」くらいなので、辛いのが苦手な人はまずは0から始めるのが無難とのこと。ちなみに「1」を基準にすると、「2」は2倍、「3」は7.5倍、「4」は20倍、「5」はなんと80倍の辛さになる。北川さんは辛さに強いほうだが、「3」くらいがちょうどおいしく感じるそう。
初めて店を訪れる人におすすめなのが「ポークスパイス」(写真上)。驚くのはその独特のビジュアル。具は軽く炒めたキャベツと豚バラ肉、そしてスクランブルエッグ。欧風カレーでもスパイスカレーでもないこのスタイルが同店のカレーの特徴でもある。
ライスは色鮮やかなサフランライスで、レーズンが3粒乗っている。
カレーソースはサラサラで、一見、スパイスカレーのようだが、味わいはうまみが強く非常にマイルド。最初に野菜の甘み、だしのうまみを強く感じ、後から少しずつ加速度的に、スパイスの刺激が強くなってくる。時々、不意打ちで鳴るシンバルのように、存在を主張するスパイスもあって、とても面白い。
辛さレベル「0」でも、決してマイルドではなく、むしろかなりスパイシー。とはいえ、辛さに弱い人が「辛い!」と言いながらも楽しめるスパイシー感だ。
カレーの中の肉はしっかり煮込まれていてトロトロになっていることが多いが、この軽く炒めただけの豚バラ肉の食感も小気味よい。
半熟のスクランブルエッグはコクがあることで有名な茨城県産「奥久慈卵」を使用。だしのうまみの強いカレースープとの相性が非常にいい。
インド風のスパイスカレーほどスパイスの主張が強くなく、欧風カレーにしてはとろみがなく、家庭風のカレーにはないパンチと深みがある。カテゴライズに困るカレーだが、キャベツ、卵、豚肉という親しみやすい具と、うまみのきいたカレーソースとの相性はバツグン。ユニークで個性的でありながら、誰の舌にも寄り添える包容力を感じるカレーだ。
3種類のカレーは注文後の調理で味が変化する
ベースはうまみの強いどんこシイタケ、昆布などでとった和風のだし。そこに飴色になるまで炒めたタマネギ、数種類の国産野菜、インドのスパイスメーカーから取り寄せている14種類以上のスパイスを加えて煮込んだものがカレースープの基本となる。スパイスは和風のだしに合う独自のブレンドにしていて、隠し味に沖縄産の黒糖を少量、加えている。小麦粉を使っていないので、グルテンフリーなのも特徴のひとつだ。
3種類のカレーすべてにこのカレーソースを使用しているが、注文を受けてからフライパンで軽く炒めて具を調理しているため、その具によって味わいがはっきりと違ってくる。
「ベースのスープがあって、たれの味でカスタマイズするラーメンの作り方と同じ工程なんです。主張しすぎないカレースープなので、具によってガラリと味わいが変わるんですよ」(北川さん)。
「ポークスパイス」の食べやすさの理由は、豚肉から溶けだした甘み。誰にでも好まれる風味なので、最初は「ポークスパイス」から試すのがおすすめだそうだ。
「ベーコンスパイス」はワイルドに、「トマトスパイス」はフルーティーに激変!
こちらは「トマトスパイス」(写真上左)と、「ベーコンスパイス」(同右)。
「ベーコンスパイス」(写真上)は、見た目は「ポークスパイス」とほとんど変わらないが、ベーコンの塩気とスモーキーなうまみが加わり、その結果スパイス感がより強く感じられる。「ポークスパイス」の家庭的なやさしい味わいがぎゅっと締まって、一層ワイルドになったイメージ。
直前にフライパンで調理した具を合わせるだけで、特別な調味料も加えず、煮込みもせず、これほど味わいが変化するとは驚きだ。
「トマトスパイス」(写真上)は予想どおり、フルーティーな甘みが加わり、これもまた劇的に味が変わる。キャベツをほうれん草に変えているため、具とカレースープの一体感も強くなっている。ほうれん草もトマトもスクランブルエッグとの相性が抜群なので、このカレーを食べる時にはぜひトッピングのスクランブルエッグを増量することをおすすめする(+200円)。
さらに「味変フレーバー」で驚きの変化が
具材でこれだけカレースープの味が変わることに驚くが、梅やチョコレートの「味変フレーバー」でさらに劇的に変わるそうだ。
北川さんのおすすめは、「ポークスパイス」+梅のフレーバー。
「豚の脂をさっぱりさせてくれますし、別のうまみが加わるので、味に厚みが出るんですよ」(北川さん)。
もう少し味にパンチが欲しい時はチョコレートをプラスすると、コクが深まる。辛すぎてマイルドにしたい時には生クリーム。生クリームを加えると不思議とエスニックな味わいになるので、エスニック好きな人にも生クリームを試して欲しいそうだ(+100円)。
どのフレーバーも具材を調理する時にいっしょに加えるので、注文時にどれかひとつに決めなければならないが、どれも全部試したくなる。
唯一のサイドメニュー「コールスローサラダ」は酸味が少なく食べやすい味。大き目のカットでキャベツの食感も楽しめる。1月から4月までは、沖縄の自社農園直送のキャベツを使用する予定だ。
7~8月には、丹精こめた島ラッキョウの甘酢漬けが登場!
気になるのが、カウンターの上に置かれた大きなラッキョウ漬けの瓶。聞けば、こちらの店を運営している沖縄の農業生産法人『美らハルサー』で植え付けから収穫、漬け込みまで行った完全無農薬の島ラッキョウだという。取材時はまだ熟成中で、7月中旬から後半くらいに店で提供する予定とのこと。
「沖縄の島ラッキョウのおいしさを知って欲しくて、皮をむいて、1本1本ひげ根を取るのも全部スタッフでやりました。本当に大変でした…」と北川さん。
左は上白糖を使用したさっぱり風味の甘酢漬け、右は沖縄産の甘みの強い黒糖で揉みこんで香ばしさを出した甘酢漬け。どちらも梅酢と昆布水をブレンドした漬け汁に漬けている。
一般的なラッキョウより小ぶりだが、熟成途中のものを試食すると、香りとピリリとした辛みが強いワイルドな味わい。この香りだけでもお酒が進みそう。熟成が進むと辛みは和らぎ独特の風味が増すとのこと。
新橋のサラリーマンを、カレーで元気にしたい
北川さんが目指しているのは、「新橋のサラリーマンを元気にするカレー」。北川さん自身も、毎日カレーを食べるようになってから、ぐんぐん体調がよくなったのを実感しているし、スタッフも少しくらい体調が悪くても、店のカレーを食べると元気になるのを見てきているそうだ。
「カレーは食べる漢方薬といいますし、うちのカレースープはグルテンフリー。野菜も新鮮なものばかり使っています。毎日食べに来てもらっても飽きられないように、これからも味の工夫をしていきたいですね」(北川さん)。
【メニュー】
ポークスパイス 1,000円
ベーコンスパイス 1,000円
トマトスパイス 1,000円
コールスローサラダ 200円
島ラッキョウ甘酢漬け ※価格未定
TOKYO SPICE 新橋本店
- 電話番号
- 03-6770-8605
- 営業時間
- 11:00〜20:00(L.O.19:30)
- 定休日
- 日曜・祝日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。