『MATAKANA(マタカナ)』のアクセス方法をネット検索すると、ニュージーランド行きのルートを案内されて驚く。実際は、地下鉄・麻布十番駅からほど近い場所にあるのだが……。
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それもそのはず、“MANAKANA”とはニュージーランドの街の名前なのだ。そこは、オークランドから北へ1時間ほどの絵に描いたような美しい街。
気候風土がフランス・ボルドー地方と似ていて、世界屈指のワイン「プロヴィダンス」の産地としても知られるワインの生産地だ。マオリ語では「野生的」「自然のまま」を意味するMATAKANA。
さあ、現地の風土が育む食文化にたっぷりと浸るひと時を!
ニュージーランドの豊かな自然が育む食材を満喫
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店内は地階ながら天井が高く広々。外気が流れ採光があふれるテラス席のほか、数人〜10人まで利用可能な個室も用意する。左手奥には、エグゼクティブシェフの岡野孝明さんが調理する様子が見通せるオープンキッチンがある。
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レンガに囲まれた炭火の焼き場はガラス張りになっていて、ジューシーな香りが音と共に漂う。
メニューは、さっと用意できる「スターター」、「ディップ」、「前菜」、「メイン」、「デザート」で構成される。ほとんどのメニューにも何かしらニュージーランド(NZ)産の食材を使っているのが『MATANAKA』のスタンス。
2人以上での来店なら、あれこれオーダーしてシェアしながら楽しみたい。もちろんおひとり様でもカウンター席があるので、気軽に1品と1杯からオッケーだ。
ニュージーランドの食文化を体験しよう!
カウンター端にある水槽を覗くと、ムール貝に似た貝が水中に揺れている。きれいなグリーンの殻を持つ「グリーンマッセル」(写真下)だ。NZから生きたまま空輸で届く。
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現地では、「とりあえずこれ食べて!」と登場する馴染みあるシーフード。『MATAKANA』でも蒸しあげて貝の塩味だけで味わうシンプルな前菜「NZ産活グリーンマッセルのスチーム」(写真下)から始めてみて。
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両手を使ってパカっと開けて、あとはフォークで取り出す。頬張って噛み締めると濃厚なエキスがジュワッと広がる。白ワインとの相性は言うまでもないだろう。
うっすらと白濁したスープも貝の身と同様に滋味深い。飲み干そうかなと思っているところに、「このスープを使ったリゾットもおすすめです。メイン料理の後、締めにリゾットをお作りできますよ」と、店長の坂本さんのホスピタリティーあふれる提案が。迷わずお願いするべし!
NZ産のサーモンをつまみながら、乾杯
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前菜のおすすめ「キングサーモンのタルタル サツマイモ サワークリーム」(写真上)には、NZ産のキングサーモンを使う。細かく叩いたサーモンのサイズに合わせて、サツマイモ、ナッツを合わせるのが『MATAKANA』スタイル。
口に含むと時折感じるサツマイモの甘みや、ナッツの食感を楽しみたい。ソースはオニオンピューレ、仕上げにたらしたアボカドオイルのフレッシュな風味が、全体をまとめている。
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やはりワインが進んでしまう。
NZ産のラムで作る世界の羊料理を楽しもう。スペイン編はこれ!
『MATAKANA』のチャレンジであり唯一無二の醍醐味は、NZ産のラムで作る世界の羊料理だ。クロアチア料理の「スタッフドピーマン」、イタリア料理の「串焼き“アロスティチーニ”」や「ミラネーゼ(ミラノ風カツレツ)」を味わえる。
メニューは定期的に入れ替わるので、ラム料理でめぐる世界旅行は、今後も広がり続ける。
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岡野シェフが仕上げにかかったのは「スペイン風骨付きラムシャンクの煮込み」(写真上)。
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スプリングラムのスネ部分を、トマト、野菜、豆とともに煮込むスペインの伝統料理だ。1時間以上煮込んだスネ肉は、ナイフを入れるとほろほろ〜。しかし、しっかり運動をしていただろう筋肉は弾力に富み、歯ごたえも十分残っている。
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ボリュームに驚いていると、「骨が立派で食べるところは少しですよ」と坂本さんは言うが、なんのなんの、食べごたえ十二分。これから登場するメインを前に、ちょっとオーダーし過ぎたかなと不安になる……。
ラム肉は絶対食べて! がんばる身体へのご褒美にも
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メインは、看板メニューの1つ「ラムラック 炭火焼き」(写真上)だ。ラムラックとは骨付きリブロースのこと(これを1本ずつ切り分けたものがラムチョップ)で、取材時は南半球の春(9月〜11月)に生まれた「スプリングラム」を使っているが、今後は「ホゲット」のラムラックが登場する。
「ホゲット」とは1〜2歳の未経産の雌羊のこと。ニュージーランドの牧場を訪ねて、純血サフォーク種の「ホゲット」を届けてもらえるよう契約を交わしている。他種が交配されていない純血サフォーク種は最高品質の肉質を誇る“肉の王様”的存在だ。
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こちらの大きな皿、シンプルに焼き上げたラムラック、クミンパウダーを散らし、周囲にはタスマニア産のマスタード「ペッパーコーン」、ゴボウのピューレ、パセリ、契約農家『大島農園』の旬野菜が取り囲み、自由に味変を楽しみながら、ゆっくり味わいたい。
ラムラックは、引き締まっているのに、ふんわりとやわらかく口溶けが滑らかな肉質で、スペイン風煮込みのラムシャンクとはまったく違う印象。羊肉の世界の奥深さに魅了されてしまう。
見た目のボリュームに圧倒され、こんなにたくさん食べられるかと不安が募ったが、あっという間に食べ進み、皿に残るのは骨だけ。きっと食べながら燃焼しているのだろう、たくさん食べても軽い、軽い。この食後の心地良さこそラム肉の魅力で、ラム人気上昇の理由を実感する。
ワインはニュージーランド産だけ
店内中央には今日開栓しているワインボトルが冷えている。グラスは赤・白合わせて9種類ほどあり、「お客さまのお好みをうかがって開栓することも」と店長の坂本芳文さん。スタッフ皆がワイン好きで、ニュージーランドワインについての知識が豊富。ワインのことも気軽にどんどん質問したい。
ご存じの通り、ニュージーランドは、北島と南島にわかれ、他国にはない気候風土に恵まれている。「これまでソービニヨンブランやメルローがブドウ品種の中心でしたが、最近はアロマティックな他のブドウも多品種栽培されていて、これからどんどんおもしろくなるでしょう」と、坂本さん。
日本から移住してワインを手掛けている日本人生産者は9人もいる。『MATAKANA』には内3人の生産者のワインがそろうので、興味のある人はぜひリクエストしてほしい。
レンタルワインセラーも用意して、より身近なレストランに
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坂本さんセレクトの5本(写真上)は、日本にあまり入荷しないめずらしい銘柄ばかり。冒頭で説明したカルトワイン「プロヴィダンス」(35,000円)は、左から2本目だ。
「ニュージーランドのワインは、1年熟成の若いものが多いのですが、熟成してもきっとおいしいだろうなと思うものと出逢うことがあって、うちで熟成させています」(坂本さん)。ワインセラーには力を入れていて、今後は常連客の大切なワインを預かる「レンタルワインセラー」も立ち上げる。
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「とにかくラム料理とワインでゆっくり過ごしていただきたくて」と、坂本さん(写真上・右)と岡野さん(同・左)。心ゆくまで食べて飲んで、大いに語らい笑って過ごす。ここには南半球の楽園、ニュージーランドの時間が流れているよう。
束の間、忙しい日常を忘れて逃避したい。地下鉄で行ける東京・東麻布の『MATAKANA』へ!
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【メニュー】
<週末ブランチ>
コース 3,200円
<ディナー>
NZ産キングサーモンのタルタル サツマイモ サワークリーム 1,600円
NZ産活グリーンマッセルのスチーム 2,200円
スペイン風骨付きラムシャンクの煮込み 3,500円
スプリングラムラック 炭火焼き 3,200円
グラスワイン 1,000円〜
ボトルワイン 5,500円〜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。また、価格は税込です。
MATAKANA New Zealand Lumb&Wine
- 電話番号
- 03-6277-8467
- 営業時間
- 平日ディナー 17:30〜L.O.20:30、土・日ランチ 11:30〜L.O.14:00、土曜ディナー 17:30〜L.O.20:30、日曜ディナー 17:30〜L.O.20:00(平日ランチはテイクアウトとデリバリーのみ)
- 定休日
- 月曜
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。