大阪のビジネス街である北浜に、2017年2月7日に誕生したフレンチレストラン『ルヴニール』。供される料理の意外性やサービス、インテリアなど“非日常”を提供する一軒である。店内は大きなガラス窓から光が入り込む明るい雰囲気。ゆったりとした席間で、ラグジュアリーなムードを醸し出している。
『タイユバン・ロブション』出身シェフと鮮魚店のオーナーがコラボ
料理長は、『タイユバン・ロブション』や『クレッセント』、ザ・リッツ・カールトン大阪の『ラ・ベ』、神戸・北野にある白亜の洋館『ラ・メゾン・ドゥ・グラシアニ』といった、名だたるグランメゾンやレストランで技術を磨いてきた金丸直樹シェフ(写真下)だ。「フランス料理の伝統を土台にしながら、常に“新しいもの”を魅せることができるか、挑戦と探求の連続です。今回、『ルヴニール』では、これまで学んできたことを一皿一皿に表現していきたい」と金丸シェフは語る。
シェフの歴史や磨いてきた技術、感性に、今回さらに新しく加わったキーワードが“シーフード”。大阪・堺で鮮魚店『魚豊』を営む山中邦生さんが、『ルヴニール』のオーナーであることから、肉や野菜はもちろん、鮮魚に重きを置いたメニューを構成。毎朝、木津卸売市場へ2人で足を運び、旬の魚を吟味しているという。「山中さんから、プロの魚屋さんだからこその知識を教えてもらいながら、どのように心に響く一皿に仕上げられるか一緒にトライしています」と金丸シェフ。一方、山中さんは「自分と一緒に目利きした魚が、想像以上の形となってお客様の元に供されるのがうれしいですね」と話す。
まるで絵を描くようなアーティスティックな料理に魅了
では、今回はメニューの中から、1万円のコースより4皿をピックアップして紹介していこう。
メインの魚料理の前に、まずは「つむら本店河内鴨のソーシス、金柑のコンポート」。こちらは大阪・松原の鴨肉専門店『つむら本店』から毎日届けられる新鮮な河内鴨を使った一皿。モモ、ムネ、砂ずり、心臓、皮など、鴨一羽分の部位をソーシス(=ソーセージ)に。骨もあますことなく炒めてソースにしてから、ソーセージの中に加えている。鴨と言えばオレンジソースでいただくのが伝統のフレンチスタイルだが、こちらでは金柑のコンポートで日本らしくアレンジ。付け合わせには「鴨が葱を背負ってくる」ということわざを表現するように、柔らかく煮た下仁田葱がエディブルフラワーと共に添えられている。
まずは黒のお皿に映えるソーシスの艶感、黄金に輝く金柑、可憐なエディブルフラワーが織りなす、まるでアートのような繊細で美しいビジュアルにワクワク。そして、ソーシスは鴨のありとあらゆる部位のうまみが凝縮され、しっかりとした歯ごたえとコリコリ、プルンといった異なる食感が口の中に広がる。まろやかながら、深みのあるうまみがひと口運ぶごとに感じられ、金柑のコンポートと一緒に食べると、オレンジソースより酸味がマイルドなので、鴨の味が見事に際立ってくるのが分かる。
2皿目は、白い皿をキャンバスに見立て、まるで絵を描くように盛られた「熊本車海老、オシェトラキャビア 燻したヨーグルト ビーツ」。ブイヨンで火入れした車海老は、プリッとした弾力や甘みが引き出されており、トッピングされたキャビアがプチプチとした食感を添えている。ビーツの土っぽさ、燻したヨーグルトのほどよいスモーク香が、ふわりと口や鼻の中を駆け抜けてなんとも心地いい。
「泉南よりと河豚、ソースブイヤベース」は、泉南でとれる小さな「よりと河豚」を主役にしたメニュー。フグの骨からとったブイヤベースソースの中で、過度にストレスをかけないように優しく火入れすることでうまみをギュッと閉じ込める。身はぎっしりと密に詰まっており、ホクホクとしたような食感と弾力感が持ち味だ。
食べるときには、ニンニクやサフラン、ジャガイモで作ったルイユをかけると、濃厚なコクとうまみを加えてくれる。
デザートは、まるでオブジェのような丸みのあるクリアな器で登場する「リーオレ、バルサミコ酢、季節のフルーツ」。牛乳、砂糖、バニラで甘く煮たイタリア産の米を、パートフィローに詰めたもの。まずは生地のサクサクとした食感のあとに、クリーミーな味わい、そしてお米のモチモチ感が楽しめる。あと口をさっぱりとさせてくれる季節のフルーツや、シャーベットには、お好みでソース仕立てにしたバルサミコ酢をかけるのもいいだろう。
料理と共にマッチングを楽しみたいワインは、フランス産のものを主体に、ドイツ、イタリア、アメリカ、南アフリカなど幅広く約180種類をラインナップ。例えば、今回紹介した「河内鴨のソーシス」には、ピノ・ノワールのしっかりとした果実味を感じるフィリップ・シャルロパン・パリゾのぺルナン・ヴェルジュレス、車海老には秋田の羽根田酒造のふくよかな味わいの辛口「羽前白梅」、身がぎっしりと詰まった魚料理に合う名シャンパンハウスであるドゥーツのアムール・ド・ドゥーツ ロゼ、デザートにはごく甘口のソーテルヌの貴腐ワイン、シャトー・スデュイローをチョイス。「シェフは素材の味を引き立てるソース使いが巧みですので、その味を壊さず、きっちり合うものをセレクトしています」とソムリエの北山さんは語る。
「レストランは、店の空気感や料理、サービスなど、提供するすべてにおいてお客様に非日常を実現できる空間だと考えています。『ルヴニール』では、そんな非日常感を皆様に味わっていただけるよう、新旧の技術を駆使して、美しい料理をお届けしています」と金丸シェフ。クラシカルとモダンが調和した大胆かつ繊細なフレンチを、目で、舌で、香りで……と楽しめる一軒は、まさに記念日や特別な日、自分へのご褒美ディナーにと、足を運びたくなる。
(文/茶野真智子・撮影/合田慎二)
【メニュー】
ランチコース 5,000円、8,000円
ディナーコース 10,000円、15,000円
※ディナータイムは、ご予算に合わせて対応可
ルヴニール[閉店]
- 電話番号
- 06-6360-7551
- 営業時間
- 12:00~15:30(L.O.13:30)、18:00~23:00(L.O.20:30)
- 定休日
- 水曜、木曜のランチ
※本記事に掲載された情報は、取材日時点のものです。
※電話番号、営業時間、定休日、メニュー、価格など店舗情報については変更する場合がございますので、店舗にご確認ください。