『sio』の思う“ホテル”像を具現化したレストランとは?
3年連続ミシュランの一つ星を獲得した実力派で、人気のフレンチレストラン『sio』。
『sio』のオーナーシェフで、多くのメディアで活躍する鳥羽周作シェフが今までの活動で得たホスピタリティと料理をさらに広め、「幸せの分母を増やしたい」という想いから、“ホテル”をキーワードに手掛けたレストランが表参道駅から少し歩いた新施設「ののあおやま」にできたのは今年10月1日のこと。
多くのフーディーたちが注目する鳥羽シェフの新店とあり、オープン前から話題をさらったが、そのコンセプトが“架空のホテルのレストラン”で、しかも店名が『Hotel’s』ということがわかると、更に注目が集まった。
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『sio』とは違い、「ホテル」というコンセプト通り、シェフ個人の味を前面に出さず、『sio』イズムを持ったメンバーみんなで空間を作り上げ、そしてチームを組むことにより、朝・昼・夜 オールデイダイニングとして安定したサービスと料理の提供が可能になり、終日の営業スタイルにしたという『Hotel’s』。
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店内に入ると窓が大きく、外には「ののあおやま」の緑が広がる。
頭上には料理に合わせて作ってもらったというこだわりの食器が積まれ、鳥羽シェフが座り心地にこだわって決めたという「マルニ木工」の椅子が並んだカウンターの目の前には薪窯が設えてある。
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こちらをリードするのはシェフの木田翼さん(写真下左)と中道暢さん(写真下右)。彼らが作り出す『Hotel‘s』な料理をモーニング、ランチ、ディナーという時間帯で紹介してもらった。
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1日を通して提供される「サラダ」はひとさじごとに異なる味わいが絶妙!
まずはモーニングからディナーまで1日を通して提供されている「ホテルズサラダ(フルサイズ)」(写真下)から。
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使用する食材の産地をあえて固定せず、その時一番おいしい野菜やフルーツなどを混ぜ合わせたチョップドスタイルのサラダは、数え切れないほどの多くの食材が混ぜ込まれる。
食材本来の味を引き立てるため、味はオイルと塩、白バルサミコ酢でシンプルに仕上げているそうだ。
そこに老舗のナッツ・ドライフルーツ専門店の『小島屋』と『sio』で共同開発した、スパイシーなオリジナルミックスナッツを砕いたものをプラスし、パルミジャーノチーズを振ったら完成だ。
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なかなか大きなサイズのボウル皿だが、これで一人前だという。
添えられるカトラリーは「パクパク食べてほしいから」ということでスプーンのみ!
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お勧めの通りにスプーンで口に運ぶと、野菜のシャキシャキした食感にオリエンタルな雰囲気のナッツが絡み、その国籍不明さに何とも惹かれる、ここにしかない味わい。
食べる部分によって、甘み・苦み・酸味・旨味…と味が変わり、同時に食感も変わる。
出会うごとに姿を変える味を追いかけると、いつの間にか食べ終えてしまう。
これは終日提供であることに感謝するおいしさだ。
ちなみに、『Hotel‘s』でモーニングを実施することになったきっかけは、緊急事態宣言中に『sio』で“朝ディナー”と称す朝メニューを提供し、普段訪問の叶わないお客さんからも好評だったことからだそう。
朝時間からオープンすることで営業時間を増やし、「予約の取れないお店」から離れ、みんなに料理を味わう幸せを感じてほしいという優しい想いからのモーニング営業。なんとも心の温まる話だ。
ダイレクトに『肉の旨味』を感じられるハンバーガーは豪快にかぶりつきたい
次はランチメニューでも人気と言う「ホテルズ ハンバーガー」(写真下)。
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たっぷりのチーズに覆われてパティが見えないが、作り方を見るとその隠れた豪華さと手間のかけ方に驚くだろう。
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まずは神戸牛を荒めに手切りにし、つなぎを加えずパティにしたものを鉄板で焼く。
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その上に飴色になるまで炒めてから醬油で味付けした玉ねぎ、その上にチェダーチーズとパルメザンチーズと2枚のチーズで旨味を重ね、さらにスライスオニオンをのせ、フレッシュな食感をプラスする。
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そして一口目をカリッとした食感にするため、バンズはしっかりめに焼き、そのバンズにレフォールマヨネーズ (西洋わさびを入れたマヨネーズ)にタスマニア産の粒マスタードとはちみつを合わせたものを塗ったら完成!
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とろけるチーズの絡む、まるでステーキのような肉肉しさのパティが極上!
その合間に加わる甘みのあるソースと玉ねぎの相性もよく、これはハンバーガー専門店にも負けないおいしさだ。
ディナーのメインは 薪窯で仕上げる「目の前のものを頂く」という体験を
最後はディナーメニューから「薪焼きステーキ」(写真下) 今回はラムチョップで。
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メインディッシュである肉料理はシンプルに、なんとお皿の上にのるのは肉と塩だけだ。
これは薪を使い目の前で 仕上げるというエンターテインメント性と、その出来立てのもの を頂くという体験をダイレクトに感じてほしいという理由での盛り付けだそう。
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今回使用したラムチョップはオーストラリア産のもの。そこにマルドンのクリスタルソルトとオリジナルで作ったという、少し苦みのあるホップソルトが添えられる。
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草原を想わせる芳香のあるラムチョップに「塩」という調味が加わることで 味の奥行きがぐっと広がり、さらに薪の熱だからこそ実現するジューシーさが感じられる。
これは肉料理というより、「薪」料理なのだと実感できる、メインにふさわしい料理だ。
今日ここでしか味わえないノンアルコールペアリングはマストオーダー!
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コース料理にぜひ合わせて味わって欲しいのが、ノンアルコールペアリング。
なんとこちらのノンアルコールペアリングのドリンクはその日の料理に合わせて作ったオリジナルのものだそう。
例えば、今日の肉料理にはビーツとジュニパーベリーにプーアル茶を合わせた赤いドリンク。
魚介類の料理には旨味と旨味を重ねる狙いで、トマトのエキスと出汁を冷やした白いドリンク。
どちらもその一皿の料理に添えるためだけのレシピで作られており、普通のボトルドリンクにはない組み合わせはまさにここでしかできない体験だ。
自分たちが伝えられるおいしさで、「食という幸せ」を広げたい
「料理を提供する」という姿勢ではなく、「食」という幸せを広げるための存在でありたいという『Hotel‘s』。
まさにホテルのような存在のこちらは、朝昼晩自分の好きなタイミングで食事を楽しんだり、天気の良い日は隣接する公園でゆっくりテイクアウトメニューを堪能することも可能だ。
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ワークスタイルも食事のスタイルも変わりつつある今、世界が求めるのはホテルのようないつでもドアを開けてくれるような存在なのかもしれない。
【メニュー】
・モーニングショートコース 4,400円
・ランチショートコース 7.700円
・ディナーコース 14,300円(サービス料別)
・アルコールペアリング(6杯) 8,000円
・ノンアルコールペアリング(6杯) 7,000円
他、グラスワインやボトルワイン、ソフトドリンクなどあり
※本記事に記載された情報は、取材日時点のものです。価格は税込みです。
※お酒の提供については現在、国や自治体の要請に準じています。
Hotel’s
- 電話番号
- 03-6804-5699
- 営業時間
- モーニング 8:00~11:00(LO10:00)/ランチ11:00~14:30(LO13:30)/ディナー 17:00~23:00(LO20:30) ※モーニング、ランチはお席のみ予約可、ディナーはコースのみで完全予約制
- 定休日
- 無休
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。