私が今まで観た中での映画ベストワンはスタンリー・キューブリック監督の「2001年宇宙の旅」です。私にとってこれを超える映画はありません。原始人なのかサルなのかがケンカをしているシーンの最後に骨が空に投げられて、それがシャトル宇宙船にふっと変わるシーン。そしてそこから宇宙ステーションにドッキングするまでに流れるヨハン・シュトラウス2世の「美しく青きドナウ」の崇高さ。この音楽と映像の組み合わせが私の魂をいつまでも震わせます。どんな映像も音楽も、ハードロックもヘヴィメタルもプログレもここまで私の魂に深く入り込んで来ません。映画としてだけでなく私の人生の中で最も高揚した瞬間の一つなのです。
そして船外活動中の乗組員が宇宙空間に放り出されるシーンは心底怖かった。宇宙は恐ろしいのだと私の心に刻まれたのです。私はこの映画を子供の頃にテレビで観たんです。多分まだ白黒テレビだった頃です。もしフルカラーで映画館のスクリーンで観ていたら卒倒したかも知れません。でもこの映画が大好きになりました。ウルトラマンもスタートレック(当時は宇宙大作戦)も超えた、本物(に思えた)の宇宙。その宇宙に触れて自分と云うちっぽけな存在がポンと音を立てて大きくなったような気がしました。
それから何十年も経った今、この映画への敬意と偏愛は変わりません。物語としては未だにワケ判らんですがそれでいいんです。意味よりも風合い、肌触り。信頼出来るのはインスピレーション。宇宙からは円盤も宇宙人もベムラーもベムスターも来るけどウルトラマンもやって来るし帰ってきたりもする。そして2001年も2010年も越えて未だに宇宙や未来に憧れを持っている私。旅は終わらない。宇宙はカッコイイ。この感覚は一生変わらんのだろうなぁ。
そして石川県の金沢に行くと必ず訪れる宇宙があります。片町の『宇宙軒食堂』がその宇宙。ここにとんバラ定食と云うフロンティアがあります。店内コの字カウンターの中心にある大きな石板で豚バラ肉を焼きます。もしかしたらこの石板はモノリスではないのか。木星に向けて強い電波を発しているのではないのかと思いますがそうではないようです、ご安心ください。
豚バラ肉には焼いている時には味付けはせずに、特製の秘伝のタレをつけて戴くようになっています。シンプルですが奥が深い。長年かけて開発されたと云うこのタレは、ゴマの風味と酸味と様々な要素が組み合わさって唯一無二の味わい。このタレこそが宇宙。宇宙に豚バラ肉の脂のうまみが合わさって特異点になる。ご飯と共に戴くと量子力学的にウマイ。クオークもスピンもドンと来い。豚汁も銀河を遙かに越える美味しさ。この豚汁の味が私の生まれ育った家庭の味に酷似しているのも宇宙がなせる業なのか。
この宇宙を存分に堪能するために、とんバラは必ずW(肉大盛)でオーダー。ご飯の大も併せますと相対性理論が証明されます。とんバラ定食ウマウマウー。日本を代表する定食の一つだと考えます。ところでこの宇宙には他にもたくさんのメニューがあるのですが、なかなか到達出来ないのが悩み。カツカレーもすき焼きも食べてみたい。野菜サラダ定食って何なのだろう。宇宙への探究心はとどまることを知りません。金沢に来たら宇宙旅行を是非どうぞ。美味しかったです! 御馳走様でした!
宇宙軒食堂
- 電話番号
- 076-261-8700
- 営業時間
- 11:00~15:00、17:00~22:00(L.O.21:30)
- 定休日
- 火曜日
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。