「ジビエ料理が持つストーリーは、人の“心”のエネルギーになる」
農山漁村における過疎化や高齢化による耕作放棄地の増加に伴い、野生鳥獣による農林水産業等への被害が全国的に深刻化している。農林水産省の調査では、2019年度(令和元年度)の農作物被害額は約158億円にものぼるとか…。
その実態について、農林水産省 農村振興局鳥獣対策・農村環境課 鳥獣対策室室長の仙波(せんば)徹氏(写真上)が報告。さらに「ジビエ料理の拡大は、2つの意味で地域を元気にします」と、その狙いを解説する。
ひとつは鳥獣が人間と共存できるように、個体数を減らせること。もうひとつはその命を無駄にせずおいしくいただくことで、地域の人も地域以外の人も元気にすること。さらにはジビエ料理を通じてその地域に興味を持って訪ねれば、その地域が潤うことにもつながる。
「ジビエのおいしさを知らないで生きているのはもったいない」…『ジビエ料理 あまからくまから』
こちらは、『ジビエ料理 あまからくまから』(人形町)店長の林育夫さん。林さんのお店は以前、長野県から野菜を取り寄せていた。だが長野県は冬、野菜が採れないため、代わりに猪肉を送ってきてくれたという。「それがとてもおいしくてハマってしまい、2年後に店をジビエ料理専門店に変えました。たったひとつの猪肉がそう決意させたほど、衝撃的な出会いだったのです」と語る。
そんな林さんが残念に思うのは、ジビエのおいしさが一般の人に、あまりにも知られていないこと。「ジビエというと冬のイメージがありますが、本州産の牡鹿は、生殖のために脂をパンパンに蓄える夏が一番おいしいんです。そのおいしさは、知らないで生きているのはもったいないと思えるほど」(林さん)。
林さんのお店でこれからの季節のイチ押しが、「みかん猪」を使ったぼたん鍋。みかん猪はレモンとみかんの産地として知られる広島県の生口島(いくちじま)でみかん畑を荒らして駆除される猪肉だ。「肉にフルーティな甘みがあり、加熱しても固くならず、非常においしいんです。ぜひ多くの方に知って欲しいです」(林さん)。
林さんの店で提供している「みかん猪のぼたん鍋」(写真上)(4,180円/1人前)。
「みかん猪冷製」(写真上)を試食させていただいた。ほぼ脂身なのに、まったくしつこさがなく、心地よいなめらかな食感であること、またすっきりした甘みの後に広がるフルーティな余韻にも驚くこと間違いなしだ。
ジビエ料理 あまからくまから 人形町
- 電話番号
- 050-5488-9958
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 17:00~23:00
(L.O.22:00、ドリンクL.O.22:15)
最終入店時間は20:30になります。
- 定休日
- 日曜日
祝日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。
「焼肉こそ、鹿肉を最高においしく味わう方法」…『Manzovino(マンツォヴィーノ)』【人形町】
焼肉とワインとイタリアンをかけあわせた新しいスタイルのレストラン『Manzovino(マンツォヴィーノ)』(人形町)。同店が提案するジビエ料理は、「蝦夷鹿ウチモモ」(1,850円)の焼肉と「蝦夷鹿と黒毛和牛のテリーヌ、蝦夷鹿のサラミ添え」(1,300円)。「とくに鹿肉は、焼いてから時間がたつと固くなりやすいため、目の前で焼いてすぐ食べられる焼肉こそが、最もおいしく味わえる料理です」と断言する。
『マンツォヴィーノ』で提供している「蝦夷鹿ウチモモの焼肉」(1,850円/写真上)は、鹿のモモ肉の中でも運動量が少なく、最もやわらかな内モモ肉を焼肉に使用。脂が少ない赤身で高タンパク、ビタミン、鉄分も豊富というヘルシーさもおすすめポイントだ。
一枚一枚隠し包丁を入れることで、よりやわらかく歯切れをよくし、和牛からひいたコンソメとイタリアの塩を使ったオリジナルの塩ダレでマリネするなど、焼肉店としてのノウハウを活かしているだけあって、うまみとコクが感じられる。今回、柚子胡椒でいただいたが、店ではオリジナルのさっぱりした「エシャロットレモンソース」を添えて提供している。
「蝦夷鹿と黒毛和牛のテリーヌ、蝦夷鹿のサラミ添え」(写真上)もまた、蝦夷鹿肉にこだわりのA5 黒毛和牛を合わせた、焼肉店ならではの贅沢なテリーヌ。
「蝦夷鹿と黒毛和牛のテリーヌ」(写真上・左)は、和牛のうまみと脂を加えてしっとりさせ、スチームコンベクションで低温調理した後、2週間程度熟成させることで、肉のうまみを最大限に引き出している。さわやかなタプナードソースがいいアクセント。「蝦夷鹿のサラミ」(同・右)は、ごく薄くスライスされているのに、野性味のあるうまみが凝縮されている。
マンツォヴィーノ
- 電話番号
- 050-5493-6766
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 月~土
ディナー 18:00~翌3:00
(L.O.2:00、ドリンクL.O.2:00)
日
ディナー 18:00~翌1:00
(L.O.24:00、ドリンクL.O.24:00)
- 定休日
- 日曜日
その他(2022年5月9日~2022年5月9日)
5月9日(月)お休み致します。
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「日本のジビエを、国産ワインと国産野菜でさらにおいしく」…『音音バル』ほか
全国で51ブランド140店舗の飲食店を運営する株式会社ラムラは、『音音バル』(虎ノ門店、お茶の水店、八重洲鉄鋼ビル店)、『大地の恵み北海道』(6店舗)、『馬舌屋 小伝馬町店』でジビエを提供している。おすすめは「丸ごと鹿の日本赤ワイン煮込み」(8,800円)と、「天然国産イノシシと有機野菜のしゃぶしゃぶ」(1,500円/1人前)。
「丸ごと鹿の日本赤ワイン煮込み」(写真上)は、本州鹿のバラや肩、アキレスなどさまざまな部位を利用し、日本のブドウで造られた日本のワインで煮込んだ料理。鹿のアキレスは持続可能な観点からなるべくいろいろな部位を使うという意味で使用しているという。クセのある部位なので何度も茹でこぼし、香味野菜と揉みこんでマリネしている。
アキレスのプルプルした食感と鹿肉ならではの野性味ある味わいが、鹿肉から作った濃厚なデミグラスソースがよく合う。
「天然国産猪と有機野菜のしゃぶしゃぶ」(写真上)は、野山を駆け回る天然国産猪を使用。モモ肉とウデ、肩の上の上質なやわらかい部位を、農薬や化学肥料に頼らない有機野菜と、昆布を基本とした京だしの地で“しゃぶしゃぶ”にしていただく。うっすらと浮く脂に上品な香りが立つのが特徴。味噌で煮込む定番とはひと味違う、イノシシ料理の新たな一面を楽しめる。
こちらは「天然国産イノシシと有機野菜のしゃぶしゃぶ」(写真上)。だしのうまみと出会うことで、天然国産猪肉の持つ甘みが引き出され、その野性味が香りの余韻となって昇華している。ジビエの新しい可能性を感じる料理だ。
和食バル 音音 虎ノ門ヒルズ店
- 電話番号
- 050-5485-2118
(お問合わせの際はぐるなびを見たというとスムーズです。)
- 営業時間
- 月~日・祝日
ランチ 11:00~14:30
月~金・祝前日
ディナー 17:00~23:00
土・日・祝日
ディナー 16:30~21:00
- 定休日
- 不定休日あり
ビルの休館に準じます。
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一流の腕をもつ地元猟師から学んだジビエ料理の真髄…『星のや富士』
富士河口湖を望む丘陵に2015年に開業した日本初のグランピングリゾート『星のや富士』(山梨県南都留郡)が提供するのは、地域で獲れたジビエを使ったワイルドな料理を豪華な屋外ダイニングでいただく「狩猟肉ディナー」(18,150円)。
一流の腕をもつ地元猟師から取り扱い方を学び、適切な技術とスピードで処理しているため、獣特有の臭みが少ないことが特徴だ。『星のや富士』では、ジビエの新たな料理法や美味しさを提案することで、鳥獣被害に悩む地元地域に貢献したいという想いもあるという。
アミューズは「鹿のリエット ヴァンショーと共に」、アペタイザーは「鹿ハムと冬野菜のカマンベールフォンデュ」、スープは「鹿ソーセージと根菜のジビエコンソメ」、メインディッシュは「しかとビーツの軽い煮込み 八幡芋のグラタン」(写真上)。
ライスは「鹿の大和煮と干茸の炊き込みごはん」(写真上)、デザートは「餡子餅のクレープ 温かい苺ソース仕立て」。
「鹿ローストとビーツの軽い煮込み」(写真上)は、見ただけでなめらかな食感がイメージできる、きめの細かさ。噛むほどに複雑なうまみが湧いてきて、ずっと噛み続けていたくなる。その味わいに、酸味と甘みが調和したビーツのソースが実によく合う。
「カレーで地域の抱える問題の解決に寄与したい」…『カレーハウスCoCo壱番屋』
国内で1238店舗を展開する『カレーハウスCoCo壱番屋(以下『CoCo壱番屋』)』は、店舗ごとにユニークなオリジナルメニューがあることで知られている。
愛知県で15店舗の『CoCo壱番屋』をフランチャイズ展開する「株式会社ワイズ」(名古屋市中区)は、豊田産の鹿肉を使った「とよた里山鹿肉欧風カレー」(写真上)を2020年11月1日から販売している。肉は食べやすいようにひと口大の大きさにカットし、ルウにはワインエキスを入れて欧州風に仕上げている。
よく煮込まれた鹿肉は、舌で押すだけでほぐれるやわらかさ。それでいて噛みしめると、繊維の奥から力強いうまみが伝わってくる。食べ慣れたカレーなので、ジビエ初心者も気軽にトライできるだろう。
ジビエは、新しいのにどこかなつかしい味
ジビエに興味はあっても、どこか抵抗があったり、不安を感じている人も多いかもしれない。だが、さまざまなジビエ料理に触れて感じるのは、料理法は新しくても、肉そのものにはどこかなつかしい味がするということ。
「鹿肉や猪肉はどこか、子供の頃に食べたおいしい肉の味のなつかしさを感じることが多いんです。その頃の肉にはジビエに共通する野性味がまだ、残っていたのかもしれないと思います」(株式会社ラムラ 商品部 カミサリー課課長兼副工場長 舛田晴彦さん)。もしかしたら同じ感想を抱く人も多いかもしれない。
ぐるなびが2021年1月に実施した調査では、消費者への調査では「ジビエを食べたことはないが食べてみたい」が35.0%で最も多い結果に。さらにジビエに関心がある人のうち「食べる機会がない(52.7%)」「食べられる場所が分からない(34.1%)」と回答した人が多く、ジビエを食べられる店舗等の情報が消費者に不足している状況もうかがえる。
「ジビエフェア」参加店は、「ジビエフェア」公式サイト(https://www.gibier-fair.jp/)から検索できる。「ジビエフェア」の開催期間は、2021年11月1日〜2022年2月28日。新しくてどこか懐かしい肉の味を体験しに、今年の冬はジビエ料理を試してみてはいかがだろうか。