今年5月、渋谷・道玄坂にオープンした『海老フライ専門店 海老昌(えびまさ)』。
品書きは「大昌1,550円」、「海老フライ1,330円」、「小海老フライ1,210円」と、海老フライセットが3タイプのみと拍子抜けするほどの潔さ(いずれも本日のスープ、ライス付き)。そこには、オーナーシェフ・小杉昌功氏が寄せる自身の味覚への信頼が窺い知れる。
実家は、かつて名のあるシェフも在籍した大阪のフレンチレストラン。食卓の料理にさえ市販のドレッシングは使わない、そんな家で育った。環境は知らず知らずのうちに舌を育て、やがて味覚に対する絶対的な自信が生まれる。その後、遊技場経営などを経た小杉氏が「まだ誰もやっていないことを」と目をつけたのが、食卓の人気者、海老フライだった。
黒×白――料理同様、こちらもまた潔くすっきりとした店内。磨き上げられたカウンターの中では、小杉氏が一尾一尾に並々ならぬ情熱を注ぐ。その淀みのない所作は丁寧の一言に尽きる。
衣付けひとつとってもそう。隠し包丁を施した身と特注のパン粉との間に空気が入るよう小刻みな手つきでまとわせ、仕上げに余分なパン粉を刷毛で優しく払う。
海老のエキスがギュッ! 旨みを閉じ込める揚げあがりのひと手間
3種類のブレンド油にもひと手間。事前にセルフィーユ(セリ科のハーブ)をくぐらせておくことで、揚げあがりの海老から爽やかな芳香が香り立つ、という算段だ。揚がった海老フライは少し置いておくのがポイント。「ナイフを入れたときに海老のエキスが流れ出るのを防ぐためです。一尾一尾、適切な芯温に仕上げて提供します」
一番人気は、ブラックタイガーの中でも最大級のものを2尾使う、名刺代わりの「大昌」。皿から飛び出さんばかりの迫力はスペシャリテと呼ぶにふさわしい。ぷっくりと膨らんだ中央部にナイフを入れると、ザクッと力強い音とともに湯気が舞い立ち、そして、ナイフ越しにも伝わる身の弾力。頭部に近いほど繊維はほろりとほどけ、尻尾に近いほどプリッと押し返すという部位別の食感を味わえるのも、特大サイズならではの贅沢である。
肉厚な海老と「世界一ご飯がすすむ」タルタルソースがベストマッチ
旨みを湛えた肉厚な身は、噛むごとに口中を縦横無尽に行き交い、胃に納まった後も口いっぱいに余韻が広がる。「世界一ご飯がすすむ」と小杉氏が胸を張る自家製タルタルソースをつければ、上品な酸味が海老の風味を2倍にも3倍にもふくらませ、これまたお見事。
昨今の専門店ブームの中で誕生した、ありそうでなかった海老フライ専門店。海老というひとつの食材に勝負を賭ける小杉氏の気概は、身の丈を過ぎない、しかし、ちょっと贅沢な大人の海老フライとの出逢いを約束してくれるだろう。
(文・取材/井上こん)
<メニュー>
大昌1,550円
海老フライ1,330円
小海老フライ1,210円
(いずれも本日のスープ、ライス付)
ビール(プレミアムモルツ)750円
緑茶、ウーロン茶350円
※本記事に掲載された情報は、掲載日時点のものです。また、価格はすべて税抜です。
海老フライ専門店 海老昌(えびまさ)
- 電話番号
- 03-6452-5913
- 営業時間
- 11:30~21:00(L.O.20:30)
- 定休日
- 定休日 無休
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。