都営大江戸線・東京メトロ南北線の「麻布十番」駅を出て、個性的なスイーツ店や飲食店が多く立ち並ぶ雑式通りを進むこと数分。風格を感じさせる重厚な雰囲気の建物が、『HISAYA KYOTO麻布十番店』だ。1階は、自慢の焼き栗をはじめテイクアウトの和洋菓子を販売。向かって左側の階段を昇った2階が、『茶房HISAYA LOUNGE』だ。
フロアはゆったりとした大人の雰囲気。マロンカラーを基調に、ソファ席には栗の形のテーブルも置かれている。席の感覚も広く、静かで、食べ終わっても席を立ちたくない、心地いい空間だ。
HISAYA KYOTO麻布十番店 店長の野知泰樹さん(写真上)によると、『比沙家』は京都在住の栗好きのオーナーが約15年前に、京都・清水寺の参道で始めた焼き栗スタンド。糖度の高い日本品質の「金華栗」を中国遼寧省の肥沃な栗山で育て、添加物を一切使用せず独自の圧力製法で蒸し焼きにすることで、栗本来の甘さとホクホクとした食感を実現させ、大人気となった。現在関東では8店舗の焼き栗スタンドを展開しており、2019年には新業態としてモンブラン専門カフェ『HISAYA CAFE』を京都の清水坂にオープン。丹波栗のおいしさを最大に伝えることを追求した、目の前で仕上げるモンブランが注目された。
『HISAYA CAFE』はスタンド併設の小規模な店で、席数も6席と少ないため、「ゆったりと贅沢な雰囲気で高級栗のスイーツを味わってもらいたい」と考えたオーナーが、かねてから憧れていた麻布十番に出店したのが首都圏一号店『HISAYA KYOTO麻布十番店』だという。
栗そのものを食べるよりも鮮烈に、純粋に「栗」を感じる「丹波栗の京都モンブラン」
京都の本店『HISAYA CAFE』でも大人気だという「丹波栗の京都モンブラン」(写真上)は、カウンター席に座ると目の前で一から作るところを見せてくれる。
台となるのは、バターを加えてオーブンで香ばしく焼き上げたカダイフ(極細の麺状の生地)。その上に京都・南山園の抹茶で作った抹茶ソースをかけ(上の写真左)、抹茶アイスクリームと生クリームを重ねていく(同右)。
繊細で軽やかな口当たりにするため、マロンクリームは和菓子の練り切りに使われる「小田巻」という道具で可能な限り細く絞りだしている(上の写真)。マロンクリームを細く絞りだすためには、なめらかな質感にするための“つなぎ”が必要不可欠。同店のマロンクリームは大粒で風味の強い丹波栗にごく少量の白餡と生クリームを加えることで、栗の風味を最大に活かしつつなめらかな質感に仕上げている。
仕上げに、凍らせてから削った焼き栗をふりかけて完成(上の写真)。この削り栗に使用しているのは、江戸時代から伝わる日本種の「銀寄(ぎんよせ)」という栗。あくまでも丹波栗の風味を際立たせるため、それを邪魔しないような栗を選んでいるというこだわりに驚く。
限界まで細く絞られたマロンクリームは、口に入れた瞬間になめらかに溶けて、栗の香りと自然な甘みが口いっぱいに広がる。かなりのボリュームなのに、最後のひとくちまで食べ飽きないのは、上品なほろ苦さの抹茶がアクセントとなっていること、そして栗の自然な甘みを感じられるよう、抹茶アイスクリームも生クリームも甘みをぎりぎりまでおさえているから。栗そのものを食べているよりもはるかに鮮烈に、純粋に、”栗を味わっている”実感のあるスイーツだ。
同じように、カウンター席の目の前で仕上げてもらえるのが、『茶房HISAYA LOUNGE』限定の「丹波栗のモンブランパフェ」(写真上)。
こちらはラム酒にアニスを加えたジュレをグラスの底に敷き、カスタードクリーム、栗の渋皮煮、抹茶の葛餅、ほうじ茶アイスを乗せ、最後に「丹波栗の京都モンブラン」と同じように「小田巻」を使って、丹波栗のモンブランクリームを絞り出す。最後に季節のフルーツを添えてできあがり。栗の風味を膨らませるさまざまな仕掛けが隠された、まさに大人のモンブランパフェだ。
栗おこわとモンブランが楽しめる食事メニューも!
「スイーツだけでなく、食事メニューでも栗の醍醐味と京都らしさを楽しみたい」という方におすすめなのが、栗おこわを中心に4~5品の日替わりおばんざいがつくセット「京都のおばんざい」(写真上)だ。2週間に1度ほどのペースでメニューが入れ替わるので、その時々の京都の季節を感じることができる。
取材日のメニューは左から時計まわりに、「茄子のオランダ煮」「インゲンとこんにゃくの胡麻和え」「大根の人参の白味噌煮」「小松菜と上げの炊いたん」。その次に訪れた時は、「厚揚げの旨煮 山椒がけ」「三つ葉としめじのおひたし」「牛蒡と人参のおひたし」「切干大根とほうれん草の黒胡麻和え」だった。
料理はいずれも繊細な味付けで、やさしい味わいなのに味がしっかりと染みている。「茄子のオランダ煮」の天盛りの鰹節の繊細さに感動し、胡麻和えのインゲンの固すぎずやわらかすぎない茹で加減、「大根と人参の白味噌煮」の、飲み干したくなる汁の味わい深さに驚く。「小松菜と油揚げの炊いたん」も、出汁が小松菜自体の甘みを最大に引き出している。まるで京都を旅している気分に浸れる。
もち米と栗の甘みが響きあって増幅する!究極の「栗おこわ」
だが何よりも強いインパクトがあるのが、中央の「栗おこわ」だ。もち米は、大粒で弾力が強く、炊き上がった時の光沢、張り、粘り、甘みの素晴らしさで知られる新潟産の「わたぼうし」を使用。栗はもち米との相性から焼き栗に使用している「金華」栗を選択し、なんともち米の半分もの量を使用している。
栗の香りと甘みがおこわ全体に沁み込み、響きあってお互いの力を増幅させているよう。塩のうまみとあいまって、ひとくちごとに衝撃を受けるおいしさだ。「もしかしたら栗おこわこそが、栗の最もおいしい食べ方ではないか」と思えるほど。
この「京都のおばんざい」には、デザートとしてハーフサイズの「丹波栗の京都モンブラン」をプラスすることができる。単にサイズが違うだけかと思いきや、フルサイズの時には食感の余韻くらいの印象だったカダイフの食感が前面に出てきて、まるで違う印象になる。
フォークをそっと入れただけでカダイフが砕ける音と感触があり、食べる前からその繊細で羽根のように軽い食感が伝わってくる。そして、そうした食感のデリケートさがアクセントとなって、マロンクリームがさらに軽く感じられ、「こんなにも違うものか」と驚く。モンブラン好きな方はぜひ、両方を食べ比べてみて欲しい。
ちなみに近年の冷凍技術の発達で旬の栗の味そのままに保管できるようになったので、今回紹介した栗メニューは通年で味わえる。
一杯のお茶にも深いこだわり。お酒とのマリアージュもおすすめ
フルサイズのモンブランは、プラス700円でお茶とセットにできる。セットのお茶は「有機せん茶」「有機ほうじ茶」「有機和紅茶」「丹波黒豆茶」など9種類のドリンクから選べる。いずれも京都を中心に厳選されたお茶ばかりだが、おすすめはほうじ茶。宇治茶の主産地・和束町から取り寄せている希少な有機栽培のお茶を焙じたもので、すっきりした香ばしさが栗のスイーツと相性がいい。
「最高の栗を、贅沢な雰囲気で味わってほしい」というオーナーの願いから、ワインを中心としたアルコール類にも今後は力を入れていく予定。モンブランとのペアリングも準備中とのことで、ますます楽しみだ。
1階のショップにも、麻布十番店オリジナルのお楽しみがいっぱい
1階のショップでは、『比沙家』の顔ともいえる「焼き栗」を始め、ここでしか味わえない栗スイーツが目白押し。その一部を紹介する。
訪れたらぜひ食べて欲しいのが、「モンブランソフト」(写真上)。冷たいソフトクリームの上から自慢の栗ペーストをたっぷりかけた、ここでしか味わえない贅沢なソフトクリームだ。
「丹波栗のクッキーシュー」(写真上)は、香ばしく焼き上げたクリスピーなシュー皮に、自慢のマロンクリームをすき間なく詰めこんでいる。栗好きな方への手土産にすれば、感激されること請け合いだ。
栗好きにはまるで夢のような、“栗の館”だが、栗好きならずともここを訪れればオーナーの“栗愛”に心が震えるに違いない。贅沢な気分に浸って日常を忘れたい時、自分をとことん甘やかしたい時、ぜひ訪れてみて欲しい。栗の素朴で豊かな甘みが、疲れた心をやさしく癒してくれるはずだ。
【メニュー】
丹波栗の京都モンブラン 1,800円 ※お茶セット 2,500円
丹波栗のモンブランパフェ 2,000円 ※お茶セット 2,700円
京都のおばんざい 1,380円 ※丹波栗の京都モンブランハーフセット 3,000円
有機ほうじ茶(ホット/アイス) 900円
シャンパン(グラス) 1,500円~
白ワイン(グラス) 1,300円~
※1階のショップで販売
モンブランソフト 1,000円
丹波栗のクッキーシュー 450円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税込みです。
HISAYA KYOTO麻布十番店
- 電話番号
- 03-6722-6629
- 営業時間
- 11時~19時(L.O. 18時30分)
- 定休日
- 無し
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。